【レビュー】ナイトビジョンカメラ比較 SONY IMX350 vs Omnivision OV64B

最強の赤外線センサーはどっち?もっとも透けるスマホカメラはこれです。 IIIF150 Air1 Ultraのカメラレビューで、ナイトビジョンカメラセンサー性能について気になった点があったので、今回はそのあたりを深堀りしてみます。現在、赤外線カメラ搭載スマホで広く使われているセンサーは、SONY IMX350Omnivision OV64Bの2種類です。この2種のセンサーについて、どちらが性能面で優れているのか。暗所耐性解像度、そして、おなじみの透け透け性能についても詳しく見ていきます。あなたはどっちのセンサーが勝つと思いますか?それではさっそく検証スタートです。

スペック

まずは2つのセンサーについて簡単に紹介しておきます。SONY IMX350は、2000万画素1/2.78インチセンサーで、ピクセルサイズは1ミクロンです。Air1 Ultraをはじめ各社の2000万画素ナイトビジョンセンサーにこのセンサーが使われています。

一方、OmnivisionOV64Bは、6400万画素1/2インチセンサーで、ピクセルサイズは0.7ミクロンです。Raptorをはじめ、この1年で発売された中華製タフネススマホに多く採用されているセンサーです。

OV64Bは、画素数では大きく勝っていますが、一方で1画素あたりの受光面積はIMX350が約2倍(1:0.49)広いので、感度耐性はIMX350のほうがありそうです。こうしたスペックの違いはどれぐらい画質に影響しているのでしょうか。

比較方法

比較検証のため、写真のような環境を用意してみました。白色LEDの室内光で1000円札を撮影します。Air1 UltraRaptorナイトビジョンカメラでそれぞれ何パターンか撮影です。ナイトビジョンカメラはオート撮影のため、1パターンにつき5枚撮影して、それぞれ一番きれいに撮れている写真で比較します。

ナイトビジョン


今回の検証では、暗所での使用を想定して、高感度耐性を見るために、①室内光オンの状態(約60ルクス)と②室内光オフで脱衣所からの薄明かりが差し込む超低照度環境(1〜2ルクス)の2パターンでテストしてみました。

Air1 Ultra / IMX350

まずは、室内光オンから見ていきましょう。



IMX350Air1 Ultra画像です。上から順に標準2倍ズーム4倍ズームです。画像をタップすると拡大表示されます(※20MB近い画像もあるのでご注意ください)。

ISO 1092でシャッタースピードは1/25です。2000万画素、5184×3888の画像です。

標準撮影したものを拡大表示してみました。細部までしっかり描写されています。

さらに拡大です。野口英世の文字もしっかり読めます。

さらに拡大すると、NIPPON GINKOのマイクロ文字も判読可能です。モノクロセンサーでカラーフィルターが無いぶん、2000万画素でも普通のカメラよりは細かく描写されます。

右下の識別マークもしっかり解像しています。スマホカメラとしては、解像度はかなり高いといえるでしょう。

Raptor / OV64B



続いて、OV64BRaptorはどうでしょう。こちらもパッと見た感じではきれいに撮れています。

ISO 1140でシャッタースピードは1/25です。IMX350と同程度の数値です。画像は、6400万画素、9248×6944です。

標準撮影でも野口英世の文字はしっかり読めます。

ただ、背景の模様など細かい箇所は潰れているような印象を受けます。

拡大してみると、マイクロ文字のNIPPON GINKOの部分は潰れて、文字が滲んだようになっています。

並べて比較します。上がOV64Bです。右下の識別マークも潰れています。IMX350のほうが細かい模様がくっきり解像しているのがわかります。

OV64Bセンサーは6400万画素で、解像度はIMX350の2000万画素より3倍精細なはずですが、明らかに画質が低い結果となりました。

今回の検証は、室内60ルクスの暗めの環境で、ISO 1140まで感度が上がっていることが画質に影響している可能性があります。ということで、LED照明を当てて、3000ルクスまで明るくした状態で改めて撮影してみました。

ISO 137まで下がりましたが、画質はあまり変わらないですね。NIPPON GINKOのマイクロ文字は潰れたままです。6400万画素のセンサーですが、センサー感度やレンズ性能の影響もあるのか、明るい環境でもスペックどおりの解像度は出ないようです。

低照度環境

続いては、2ルクスの超低照度環境での画質を比較してみましょう。

等倍撮影したものを拡大表示します。IMX350は全体的に暗くてぼんやりした画質です。「国立印刷局」の文字が潰れていますね。

OV64Bです。こちらは、超低照度環境でも問題なく撮影できました。ノイズはそれなりに乗っていますが、「国立印刷局」の文字もしっかり解像しています。

撮影データを見ると、IMX350(下)はシャッター速度の下限が1/17で、感度もISO 6400が上限のようです。一方、OV64Bは、レンズがf1.8とやや明るいことに加え、シャッター速度が1/8ISO 10389まで上がっています。このあたりも影響しているのかもしれません。

動画撮影

動画も撮影してみました。室内光の環境では、IMX350のほうが解像度が高くてキリッとした画質ですね。

超低照度下でも、IMX350のほうが明るく写っています。鮮明さも、やや上ですかね。動画撮影では、シャッター速度の上限が制限されるため、受光感度の高いIMX350のほうが有利なようです。

デジタルズーム

4倍デジタルズームの画質も比較してみましょう。白色LED灯下ではしっかり解像しているIMX350ですが。

超低照度下ではディテールが潰れていますね。

超低照度下の静止画撮影では、OV64Bのほうが画質は良いのがわかります。

透け透け撮影

透け透け撮影も試してみました。赤い水着の下に1万円札を挟んで、ナイトビジョンカメラで赤外線撮影です。

前側には裏地もあるポリエステル素材の一般的な水着です。

Air1 UltraIMX350です。赤外線フィルター(IRフィルター)は未装着です。白色LEDは赤外線が少なく透けにくいので、別途定常光のLED照明を当てています。裏地もある水着ですが、しっかり透けていますね。

こちらが、RaptorOV64Bです。同じように透けているように見えます。


拡大してみましょう。上がAir1 Ultraです。並べて見るとIMX350のほうが福沢諭吉の顔の輪郭がはっきり出ているかな。

ちなみに、RaptorIR720フィルターを装着するとこんな感じになります。赤外線フィルターを着けると、赤色域を含めた可視光域がカットされるため、フィルター無しのときより透け感は増します。

メインカメラ

せっかくなので、メインカメラの画質も簡単に比較しておきます。Air1 UltraSONY IMX686から。6400万画素センサーです。拡大表示すると国立印刷局の文字がきれいに写っています。

RaptorSAMSUNG ISOCELL HM2だとこんな感じです。1億画素の超高解像センサーですが、画数の多い文字は潰れています。メインカメラもSONYセンサーに軍配が上がりました。

オマケです。ナイトビジョンカメラでLED照明をオフにして、赤外線LEDを照射した状態でも撮影してみました。文字が消えたり、肖像画が隠れたりしていますね。偽造防止技術の一環でしょうか。

まとめ

ということで、まとめです。ナイトビジョンセンサーについては、センサーサイズが小さく、解像度が低いにもかかわらず、SONY IMX350を搭載したAir1 Ultraのほうが高画質であることがわかりました。室内光下ではIMXに軍配が上がります。赤外線透け透け撮影IMX350のほうが透過度は高い結果でした。

一方で、Air1 Ultraでは、超低照度環境下の写真撮影で極端に画質が低下することも判明しました。白色LED灯下では問題がないので、シャッタースピードISO上限が低めに設定されていることも影響しているようです。まあ、実際の撮影では、超低照度環境では赤外線LEDの補助光を使うのでそれほど影響は無いと思います。

OV64Bは、6400万画素の高解像度を誇りますが、2000万画素のIMX350より解像感が低くなるという残念な結果でした。とはいえ、全体的な使い勝手は大差なく、画質も細かく注意しなければわからないかなレベルの差です。

また、Air1 Ultraでは、超低照度環境でオートフォーカスが迷うシーンが何度かありましたが、Raptorではそのような場面は無かったので、暗所でのAF性能は上なのかなという印象です。そのほか、OV64Bでは画像処理が強く効くようで、撮影対象によってはRaptorのほうがきれいに見えるケースもあります。

ということで、今回の検証では、SONY IMX350を搭載したAir1 Ultraが最強のナイトビジョンカメラ決定です。なお、今回の検証はあくまで、IIIF150の2機種で赤外線照明をオフにした状態での比較です。同じセンサーでも、レンズやAF性能の違いなどで画質は変化します。他社製品では違う結果になる可能性もある点はご留意ください。このチャンネルでは、赤外線撮影の話題を中心に各種情報をお届けしています。最新の更新情報をお届けできるので、チャンネル登録いただけるとうれしいです。

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