【レビュー】スマホカメラに5種類のIRフィルターを付けて赤外線撮影してみた

以前レビューした、スマホにIRフィルターを装着しての赤外線撮影についての続報です。新たにIR720IR850の2種のフィルターが入手でき、IR680からIR950まで計5種のフィルターが揃ったので、撮り比べをしてみたいと思います。ノーマルスマホのPOCO F3に5種のIRフィルターを装着して、数値の違いが撮影結果にどう影響するのかを調べてみました。恒例の透け透け撮影についてもテストしてみたので、興味のある人は最後までご視聴ください。それでは検証スタートです。

赤外線フィルター

はじめに、IRフィルターについて簡単に解説しておきます。IRフィルターは、人間の目に見える可視光域をカットして、目に見えない赤外線域のみを透過させる特殊なフィルターです。

このIRフィルターをスマホのカメラに装着することで、赤外線域のみを取り込む赤外線撮影ができます。

カラフルな着物や幔幕(まんまく)を赤外線撮影すると。

可視光域がカットされて、着物の模様が消えて真っ白に写ります。条件によっては、衣類が透けることもあります。

今回使用するIRフィルターは、ZOMEIIR680IR720IR760IR850IR950の5種類です。中国メーカーですが、比較的安価で性能も高い製品です。また、ケンコーIRフィルター720nm対応のものしか無いのに比べて、680〜950nmまでラインナップが豊富なのもメリットです。入手方法は概要欄のリンクで確認いただけます。

IRフィルターの数値について説明しておきます。赤外線域は780nm以上と言われていますが、IRフィルターでも780nm未満の数値の小さいフィルターでは赤色域の可視光を通します。

IR680IR720IR760では赤外線のほかに、可視光の赤色域が入ってきますが。

780nmを超えると可視光域を遮断し、赤外線域のみを捕捉します。このため、IR850IR950フィルターでは、赤外線域のみを透過させることができます。

ローパスフィルターを取り外してフルスペクトラム化したPentax Q7IRフィルターを装着して撮影結果を比べてみましょう。IR680では赤色域も通すため、全体的に赤みのかかった画像になります。

IRフィルターの数値を上げるに連れて、通過する赤色光が減っていくため、赤みが収まっていきます。

IR760ではわずかに赤みが残りますが。

IR850では赤みが消えて赤外線域のみになります。

さらに、IR950になると、近赤外線域でも波長の高いものが写ります。

スマホ撮影

今回使用するスマホは、以前の検証で比較的赤外線を捕捉することがわかったXiaomi POCO F3です。

POCO F3のイメージセンサーは、SONYIMX5824800万画素です。赤外線光もある程度捕捉するので、IRフィルターを装着すると、可視光域がカットされ赤外線撮影ができます。

ちなみに、スマホカメラがどの程度の赤外線を捕捉するかは、テレビの赤外線リモコンをカメラで撮影することでわかります。赤外線感度の高いカメラであれば、肉眼では見えないリモコンの発光部が明るく光ります。明るいほど赤外線の受光感度が高いです。スマホによっては、赤外線をほとんど受光しないものもあるのでご注意ください。

室内撮影

それではさっそく、数値の異なる5種類のIRフィルターで、どのように写りに違いが現れるかを見ていきます。室内撮影屋外撮影の2パターンで検証してみましょう。

用意したのは、いずれも55mm径のフィルターで、スマホ用のクリップホルダーに、37 to 17mmステップアップリング55 to 37mmステップアップリングを経由して取り付けます。

まずは室内撮影からです。マネキンに赤い水着を着せて、その下に一万円札を挟んで撮影し、透過度を見ていきます。赤外線量の少ない白色LED照明下での撮影です。

一般的な白色LEDは、青色域の波長が多く、780nm以上の赤外線域はほとんど出ません。

このため、白色灯下で赤外線撮影をすると、赤外線光量が不足して、感度が上がり画質が低下するので、別途、赤外線LEDライトを用意し、赤外線を照射して撮影しました。

IR680から見ていきましょう。ノーマルカメラですが、結構透けていますね。

シャッタースピードは下限の1/8秒まで落ちますが、普通のスマホでも赤外線域の感度があるものは、IRフィルターを付けることで透け透け撮影ができることがわかります。

IR720になるとさすがに光量が足りないようで、かなりぼやけた写真になります。オート撮影のため、シャッタースピードが1/8に制限されることも影響しています。一般的なスマホカメラでも赤外線透け透け撮影はできますが、赤外線の光量がそれなりに必要なようです。

屋外撮影 POCO F3

続いては、屋外撮影です。まずはIRフィルター装着でどのように写るかを確認しておきましょう。JR岡山駅北側の操車場です。通常カメラで撮るとこんな感じです。

IR680から見ていきましょう。かなり赤みの強い画像です。赤色域が多く取り込まれる一方で、赤外線域はスマホカメラ内部のIRカットフィルターで減光されるので、かなり赤みの強い画像になります。

続いてIR720です。IR680と比べると、赤みはだいぶ収まりました。赤外線撮影ぽい写真ですね。ただ、画面中央が白くなっているのが気になります。ホットスポットと呼ばれる現象で、レンズの設計やコーティングなどが影響して、このような色ムラが生じます。

IR760です。IR720と大きな違いはなさそうです。こちらも中央のホットスポットが気になりますね。

IR850になると、赤みは無くなり、ほぼ赤外線域のみになります。オート撮影では、ISOの上限が3200で、SSは1/8が下限となるため、やや露出不足のようです。画面中央に大きな色ムラが出ており、ホットスポットの影響がかなり強く出ています。一般的なスマホで使うならIR720IR760あたりが良さそうです。

IR950になると、オート撮影ではかなり露出が不足するため、画面が真っ暗になります。

プロモードに切り替えて、ISO400で30秒の長時間露光撮影してみました。撮影はできますが、やはりホットスポットの影響が強く、画質は今ひとつです。

屋外透け透け撮影

続いて、屋外でも透け透け撮影を試してみました。晴天の日に撮影しています。太陽光下では、室内よりも赤外線量が多くなりますが、一方で、可視光量も増加します。そのあたりがどう影響するのかを見ていきましょう。

IR680では、水着が赤色なことも影響して、赤色域が強すぎてほとんど透けません。

IR680フィルターは、680〜780nmの赤色域と780nm以上の赤外線域とを透過させますが。

センサー手前のIRカットフィルター780nm以上の赤外線域がカットされるため、赤みが強い画像になります。

IR720です。赤色光域がかなりカットされて、しっかり透けてきました。

IR760になると、赤色域がほとんどカットされるため、お札の数字の輪郭が出てきました。ISO1902まで感度が上がるのでノイズも出ており、画質は専用カメラより劣りますが、それなりの透け感は出ています。シャッタースピードは1/20でギリギリ手持ちで使えるレベルです。

IR850になると、かなり画質が低下しますね。ISO感度は4115まで上がり、シャッタースピードも1/14まで低下しています。オート撮影モードでは、ISO感度、シャッタースピードともに制限があることが影響するようです。

動画撮影も試してみました。晴天下であれば、IR760で動画撮影できます。赤外線専用カメラほどではありませんが、それなりに楽しめそうです。

IR850だとかなり画質が低下します。動画撮影ではシャッタースピードの上限があるため、IR850では光量が不足するようです。オートフォーカスも迷うので実用的ではありませんね。

まとめ

ということで、まとめです。POCO F3のようなIRカットフィルターが入っている普通のスマホカメラでも、赤外線感度がある程度あるとIRフィルターを装着することで赤外線撮影ができます。ただし、IRフィルターの数値が低いと、赤色域の光量が強くなり、赤外線域が写りにくくなります。反面、IRフィルターの数値が高いと、光量が不足するため画質がかなり低下します。数値の高いフィルターでもプロモードで長時間露光すれば赤外線撮影はできます。手持ち撮影や動画撮影用途であれば、IR760IR720あたりがバランスが取れていておすすめです。

また、一般的なスマホカメラを使った赤外線撮影では、機種によってはホットスポットの影響で色ムラが発生する点も留意が必要です。とはいえ、市販の安価なスマホカメラでも、フィルター1つで赤外線撮影が楽しめるので、興味のある人はチャレンジしてください。このチャンネルでは、今後も赤外線撮影に関する話題を取り上げていくので、興味のある人は更新情報をお届けできるのでチャンネル登録いただけるとうれしいです。

【レビュー】ナイトビジョンカメラ比較 SONY IMX350 vs Omnivision OV64B

最強の赤外線センサーはどっち?もっとも透けるスマホカメラはこれです。 IIIF150 Air1 Ultraのカメラレビューで、ナイトビジョンカメラセンサー性能について気になった点があったので、今回はそのあたりを深堀りしてみます。現在、赤外線カメラ搭載スマホで広く使われているセンサーは、SONY IMX350Omnivision OV64Bの2種類です。この2種のセンサーについて、どちらが性能面で優れているのか。暗所耐性解像度、そして、おなじみの透け透け性能についても詳しく見ていきます。あなたはどっちのセンサーが勝つと思いますか?それではさっそく検証スタートです。

スペック

まずは2つのセンサーについて簡単に紹介しておきます。SONY IMX350は、2000万画素1/2.78インチセンサーで、ピクセルサイズは1ミクロンです。Air1 Ultraをはじめ各社の2000万画素ナイトビジョンセンサーにこのセンサーが使われています。

一方、OmnivisionOV64Bは、6400万画素1/2インチセンサーで、ピクセルサイズは0.7ミクロンです。Raptorをはじめ、この1年で発売された中華製タフネススマホに多く採用されているセンサーです。

OV64Bは、画素数では大きく勝っていますが、一方で1画素あたりの受光面積はIMX350が約2倍(1:0.49)広いので、感度耐性はIMX350のほうがありそうです。こうしたスペックの違いはどれぐらい画質に影響しているのでしょうか。

比較方法

比較検証のため、写真のような環境を用意してみました。白色LEDの室内光で1000円札を撮影します。Air1 UltraRaptorナイトビジョンカメラでそれぞれ何パターンか撮影です。ナイトビジョンカメラはオート撮影のため、1パターンにつき5枚撮影して、それぞれ一番きれいに撮れている写真で比較します。

ナイトビジョン


今回の検証では、暗所での使用を想定して、高感度耐性を見るために、①室内光オンの状態(約60ルクス)と②室内光オフで脱衣所からの薄明かりが差し込む超低照度環境(1〜2ルクス)の2パターンでテストしてみました。

Air1 Ultra / IMX350

まずは、室内光オンから見ていきましょう。



IMX350Air1 Ultra画像です。上から順に標準2倍ズーム4倍ズームです。画像をタップすると拡大表示されます(※20MB近い画像もあるのでご注意ください)。

ISO 1092でシャッタースピードは1/25です。2000万画素、5184×3888の画像です。

標準撮影したものを拡大表示してみました。細部までしっかり描写されています。

さらに拡大です。野口英世の文字もしっかり読めます。

さらに拡大すると、NIPPON GINKOのマイクロ文字も判読可能です。モノクロセンサーでカラーフィルターが無いぶん、2000万画素でも普通のカメラよりは細かく描写されます。

右下の識別マークもしっかり解像しています。スマホカメラとしては、解像度はかなり高いといえるでしょう。

Raptor / OV64B



続いて、OV64BRaptorはどうでしょう。こちらもパッと見た感じではきれいに撮れています。

ISO 1140でシャッタースピードは1/25です。IMX350と同程度の数値です。画像は、6400万画素、9248×6944です。

標準撮影でも野口英世の文字はしっかり読めます。

ただ、背景の模様など細かい箇所は潰れているような印象を受けます。

拡大してみると、マイクロ文字のNIPPON GINKOの部分は潰れて、文字が滲んだようになっています。

並べて比較します。上がOV64Bです。右下の識別マークも潰れています。IMX350のほうが細かい模様がくっきり解像しているのがわかります。

OV64Bセンサーは6400万画素で、解像度はIMX350の2000万画素より3倍精細なはずですが、明らかに画質が低い結果となりました。

今回の検証は、室内60ルクスの暗めの環境で、ISO 1140まで感度が上がっていることが画質に影響している可能性があります。ということで、LED照明を当てて、3000ルクスまで明るくした状態で改めて撮影してみました。

ISO 137まで下がりましたが、画質はあまり変わらないですね。NIPPON GINKOのマイクロ文字は潰れたままです。6400万画素のセンサーですが、センサー感度やレンズ性能の影響もあるのか、明るい環境でもスペックどおりの解像度は出ないようです。

低照度環境

続いては、2ルクスの超低照度環境での画質を比較してみましょう。

等倍撮影したものを拡大表示します。IMX350は全体的に暗くてぼんやりした画質です。「国立印刷局」の文字が潰れていますね。

OV64Bです。こちらは、超低照度環境でも問題なく撮影できました。ノイズはそれなりに乗っていますが、「国立印刷局」の文字もしっかり解像しています。

撮影データを見ると、IMX350(下)はシャッター速度の下限が1/17で、感度もISO 6400が上限のようです。一方、OV64Bは、レンズがf1.8とやや明るいことに加え、シャッター速度が1/8ISO 10389まで上がっています。このあたりも影響しているのかもしれません。

動画撮影

動画も撮影してみました。室内光の環境では、IMX350のほうが解像度が高くてキリッとした画質ですね。

超低照度下でも、IMX350のほうが明るく写っています。鮮明さも、やや上ですかね。動画撮影では、シャッター速度の上限が制限されるため、受光感度の高いIMX350のほうが有利なようです。

デジタルズーム

4倍デジタルズームの画質も比較してみましょう。白色LED灯下ではしっかり解像しているIMX350ですが。

超低照度下ではディテールが潰れていますね。

超低照度下の静止画撮影では、OV64Bのほうが画質は良いのがわかります。

透け透け撮影

透け透け撮影も試してみました。赤い水着の下に1万円札を挟んで、ナイトビジョンカメラで赤外線撮影です。

前側には裏地もあるポリエステル素材の一般的な水着です。

Air1 UltraIMX350です。赤外線フィルター(IRフィルター)は未装着です。白色LEDは赤外線が少なく透けにくいので、別途定常光のLED照明を当てています。裏地もある水着ですが、しっかり透けていますね。

こちらが、RaptorOV64Bです。同じように透けているように見えます。


拡大してみましょう。上がAir1 Ultraです。並べて見るとIMX350のほうが福沢諭吉の顔の輪郭がはっきり出ているかな。

ちなみに、RaptorIR720フィルターを装着するとこんな感じになります。赤外線フィルターを着けると、赤色域を含めた可視光域がカットされるため、フィルター無しのときより透け感は増します。

メインカメラ

せっかくなので、メインカメラの画質も簡単に比較しておきます。Air1 UltraSONY IMX686から。6400万画素センサーです。拡大表示すると国立印刷局の文字がきれいに写っています。

RaptorSAMSUNG ISOCELL HM2だとこんな感じです。1億画素の超高解像センサーですが、画数の多い文字は潰れています。メインカメラもSONYセンサーに軍配が上がりました。

オマケです。ナイトビジョンカメラでLED照明をオフにして、赤外線LEDを照射した状態でも撮影してみました。文字が消えたり、肖像画が隠れたりしていますね。偽造防止技術の一環でしょうか。

まとめ

ということで、まとめです。ナイトビジョンセンサーについては、センサーサイズが小さく、解像度が低いにもかかわらず、SONY IMX350を搭載したAir1 Ultraのほうが高画質であることがわかりました。室内光下ではIMXに軍配が上がります。赤外線透け透け撮影IMX350のほうが透過度は高い結果でした。

一方で、Air1 Ultraでは、超低照度環境下の写真撮影で極端に画質が低下することも判明しました。白色LED灯下では問題がないので、シャッタースピードISO上限が低めに設定されていることも影響しているようです。まあ、実際の撮影では、超低照度環境では赤外線LEDの補助光を使うのでそれほど影響は無いと思います。

OV64Bは、6400万画素の高解像度を誇りますが、2000万画素のIMX350より解像感が低くなるという残念な結果でした。とはいえ、全体的な使い勝手は大差なく、画質も細かく注意しなければわからないかなレベルの差です。

また、Air1 Ultraでは、超低照度環境でオートフォーカスが迷うシーンが何度かありましたが、Raptorではそのような場面は無かったので、暗所でのAF性能は上なのかなという印象です。そのほか、OV64Bでは画像処理が強く効くようで、撮影対象によってはRaptorのほうがきれいに見えるケースもあります。

ということで、今回の検証では、SONY IMX350を搭載したAir1 Ultraが最強のナイトビジョンカメラ決定です。なお、今回の検証はあくまで、IIIF150の2機種で赤外線照明をオフにした状態での比較です。同じセンサーでも、レンズやAF性能の違いなどで画質は変化します。他社製品では違う結果になる可能性もある点はご留意ください。このチャンネルでは、赤外線撮影の話題を中心に各種情報をお届けしています。最新の更新情報をお届けできるので、チャンネル登録いただけるとうれしいです。