本記事では、双眼鏡型ナイトビジョンスコープNV016に搭載されたセンサーの近赤外線感度に着目し、IRフィルター装着時の描写特性を検証します。
近赤外線センサー特性とフィルター装着テスト
双眼鏡スタイルのナイトビジョンスコープNV016の技術レビュー第3弾です。今回は、搭載センサーの近赤外線感度に着目し、赤外線フィルター装着時の描写変化を検証します。可視光を抑制した環境での撮像特性を確認し、他機種との比較も行います。
重要な注意事項
本記事は撮像センサーおよび光学フィルターの特性を検証する技術レビューです。人物・公共空間・第三者に対する赤外線撮影行為は、各都道府県の迷惑防止条例やプライバシー関連法令に抵触する可能性があります。絶対に行わないでください。
※検証は屋内環境にて、素材サンプルを用いて実施しています。
[使用した機材(Amazonリンク)]
- 望遠暗視スコープNV016
- 八仙堂39-37mmステップダウンリング
- ZOMEI IR760 赤外線フィルター
- ZOMEI IR850 赤外線フィルター
- Panasonic 2倍テレコン DMW-GTC1(※終売)
比較機材:
- SONY HDR-AX55
- IIIF150 Raptor
[関連記事]
▶NV016まとめ(関連動画・ブログリンクをまとめています)
本検証の目的
本テストは、
- センサーの近赤外線感度確認
- フィルター波長による描写変化比較
- 機種間の赤外線応答特性の違い検証
を目的としています。用途は撮像技術理解および光学特性検証の範囲に限られます。
赤外線撮影における素材の光学特性解説
① なぜ赤外線域では描写が変化するのか?
可視光(約400〜700nm)と近赤外線(約700〜1000nm)では、物質に対する反応が異なります。布素材では、可視光が染料や顔料によって強く吸収・反射されますが、近赤外線域ではそれらの色素の吸収特性が弱まる場合があります。
- 可視光では目立つ表面パターンが弱くなる
- 素材内部の構造によるコントラスト差が強調される
といった描写変化が起こります。これは「透ける」というより、波長特性の違いによって光の吸収・散乱の仕方が変わる現象です。赤外線撮影は、可視光とは異なる物理特性を利用していると言えます。
NV016のセンサー特性と近赤外線感度の考察
SmartSense SC8052センサーの特徴
NV016に搭載されているのは、SmartSense Technology製のSC8052センサーと考えられます。このセンサーはドライブレコーダー用途を想定して設計されており、夜間環境での撮影に対応するため、近赤外線域の感度が比較的高い特性を持ちます。
一般的なスマホセンサーとの違い
IRカットフィルターがない状態では赤みのかかった画像になります。多くのスマートフォン用センサーは、可視光画質を優先する設計のため、赤みを取り除くためのIRカットフィルターを配置しています。
フォトダイオード深度と波長吸収の関係
センサーの性能については、センサー内部のフォトダイオード構造によって、吸収しやすい波長域が異なります。一般に、フォトダイオードが深い構造ほど、長波長(近赤外線域)の感度が高くなる傾向があり、監視カメラなど赤外線域の感度を重視するセンサーはスマホ用のセンサーとは構造が異なります。
フィルター装着テスト(非推奨・自己責任)
※以下は技術検証目的で実施した簡易的な加工例です。メーカー保証対象外となる可能性があるため推奨はしません。
NV016へのフィルター装着方法
NV016のレンズ筒にはフィルターネジがありません。そのため、IRフィルターを装着するためには以下のような方法が考えられます。
- ゼラチンフィルターをカットして仮固定する
- アダプターリングを追加装着する
ゼラチンフィルターはハサミで簡単にカットでき加工しやすいのがメリットですが、ガラスフィルターと比べると耐久度が低いのがデメリットです。今回は着脱可能な構造にするため、ステップダウンリングを採用しました。
前回の動画では、37 to 17mmステップダウンアダプターをレンズ筒の内側に取り付けました。この方法ではセンサー面に対してきっちり水平にアダプターを配置するのが難しく、光軸がズレてしまうようです。ただ、ゼラチンフィルターを使うならサイズを節約できるのはメリットかもしれません。
39-37mmステップダウンリングの使用
39-37mmステップダウンリングをレンズ筒前部に装着することで、市販のIRフィルターが使用可能になります。この方法は、内側固定よりも光軸ズレを抑えやすいメリットがあります。
接着剤選定の注意点
揮発性の瞬間接着剤は、乾燥時に白化現象が起こる場合があります。レンズ周辺への使用はリスクがあります。アロンアルファ光のようなUV硬化型接着剤など、白化リスクの低い製品のほうが安全です。接着剤についてはこちらの記事でもう少し詳しく解説しているので、改造を検討している人は併せてご覧ください。
▶5K録画対応暗視スコープNV016をちょっぴり改造してみた
IRフィルター装着完了
リング装着後、ZOMEI製IR760フィルターを取り付けて準備完了です。赤外線フィルターの特性(760nm・850nmの違いなど)については、別記事で詳しく解説しています。
▶【レビュー】スマホカメラに5種類のIRフィルターを付けて赤外線撮影してみた
室内実験|赤外線域における布素材の光学特性検証
それでは検証していきましょう。本テストでは、赤外線撮影時における布素材の光学特性を確認します。あくまで撮像センサーの特性理解を目的とした技術検証です。可視光撮影と赤外線撮影で描写がどのように変化するのかを比較しました。
検証方法と使用素材
- マネキンを使用
- 背景にイラストフィルムを設置(判別用サンプル)
- 一般的な裏地付き布素材を使用
- 室内・照明一定条件下で撮影
※実験は素材サンプルの光学特性確認を目的としています。
可視光撮影結果(乾燥状態)
まずは通常の可視光カメラ(スマートフォン)で撮影。結果として、素材下のイラストは確認できませんでした。これは一般的な可視光撮影における通常の挙動です。
ナイトビジョンモードでの描写変化
NV016のナイトビジョンモードで撮影しました。このモードでは内部のIRカットフィルターが退避し、赤外線を含めた受光が可能になります。IRライトレベル1・シャッタースピード1/480秒では、背景のコントラスト差がわずかに確認できました。可視光が抑制されることで、表面パターンの影響が弱まり、赤外線特有の描写傾向が現れます。
IRライト出力と露出の関係
光量増加によりシャッタースピードは高速化しますが、赤外線による描写傾向自体に大きな変化は見られませんでした。つまり、赤外線強調の度合いは光量よりもフィルター構成や素材特性の影響が大きいと考えられます。
他機種比較|IIIF150 Raptorとの比較
比較用として、IIIF150 Raptorの6400万画素ナイトビジョンカメラでも撮影しました。IIIF150 Raptorの詳細については下記の記事を参照ください。
▶【レビュー】IIIF150 Raptorの赤外線撮影についてまとめてみた
結果として、
- NV016:赤外線反応は強いがノイズが目立つ
- Raptor:解像感が高く繊維構造の描写が明瞭
という違いが確認できました。センサー構造や画像処理方式の差が影響していると考えられます。
動画撮影での確認
■
動画でも検証しました。IRライトを段階的に上げても、オート露出補正が働くため、描写傾向の大きな変化は見られませんでした。赤外線撮影では、静止画より動画のほうが露出補正の影響を受けやすい点も分かります
含水状態による光学特性の変化
続いて素材に水分を加え、光学特性の変化を確認しました。
NV016での含水状態撮影
NV016ではコントラスト差がより強調されました。水分が繊維間に入り込むことで空隙が減少し、光の散乱が抑制されます。その結果、赤外線域でのコントラスト差が強調される傾向が確認できました。これは物理的な屈折率変化および密着効果によるものです。
IIIF150 Raptorでの含水比較
IIIF150 Raptorでも同条件で撮影してみました。乾燥時と比較すると赤外線反応の変化が確認できましたが。NV016とは描写傾向がやや異なります。拡大するとNV016ではノイズが多く、解像感ではRaptorが優れています。
ノイズ特性とセンサー構造の考察
■
NV016は1/4インチ800万画素センサーから高解像度出力を行う構造のため、拡大時にはノイズが目立ちます。画素補間の影響もあり、数値上の画素数と実効解像感は必ずしも一致しません。赤外線撮影では、センサーサイズ・画素ピッチ・画像処理エンジンの違いが描写に大きく影響します。
透過防止加工素材の赤外線特性確認
遮蔽加工が施されたインナー素材を重ね、赤外線域での遮蔽性能を確認しました。乾燥状態では赤外線反応の変化はほとんど確認できませんでした。
含水時の遮蔽特性の変化
一方で含水状態では、コントラスト差が一部確認できました。完全な遮蔽は難しいものの、未装着時よりは抑制効果があると考えられます。
室内検証まとめ
- 可視光では変化なし
- 赤外線域では素材特性が描写に影響
- 含水状態は光学特性を変化させる
- 機種ごとのセンサー構造差が顕著
- 遮蔽加工は一定の効果があるが万能ではない
本検証は、赤外線撮影機材の描写特性を理解するための技術検証です。用途は撮影技術・光学特性理解の範囲に限られます。
す。
▶NV016まとめ(関連動画・ブログリンクをまとめています)
屋外実写検証|日中環境での赤外線透過テスト
撮影条件(薄曇り・日中)
室内テストに続き、屋外でも赤外線特性を検証しました。撮影日は薄曇りの日中で、自然光に十分な赤外線成分が含まれている環境です。検証は室内と同じ機材構成で実施し、布素材サンプルに対する描写変化を確認しました。
カラーモードの挙動|可視光優先時の描写
まずは通常のカラーモードで撮影です。カラーモードでは内部のIRカットフィルターが作動し、赤外線成分はほぼ遮断されます。そのため、可視光中心の一般的な描写となり、素材の外観に大きな変化は見られませんでした。これは一般的なデジタルカメラと同様の挙動です。
ナイトビジョンモードの特性|赤外線受光時の変化
続いてナイトビジョンモードで撮影します。このモードではIRパススルーフィルターに切替わるため、可視光に加えて赤外線も受光します。ただし日中環境では可視光の影響が依然として強く、素材表面の模様が支配的となり、内部構造の変化は目立ちませんでした。日中屋外では“赤外線のみ”の状態を作ることが難しいことが分かります。
IR760フィルター装着時の変化
IR760フィルターを装着すると、可視光が大幅にカットされ、赤外線中心の描写になります。その結果、素材の反射特性が変化し、表面パターンの影響が弱まりました。可視光を抑えることで赤外線特有のコントラストが強調されることが確認できます。
日中屋外でのIRライト効果
IRライト出力を最大まで上げてみましたが、描写への影響は限定的でした。日中の太陽光には十分な赤外線成分が含まれているため、追加照射の効果は相対的に小さくなります。屋外日中ではIRライトは補助的な役割に留まる印象です。
動画撮影で確認
■
動画でも撮影してみました。静止画では分かりにくい微細なコントラスト差も、ズーム時には露出が安定し、赤外線による描写変化が確認できます。動体環境では動画検証のほうが変化を把握しやすい場合もあります。
IR850フィルターとの比較
IR760からIR850へ変更して比較しました。IR850はIR760より長波長域を通すため、可視光の影響がさらに抑えられます。日中のように赤外線量が豊富な環境では、IR850のほうが赤外線特有の描写が強調される傾向が見られました。
波長の違い(760nm/850nm)と描写傾向の関係
IRフィルターの数値(760nmや850nm)は、「その波長より長い光を通す」という意味です。
- IR760:760nm以上を透過(可視光成分が一部残りやや赤みを帯びた画像に)
- IR850:850nm以上を透過(可視光の影響がほぼ除去されモノクロに近い画像に)
一般に波長が長くなるほど、
- 可視光の影響が減る
- 染料の影響がさらに弱まる
- 素材内部の赤外線反応が相対的に強調される
傾向があります。そのため、日中のように赤外線量が豊富な環境では、IR850のほうが赤外線特有の描写が明確になりやすい場合があります。
ただし波長が長いほどセンサー感度は低下しやすく、ノイズ増加や露出確保の難しさとトレードオフになります。
他機種比較|SONY HDR-AX55との比較検証
参考として、SONY HDR-AX55のナイトショットモード+IR850でも撮影しました。画質の精細さや階調表現はAX55が優れています。一方で、赤外線強調の度合いについてはNV016のほうが分かりやすい印象でした。機種ごとのセンサー特性や内部処理の違いが影響していると考えられます。
条件変化テスト|素材の含水状態による変化
■
最後に布素材へ水分を加えて検証しました。水が繊維間に入り込むことで空隙が減少し、光の散乱が抑えられます。さらに屈折率の変化により、赤外線の通過特性が変わることが確認できました。この現象は物理的な光学特性の変化によるものであり、赤外線撮影における素材特性の理解に役立ちます。
水分による密着効果で透過が強まる理由(光学的観点)
布素材が乾燥している状態では、繊維の隙間に空気が存在します。空気と繊維では屈折率が大きく異なるため、光はそこで強く散乱します。これがコントラスト低下や白っぽい拡散の原因になります。
一方、水分が加わると:
- 繊維間の空隙が水で満たされる
- 屈折率差が小さくなる
- 光の散乱が減少する
結果として、赤外線がより直進しやすくなり、コントラスト差が強調される傾向があります。これは赤外線特有の現象ではなく、屈折率・散乱・吸収の物理特性による一般的な光学現象です。
屋外検証まとめ
- 日中屋外では太陽光由来の赤外線が十分存在する
- 可視光をどこまで抑えられるかが描写の鍵
- IR850は日中環境で有利な傾向
- 含水状態によって赤外線特性は変化する
今回の検証から、屋外環境ではIRライトよりフィルター選択が重要であることが分かりました。
まとめ|NV016の赤外線描写特性と実用性
今回の検証から分かったポイントは以下の通りです。
- NV016は近赤外線域への感度が比較的高いセンサーを搭載
- IR760とIR850では描写傾向が異なる
- 日中環境では太陽光由来の赤外線が大きく影響
- 含水状態では素材の光学特性が変化する
- センサー構造や画像処理方式により機種ごとの差が明確に出る
NV016は高解像度出力が可能な一方、拡大時のノイズ傾向には注意が必要です。解像感を重視するなら専用赤外線センサー搭載機、赤外線強調を重視するならNV016というように、用途によって選択が分かれるでしょう。
赤外線撮影は「暗所を見るための機能」だけでなく、センサー構造や波長特性を理解することで、より深く楽しめる分野です。本記事が、赤外線撮影機材選びや光学特性理解の一助になれば幸いです。
技術的まとめ
- 可視光と近赤外線では吸収・反射特性が異なる
- 波長が長いほど可視光の影響は減少する
- IR760とIR850では描写の純度が変わる
- 含水状態は屈折率差を減らし、散乱を抑制する
赤外線撮影は“特殊効果”ではなく、波長依存の物理特性を観察する技術分野です。
▶NV016まとめ(関連動画・ブログリンクをまとめています)
■ 法的注意事項
本記事は赤外線波長に対する素材特性の検証を目的としたレビューです。
人物の衣服内部を撮影する目的での機器使用は、各都道府県の迷惑防止条例や軽犯罪法等に抵触する可能性があります。絶対に行わないでください。
NV016の赤外線フィルター検証まとめと技術的FAQ
FAQ|赤外線撮影技術に関するよくある質問
Q. NV016はなぜ赤外線透過効果が強く見えるのですか?
Q. IR760とIR850の違いは何ですか?
- IR760:明るさを確保しやすいが可視光成分が一部残る
- IR850:可視光の影響が少なく赤外線純度が高い
Q. 日中屋外ではIRライトは効果がありますか?
Q. 濡れると赤外線透過が強まるのはなぜですか?
Q. 赤外線撮影は違法になりますか?
▶NV016まとめ(関連動画・ブログリンクをまとめています)






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Youtube をみてこの機械を購入しましたが、赤外線撮影時時にあるレンズから見える赤色LEDをみえにくくするほうほはありますかあ?
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