ナイトビジョンデジカメNVC200を分解・改造することでフルサイズ用の望遠レンズが装着可能になりました。しかしNVC200はスナップ撮影に適したコンパクトさが特徴で、望遠撮影の都度レンズ交換するのは面倒です。レンズ交換作業ではカメラセンサーにダストが付着するリスクもあります。そこでNV016を望遠撮影専用機として改造し、NVC200で使用したキヤノンEFレンズ用のCマウントアダプターを装着することにしました。NV016にフルサイズ用レンズを装着して超望遠カメラ化していきます。
なお、NV016やNVC200の概要については撮影編、分解&改造編など過去動画で詳しく紹介しています。YouTubeには掲載できなかった情報や追加情報についてはブログに随時掲載しています。
【動画内で紹介した製品(Amazonリンク)】
- ナイトビジョンスコープ NV016
- EOS-Cマウントアダプター
- NIKON-Cマウントアダプター
- ナイトビジョンカメラNVC200
- VCSEL高輝度赤外線トーチ Alonefire TK504(IR850 / IR940)
【前側パネル分解】
それではNV016を分解していきましょう。本体前面のゴムキャップを外すと前面パネルを固定しているネジ穴が現れます。
前面パネルを外すと内部を確認できます。部品が少なくかなり無駄なスペースがあります。
前面パネルから見ていきましょう。左からカメラセンサー、マイク、レーザーポインター、IRライトが収まっています。
本体上部(画面下)に各種配線が繋がっています。ここにメイン基板があるみたいです。
カメラセンサーはフレキシブルケーブルを外せば簡単に取り外せます。
IRライトはプラスチックで溶着固定されており簡単に取り外せません。
レーザーポインターとマイクは簡単に外れました。
【ボディ分解】
※レンズ改造にはこの作業は必要ありません。
続けてメイン基板にアクセスするためにボディも開けてみることに。ゴム製のLCDフードを外して。
ストラップ金具のプラスネジ4箇所を外します。
内側左右の各3箇所にツメがあるのでスクレーパーを使って天板を外します。
メイン基板が出てきました。NVC200とは異なり片面にほとんどのチップ類が配置されています。
上の大きなチップはSoC(システムオンチップ)ですが表面が削られているのが確認できました。その下はSECとプリントされているのでサムスン電子のメモリ(4GB)でしょう。
基板上のスイッチ×6個は。
天板パネルから操作できる構造です。
WiFiアンテナが繋がっているのがRealtekのチップです。その下はWinbandというメーカーのフラッシュメモリ(1GB)のようです。
WiFiアンテナは本体側面に両面テープで貼り付けてあります。
上側にはカメラセンサーやLCDなどに繋がる各種配線です。
裏面はTFカードスロット、リセットスイッチ、USB Cポートとバッテリー配線×2箇所。
バッテリーは1,500mAh×2個です。
メイン基板を本体から外すとこんな感じです。
【ディスプレイ】
メイン基板を外したディスプレイ部です。
ディスプレイパネルを筐体から外しました。
パネルのメーカーは不明です。
本体内部はなぜかマット仕上げになっています。古い筐体を使い回しているようで、もとの製品は2.4インチのLCDをレンズ裏に配置して、マグニファイア(拡大鏡)で4インチに拡大していたようです。
分解後、撮影に必要な最小限のパーツを確認しました。本体サイズは部品に対してかなり大型ですが、改造によりコンパクト化も可能です。3Dプリンターで筐体を製作すれば半分くらいのサイズになりそうです。
【レンズユニット】
ここからが本題です。NVC200にCマウントアダプターが装着できるかを確認するためレンズユニットを詳しく見ていきましょう。使われているパーツはNVC200と同じですね。
※レンズユニットの分解作業はセンサーダスト付着のリスクがあります。ご注意ください。
※付着する汚れの種類によってはレンズユニットを分解してのセンサークリーニングが必要になります。
カメラセンサー基板の裏面です。フィルターユニットの配線が繋がっています。
レンズはねじ込み式のCSマウントです。これならNV016でもCマウントレンズが使えそうです。
ただ、NVC200同様にフィルターユニットはプラスチック製のため強度面で問題ありです。
アダプター経由で望遠レンズを装着すると、このプラスチックパーツでNV016本体を支えることになります。
NV016の場合、レンズユニットが筐体に支えられているのでNVC200よりは強度がありそうです。ただし、レンズやアダプターをねじ込む時にフィルターユニットに横方向の力が加わるのでそのあたりが不安です。
金属製のCSマウントの奥に見えるのがフィルターユニットです。カラーモードではUV/IRカットフィルターで紫外線と赤外線をカットしますが、ナイトビジョンモードではIRパススルーフィルターに切り替わり、赤外線をセンサーに届ける仕組みです。
カメラセンサーは赤外線も取り込むため、IRフィルターが無い状態では近赤外線域が取り込まれて赤みのかかった画像になります。
IRカットフィルターがあることで近赤外線域の光が遮断され正常な色合いになります。NV016では通常撮影時はIRカットフィルターがセンサー前に移動し赤外線光をカットしています。
フィルターの下にはカメラセンサーが見えます。NVC200と同じ小型1/4インチセンサーのようです。
※フィルターに埃が付着するとセンサーダストの原因になります。ご注意ください。
前面パネルです。ここにC/CSアダプターが収まればEOS-Cアダプターを取り付けて各種レンズが使えますが。
C/CSアダプターのサイズが1mmほど大きく、装着には加工が必要です。
本体を削るとレンズ筒の強度が落ちそうなのでマウントアダプターをヤスリで削ってサイズ調整です。
フロントパネルになんとか収まりました。
これでEOS-Cマウントアダプターも問題なく装着できます。C/CSアダプターが本体のプラスチック筒で固定されるので、重めのレンズを付けてもNVC200よりは強度を保てそうです。
配線を繋ぎなおして動作確認した上で再度組み立てます。
EFレンズを装着です。動作確認が正常に完了しました。これでNV016でもキヤノンEFレンズが使えるようになりました。
とはいえ、フィルターユニットの強度が不安なので、NVC200で使ったものと同じ金属製のフィルターユニットを注文です。
合わせてニコンFマウント用のアダプターも注文しました。これでニコンレンズも使えるようになります。
【テスト撮影】
簡単にテスト撮影してみましょう。シグマAPO50-500mm F4-6.3を装着して月面撮影です。
望遠端500mmです。クレーターもくっきり映っています。
4K動画から1080Pを切り抜くとここまで拡大できます。
さらに2倍テレコンを装着して1000mmです。かなりの拡大率ですがF値は2倍のF12.6に、受光量が4分の1になります。テレコン無しと比べると、ノイズが増えて画質も甘いかなという印象です。
2倍テレコンで4倍に拡大されます。おおよその拡大範囲です。
さらにデジタル5倍でここまで拡大できます。
拡大されているのはこのあたりです。
テレコン装着でどれくらい光量が落ちるかを確認するために静止画も撮影してみました。900m先のレストランを撮影です。静止画撮影時のシャッター速度の下限は1/15秒です。テレコンなしの500mmではISO740ですが。
2倍テレコンを装着するとISO2852まで上がりました。2段分感度が上がり、光量は4分の1になった計算です。画質はだいぶ甘くなりましたが、ISO感度上昇に伴うノイズの影響はそれほどでもない印象です。
【まとめ】
ということで、まとめです。今回はEOS-Cマウントアダプター装着のためNV016を分解改造してみました。NV016の基本的な構造はNVC200と似ておりレンズユニットはほぼ同じものが使われています。
C/CSアダプターの加工が若干手間ですが、簡単な改造でNV016でもC/CSマウント規格のレンズを装着できるようになります。これでNV016でもフルサイズレンズを使った超望遠撮影が可能になりました。夜間監視や野生動物撮影の用途に最適です。25mmのオリジナルレンズに比べて高画質で高倍率の撮影が実現できます。高い倍率を求める人にはこの改造がおすすめです。
NV016のオリジナルレンズは25mmで光学倍率がやや物足りない上に周辺部の画質がいまひとつなので、より倍率の高いC/CSレンズやKOWAなどの高性能レンズに交換するのもありでしょう。前回の動画ではC/CSレンズの画質比較もしているのでそちらも参考にしてください。
次回は、キヤノンEFマウントレンズを装着してのテストです。光学500mmの望遠レンズや2倍テレコンなどどれくらいの倍率で撮影できるかを見ていきましょう。NV016をはじめ赤外線撮影について質問などありましたらお気軽にコメントください。このチャンネルでは赤外線撮影に関する各種話題をお届けしています。更新情報をお届けできるので、チャンネル登録やいいねいただけるとうれしいです。