きょうも赤外線撮影の話題です。前回、普通のデジカメやスマホカメラでどれぐらい赤外線撮影ができるかを検証したところ、Xiaomi POCO F3のメインカメラは意外と赤外線感度が高いことがわかりました。ということで、今回はこのPOCO F3を使って透け透け写真が撮れるのかを検証してみます。合わせて、iPhoneやそのほかのAndroidスマホでも透け透け撮影ができるかも調べてみました。赤外線専用カメラと比較してどのぐらい透けるでしょうか。それでは検証スタートです。
なお、赤外線フィルターなど撮影機材の入手方法などはこちらに最新情報をまとめています。
【POCO F3】
はじめに今回検証に使用するPOCO F3について簡単に紹介しておきます。POCOはXiaomiのサブブランドで同社のスマホRedmiのグローバルモデルブランドとして展開されています。、F3は2021年4月発売の機種で、安価な割にSoCがSnapdragon 870と高性能で、全体的なバランスがよい製品です。
カメラセンサーは、メインに4800万画素の1/2インチSONY IMX582を搭載しています。過去にレビューで詳しく紹介していますが、暗所性能も高く、使い勝手の良いカメラです。
このPOCO F3で赤外線撮影を試したところ、意外と赤外線感度が高かったので、それならばと、今回は透け透け撮影にチャレンジすることになりました。
【検証①】
手始めに、POCO F3で赤外線リモコンの受光部を撮影してみましょう。カメラをテレビのリモコンに向けて撮影すると、センサーが赤外線にある程度の感度があるため、肉眼では見えないLEDの点滅が確認できます。
こちらはiPhone SEのメインカメラで撮影したものです。POCO F3より感度が弱いのがわかります。カメラの設計によっては赤外線感度が低く写らないものもあります。どのスマホでも赤外線撮影ができるわけではないのでご注意ください。
ちなみに、赤外線カットフィルターのないIIIF150 Raptorのナイトビジョンカメラでは、このようにかなり明るくLEDが発光しているのがわかります。
続いては、赤外線を透過しやすい素材でできたAmazon Fire TVのリモコンを撮影です。通常光で撮影してもリモコンの中身は透けませんが。
照明を落として、赤外線LEDライトを当てると、リモコンの中の電池や基盤が透けて見えます。照射した赤外線がリモコンのプラスチックを透過して、内部のパーツに反射することで、赤外線に感度のあるPOCO F3ではこのような写真を撮影することができます。
【IRフィルター】
続いては、衣類の赤外線透け透け撮影をテストしてみます。ここからは、可視光域を除去し、赤外線域だけを取り込むために、赤外線フィルター(IRフィルター)を装着します。
スマホ用のフィルタークリップホルダーに、17-37mmアダプター+37-55mmアダプター経由でIRフィルター(55mm)を装着します。
今回使用するスマホカメラは赤外線の感度が低いため、IRフィルターは数値が低めのZOMEI 680を使います。これで680nm未満の可視光域の波長がカットされます。
なお、シート状のIRフィルターを加工して使う場合は、FUJIFILMのIR76もしくは、シャープカットフィルター(SCフィルター)の60-72あたりがよいでしょう。数値が低くなるほど、センサーに入ってくる光量は増えますが、あまり低すぎると赤外線撮影にはジャマな可視光域が増えます。一般的な赤外線撮影には720nmあたりがよいと言われています。
【透け透け撮影】
それでは透け透け撮影です。ポリエステル製のスポーツウェアで試してみました。Tシャツの下には透け感チェックのためにクレヨンしんちゃんのイラストを挟んでおきました。照明を落として、赤外線LEDライトを当てて撮影してみます。
赤外線の効果で、下着が薄っすら透けていますね。クレヨンしんちゃんのイラストもぼんやりですが浮かんで見えます。POCO F3でも赤外線撮影は成功です。
ただし、センサーの感度が低いため、シャッター速度は1/8秒と、かなり遅めです。撮影対象が人間なら、動きで被写体ブレを起こすでしょう。実用性の面では微妙な性能です。晴天下で赤外線量が多ければもう少し良い結果が得られるかもしれません。
こちらは、専用の赤外線カメラを搭載したIIIF150 Raptorで撮影したものです。LEDライトの光量でもTシャツが鮮明に透けていますね。
Raptorのナイトビジョンカメラには赤外線カットフィルターがないので、感度が高く、透過率も大きくなっています。これなら室内でも動画撮影ができます。
こちらは、赤外線フィルターを外して、赤外線カメラに改造したPentax Q7で撮影したものです。IRフィルターを装着していますが、ISO250でシャッター速度は1/60です。こちらもきれいに透けています。カラーセンサーのため、赤みがかかった写真になります。
SONYのハンディカムFDR-AX55でナイトショットで撮影すると、このような画像になります。赤外線専用カメラで撮影すると、いずれもしっかり透けるのがわかります。
【その他のスマホ】
手元にあるそのほかのスマホでも赤外線撮影ができるかを調べてみました。iPhone SEです。わずかに電池が透けているかな程度です。POCO F3より感度は低いようで、赤外線撮影には厳しいですね。
もう1つは、HUAWEIのnova3です。モノクロカメラで撮影してみましたが、微かに電池が見えるかな程度です。専用モノクロセンサーということで普通のカメラよりは赤外線感度が高いと思いましたがそうでもなかったです。
最後は、同じPOCOの製品ですが、1世代前のPOCO X2(Redmi K30)です。センサーが、POCO F3より大きめの1/1.73インチ IMX686です。これならPOCO F3より透けるのではと期待しましたが、イマイチな結果でした。F3より赤外線カット率が高いようです。
ちなみに、専用のナイトビジョンカメラを搭載したIIIF150 Raptorだとこのように写ります。内部の単三電池の文字まで読めますね。
RaptorのメインカメラはサムスンのISOCELL HM2を搭載しています。108MPで1/1.52インチの大型センサーですが、こちらの暗所性能はいまひとつです。感度がISO28115まで上がりますが、赤外線の透過度はかなり低いようです。
赤外線カットフィルターを外してフルスペクトラム化したPentax Q7です。こちらもきれいに透けています。
【まとめ】
ということで、まとめです。赤外線の透過率は、スマホの機種によって大きな差があるようです。どの程度赤外線を透過するかは、赤外線カットフィルターの透過度の設計に加えて、センサーの性能も影響します。透過率が高いスマホならある程度は透け透け撮影ができるかなという結果でした。カメラの性能が高くても、赤外線カット量が大きいと透けないので、透けるかどうかは機種次第のようです。
今回メインで検証したPOCO F3は他の機種と比べると赤外線透過度は高く、衣類の透け透け撮影もできましたが、IIIF150 Raptorのような専用機と比べると透け具合はかなり劣ります。ISO感度を上げるため、画質はノイズが多く、シャッタースピードも遅くなるため手ブレしやすいです。
このため、動きのある被写体や動画撮影には厳しい結果でした。静止画ならなんとか使えるかなというレベルで、ナイトビジョンカメラを搭載したスマホや、赤外線フィルターを取り外したデジカメのような赤外線専用機と比べると見劣りしますね。
とはいえ、赤外線の照射量が多い晴天下の屋外なら、もう少しきれいに撮影できるかもしれません。あいにくの雲天続きで、今回は屋外での検証ができませんでしたが、後日、天気の良い日に改めて屋外での透け透け撮影にもチャレンジしてみたいと思います。今回は手持ちのスマホでの検証になりましたが、ご視聴の皆さんのスマホで赤外線感度のものがあったらコメントください。このチャンネルでは赤外線撮影の話題をいろいろお届けしていますので、合わせてチャンネル登録もいただけるとうれしいです。