各種デジカメ用レンズが装着可能になったナイトビジョンカメラ NVC200 ですが、「フルサイズ用の望遠レンズは大きすぎて重い」と感じたことはありませんか?
そこで今回は、CAD未経験の初心者が無料ソフト「Autodesk Fusion」を使い、格安3Dプリントサービスの「JLC3DP」で専用アダプターを自作する工程を詳しくレポートします。
- フランジバックの計算と無限遠への対応
- 市販アダプターがないなら作る!設計の考え方
- JLC3DPで安価(数百円〜)に3Dプリント注文する手順
動画内で紹介した製品(Amazonリンク)
フランジバックについて簡単に解説
Eマントのフランジバック長は18mm
はじめにマウントアダプターについて簡単に解説しておきます。異なるメーカーのレンズを装着できるマウントアダプターですが、アダプターを介せばどんなレンズでも使えるわけではなくいくつかの制限があります。その1つがフランジバックです。
フランジバックはレンズマウントからイメージセンサーまでの距離です。例えばSONY Eマウントレンズのフランジバックは18mmで、この距離で遠くの被写体(無限遠)にピントが合うよう設計されています。
Eマウントは18mmを超えると無限遠のピントが合わない
SONY Eマウントレンズを例に説明します。フランジバックがピッタリ18mmなら無限遠でピントが合いますが、18mmを超えるとピントがレンズ側にズレた前ピンになります。
センサー面より前に無限遠のピントが来るとフォーカスでは調整ができないので、他機種でEマウントレンズを使うにはフランジバックを18mm以内に収める必要があります。
フランジバックが短いのは問題なし
なお、フランジバックが短くなる(=マウントがセンサーに近づく)場合は、レンズのピントリングを回せば無限遠が出ます。最短焦点距離は短くなりますが、中~遠距離での撮影では問題はおきません。
フランジバックが短いカメラはアダプターが少ない。
フランジバックの長いニコンFやキヤノンEFレンズ向けには、C/CSマウント用の変換アダプターが市販されていますが、フランジバックの短いマイクロフォーサーズなどのミラーレスカメラ用レンズ向けのアダプターはほとんど見当たりません。
物理的な制約でレンズを装着することが難しく、装着できても無限遠でピントが合わなくなるからです。
NVC200(CSマウント)のフランジバックは12.5mm
NVC200はフランジバック12.5mmのCSマウントを採用しており、Eマウント(18mm)より5.5mm短いため、アダプターの厚さが5.5mm以内に収まれば無限遠でピントが合うようになります。
ちなみに、マイクロフォーサーズレンズをEマウントカメラに装着するためのアダプターは市販されているので、Eマウント用のアダプターさえ用意できればM43レンズも使えるようになります。
Eマウントレンズ用の市販アダプター
それでは、SONY Eマウントから見ていきましょう。Eマウントレンズ用のアダプターはe-bayで扱いがありました。中国のXPImageというメーカーが製造販売しています。ただ、送料込みで2万円オーバーは高い…。
3Dプリント用のCADデータを見つければ簡単に製作できるということで探してみるもEマウントレンズ用のものは見つかりませんでした。CマウントとEマウントのCADデータはあるので2つをくっつければ作れそうですが、設計から製作までとなると敷居が高いということで一旦保留です。
マイクロフォーサーズレンズアダプターのCADデータ
マイクロフォーサーズレンズはフランジバックが19.25mmで、こちらもCSマウントなら6.75mmの余裕があるので取り付けできそうです。市販のアダプターを探してみましたがこちらは見つからず。
ところが、マイクロフォーサーズについてはCマウントカメラ用のマウントアダプターCADデータが見つかりました。ということで、試しにこのデータをプリントアウトしてみることに。
3DプリントサービスJLC3DPを使って出力してみよう
既存データを出力することに
自前で3Dプリンターを用意して出力してみたいところではありますが、CADすら使ったことがない素人なので今回はプリントサービスを利用することに。既存のデータを使ってマイクロフォーサーズ用のマウントアダプターを出力します。
DMMなど国内サービスはかなり高額
DMM.makeで見積もると、アルミニウム合金で1.8万円、ナイロン素材で4700円と、比較的高額でした。
中国で作れば8分の1の価格に!
価格が高いと感じ、代わりに中国の3DプリントサービスJLC3DPを調べてみると。
アルミ合金でも19ドル(2900円)とかなり安い。
Thingiverseのデータをそのままプリント
ナイロン素材なら3.59ドル(550円)ということで試作してみることに。Thingiverseで拾ってきたSTEPファイルをアップロードして素材やカラーを指定するだけでオーダーできます。
MJF(Nylon)で、素材はPA12-HP ナイロン、染色黒色を選択します。商品概要は税関申告用のHSコードのことで、今回はプラスチックブラケット(HS 392690)にしました。
今回選んだナイロンMJFは、ヒューレット・パッカードの3Dプリンターが使われています。
家庭用プリンタより強度・精度が高い
家庭用3Dプリンタより強度や精度が高く、サポート材も必要ないのが特徴です。ナイロン版が問題なく使えればアルミ合金を追加注文しようかな。
送料込み840円で
料金は送料割引込みで計5.59ドル(840円)。支払いはクレジットカードのほかにPayPalなどでも決済できます。素人でも簡単に注文できました。3営業日で発送されるとのこと。
急ぎの場合は少し高い($13.5 / ¥2080)ですがDHL便を使えば1-3営業日で届きます。
やり取りは英語もGoogle翻訳で対応
注文の翌日、JLC3DPからネジ部の厚みが足りないのできれいに出力できないかもとの連絡がありました。とりあえずそのまま出力してもらうことに。
なお、注文に問題があったときのやりとりは英語になるのでご注意を。
Gmailの翻訳機能を使えば内容はわかりますし。
返信の候補も出てくるので、よほど複雑な事例でなければ大丈夫かと。
プリントに問題はなかったようで、工程も順調に進みました。CADデータさえ見つけてくれば知識ほぼゼロでも簡単かつ安価に3Dプリントができるとは便利な世の中になったものです。
届いたアダプターにマイクロフォーサーズレンズを装着
注文から10日で届きました
10月16日夜に注文した商品は週明けの火曜朝には発送され、26日に到着です。国内配送はクロネコヤマトでした。
プリント品質は問題なし
外観から見ていきましょう。外観の質感は滑らかで、しっかりとした作りを感じさせます。
YouTubeで見る家庭用プリンターの出力と比べると目も細かく、触ってみた感じでは強度も十分です。
ネジ山もきれいに造形されており、これなら問題なく装着できそう。
マイクロフォーサーズレンズを装着
さっそくG MACRO 30mm F2.8を装着してみましたが、マイクロフォーサーズマウント側が明らかに緩く、しっかり固定できませんでした。
プリント誤差で生じるような緩みではなく、設計時のロック機構の厚みが1-2mmほど足りていないようです。
装着してみました。CSマウント側のネジは問題なし。ただマイクロフォーサーズ側は噛み合わせが緩い上にロック機構がなく、すぐにレンズが外れるのでこれで撮影するのは厳しいです。キツいぶんには削って調整すればいいのですが、緩いのはどうにもならない…。
マイクロフォーサーズレンズは手動ピントが使えない…
緩みさえ調整すれば撮影は問題なくできるかなと思ったところ思わぬ問題が。いくらフォーカスリングを回してもピントが合いません。
調べたところ、ほとんどのマイクロフォーサーズレンズはフォーカス・バイ・ワイヤ方式を採用しており、カメラ本体から電気的にピントリングを動かす仕組みのため、レンズ単体での手動ピント調整に対応しないようです。ということは、NVC200にマイクロフォーサーズレンズを装着できても使えない…。これは想定外です。
まとめ:初心者が3Dプリントサービスを使いこなすために

今回は、NVC200に小型レンズを装着するための第一歩として、マウントアダプターの設計と発注に挑戦しました。今回は公開されているSTLデータをもとにマイクロフォーサーズ用のマウントアダプターを中国の3DプリントサービスJLC3DPを使って出力してみました。
JLC3DPのプリントサービスはDMMなど国内サービスと比べるとかなり安価なので、日数が10日程度かかっても構わないならおすすめです。STEPやSTLのようなCADデータを探してきてアップロードするだけなので、注文は簡単です。Aliexpressのような海外通販を使ったことがある人なら問題なく使えるでしょう。
3Dプリントについては、ナイロンMJF方式で出力しましたが、マウントアダプターに使えるだけの強度があるので材質的には問題なさそう。ただ、ネジ山など細かい箇所の造形は一般的なプラスチック製品と比べると粗いので、耐久性がどうかは不明です。アルミプリントでも安価に製作できるのでそちらを視野にいれるのもよいかも。
しかし、重要な点を見落としていました。マイクロフォーサーズレンズの多くはマニュアルフォーカスに対応しておらず、装着できても使用できないことがわかりました…。
実際にやってみて分かった、重要なポイントは以下の3点です。
- フランジバックの計算は必須: 闇雲に作るのではなく、センサーまでの距離(Eマウントなら18mm以内)を把握することが成功の鍵です。
- JLC3DPはコスパ最強: 国内サービスと比較しても圧倒的に安く、ナイロン素材なら数百円から試作が可能です。
- CAD未経験でも道はある: 既存のSTEPファイルやSTLデータを活用すれば、知識ゼロからでも立体物を手に入れることができます
せっかく3Dプリントを使ったので、今回の経験を生かして、次回はCADソフトAutodesk Fusionを使ってSONY Eマウントレンズ用のCSマウントアダプターを製作してみます。NVC200でSONY Eマウントレンズは使えるのでしょうか。ぜひ続編もお楽しみに。
【レビュー】CAD未経験でも自作!SONY EマウントアダプターをAutodesk Fusionで設計【NVC200改造】
よくある質問(FAQ)
Q1:CADの知識がなくてもJLC3DPで注文できますか?
A: はい、可能です。Thingiverseなどの共有サイトからダウンロードした3Dデータ(STLやSTEPファイル)があれば、それをアップロードするだけで注文できます。
Q2:ナイロン素材(MJF)の強度はマウントアダプターに十分ですか?
A: 今回使用したPA12-HPは非常に強度が高く、軽量なレンズであれば実用上問題ない質感です。ただし、重い望遠レンズを使用する場合はアルミ合金(アルミニウム)での製作をおすすめします。
Q3:JLC3DPで注文してから届くまで何日かかりますか?
A: 今回のケースでは、10月16日に注文して26日に到着したため、約10日間でした。お急ぎの場合はDHL等の高速便を使えば1週間以内の到着も可能です。
Q4:海外サービスへの注文で英語のやり取りは必要ですか?
A: 基本的にはサイト上のフォームだけで完結します。データに不備があった際の連絡は英語ですが、Gmailの翻訳機能を使えば初心者の方でも十分対応可能です。
【レビュー】CAD未経験でも自作!SONY EマウントアダプターをAutodesk Fusionで設計【NVC200改造】



































