CAD未経験者がEマウントアダプターを自作してみた。前回、NVC200用のマイクロフォーサーズ to CSマウントアダプターの3Dプリントに挑戦しました。アダプターの出力はなんとかできましたが、検証の結果マイクロフォーサーズレンズ単独ではマニュアルフォーカスが使えないことが判明しました。
それなら、SONY Eマウント用のアダプターをということで、今回はAutodesk Fusion(旧Fusion 360)を使ってE-CSマウントアダプターを製作してみることに。
CADソフトも扱ったことのない素人ですが、SONYレンズ用のマウントアダプターはつくれるのか。はじめての自作3Dプリントにチャレンジです。今回は前編として、Autodesk Fusionを使った3Dデータ制作の過程をお届けします。
なお、NVC200の仕様や詳細については撮影編、修理&改造編など過去動画で詳しく紹介しています。YouTubeには掲載できなかった情報や追加情報についてはブログに随時掲載しているのでそちらも参考にしてください。それではレビュースタートです。
【動画内で紹介した製品(Amazonリンク)】
【C-CSアダプター】
CADソフトも触ったことのない素人がいきなり形状の複雑なマウントアダプターを製作するのは難しいので、手始めにNV016用のC-CSアダプターを製作してみることに。
NV016にEOS-Cマウントアダプターを装着するにはC to CSアダプターが必要ですが、市販のアダプターではサイズが1〜2mmほど大きく装着できません。
アダプターの外周をヤスリで削るのは大変なので、NV016に装着できるように市販の31mmより少し径の小さい外径28mmの専用アダプターを自作してみます。
Thingiverseで公開されているC-CSアダプターのSTLファイルを加工すれば簡単にできるかなと考えましたが。三角形の集合体であるポリゴンSTLデータを編集可能な状態にするにはいろいろと面倒なことが判明しました。
箱のような単純な構造のものなら比較的簡単に加工できますが、円やネジ山があるとかなり複雑な処理が必要なようで、我が家の古めのPCでは処理中にフリーズが多発する上に、生成されたポリゴンデータが細分化されすぎて加工するのに手間がかかります。
Eマウント用のアダプターを作るならどのみちCADソフトは必要ということでAutodesk Fusionで自作することに。
【Autodesk Fusion】
Autodesk Fusionは私的利用ならフリーで使えるCADソフトです(※保存ファイル数など一部機能制限あり)。YouTubeにも使用方法を解説する動画がたくさんあるのでこちらを使用することに。
基本的な使い方はIllustratorとかと似ていますが、三次元なので最初は面の選択とかで躓くかもしれませんが、慣れればそれほど難しくはないです。
スケッチで四角や円の図形を作ってプル/プレスで押し出したり、へこませたり、穴を開けたりして立体を作っていきます。
Fusionには主要なネジ規格が登録されているので、 オスネジとメスネジを作って貼り合わせれば簡単に作れます。
C/CSマウントのネジは1"-32 UNという規格で、ネジ径25.4mm、ピッチ0.794mmです。
ネジのタイプはANSIユニファイ、サイズ1インチ、表示記号1-32 UN。クラスは3Bが遊びの少ない精密な等級で、一般的な用途であれば2Aで大丈夫です。
オスネジ4mmとメスネジ5mmを貼り合わせて完成かと思いきや、拡大するとスキマができています。
市販のアダプターをよく見ると、オスネジ+スペース+ベース+スペース+メスネジの構成になっているので、3mm(オスネジ)+1mm(スペース)+1mm(ベース)+1mm(スペース)+3mm(メスネジ)と5つのパーツを組み合わせることに。
なんとか形は整いましたが、このままではネジがぴったりすぎて回らないみたいです。遊びができるようオスネジを微調整します。どの程度が適切なのか不明なため、スケール0.98で試してみます。
完成したデータを前回利用したJLC3DPにプリント依頼して完了です。
出力イメージです。ネジ山の厚みが不足するため赤い箇所が多めですが、このまま出力を依頼します。
【SONY E-Cアダプター】
カメラ側のCマウントオスネジは制作できたので、あとはEマウント側のメス型を作って、フランジバックを調整すればE-Cマウントが作れるはず。
Eマウント用のレンズキャップデータを使えば簡単にできそうですが、編集可能なSTEPファイルがなく、メッシュデータのSTLファイルしか見つからなかったので、こちらもFusionでゼロから設計することに。
ただ、Eマウント側はレンズロック機構の着脱ピンなど素人には敷居が高そうです。
ネットで探してみるも、そもそも市販されているEマウントレンズ用のアダプター自体が少なく、マイクロフォーサーズのような設計用データ(写真)も見つかりません。
思案したところ、手元にEマウント用のマクロアダプターがあったのでこちらを使うことに。
分解してみるとロックピンやバネなどのパーツを流用できそうです。
ということで、レンズ側はこのマクロアダプターのパーツを使い、アダプター本体+CSマウントをFusionで製作します。
アダプターの写真を取り込んでトレースしながら設計していきます。
円と扇形を押し出したりくり抜いたりしてベースを作ります。
このあたりまでは比較的簡単です。ネジ穴は細かすぎて3Dプリンターでは難しいので径1mmの穴だけ開けます。
バネを収める着脱ピンの箇所が少し複雑ですが、なんとか形になりました。
スマホ写真からのトレースでは精度が怪しいので、改めて図面を引いて正確な数字で下書きを作り直します。着脱ピンの位置を起点に角度を測定し、図形を配置します。
切り欠きやネジ穴は収まりのよい数字になっているので大丈夫ですが、指標ピンの位置だけ微妙な角度で心配です。まあ、この箇所は無くても機能するので、ハマらない場合はあとでカットすればよし。
やや複雑な形状でしたが、Eマウント側はなんとか完成しました。
【サイズ調整】
CSマウントオスとEマウントメスのアダプターパーツはなんとか形になったので、細部を調整していきましょう。
アダプターの全長ですが、NVC200に使われているCSマウントのフランジバックは12.5mmです。
一方、SONY Eマウントのフランジバックは18mm。CSマウントのレンズに装着するには5.5mmでアダプターを作ればよい計算です。
この5.5mmはEマウントレンズの装着面(アダプターの接する面)からCSマウントに接する場所までの距離で、CSマウント用のオスネジ(4mm)の長さは除外できます。
手元のEマウントレンズを見ると、レンズ接地面からの繰り出しが金属部5mm+プラスチック部0.5〜1mm(※装着するレンズによる)で、アダプター本体を5.5mm以内に収めるのは難しい。
加えて、ナイロンMJFの3Dプリントは最低1mmの厚さが必要で、アダプターの全長は最短でも7mmになる計算です。これではフランジバックが19.5mmで、Eマウントの18mmより1.5mm長く無限遠でピントが合いません。
前回紹介したRedbeastのSONY E-CSアダプターはフランジバックを6.5mmに設定してあるとのこと。やはり、5.5mmに収めるのは難しいみたいです。
Eマウントアダプター計画は終了かと思われましたが、よくよく考えてみるとSIGMA APO 50-500ではフランジバックが合致しない状態でも無限遠が出ていた記憶が。
調べてみると、FE 70-200 F2.8など一部のズームレンズは内部フォーカスで後側焦点位置が前方にシフトするフローティングエレメントという構造が採用されており、フランジバックが長くても望遠側であればピントが合うみたいです。
また、今どきのレンズは無限遠側に遊びをもつオーバーインフィニティ機能を搭載しているので0.5-1mmくらいのフランジバック誤差を吸収できます。
使えるレンズがあるならせっかくだし作ってみるかということで、可能な限り全長を短くしてアダプター製作することに。オスネジ部を除いての全長(フランジバック)は5.5mm+1.5mmの7mmに。
最後にプリント規格に合うように細部を微調整します。今回使用するナイロンMJFではネジ穴のような微細孔はΦ1.5mm、ピンなど小型円柱はΦ2mmが最小単位なので修正します。1mmのネジ穴は後からドリルで開けることに。
とりあえず、これを試作品として出力してみましょう。前回利用したJLC3DPにプリントオーダーします。
プリントオーダーの手順はマイクロフォーサーズ編で詳しく解説しているのでそちらを参照ください。
確認したところアダプターの厚みも問題なし。
プリント料金はC-CSアダプターが1ドル、SONY E-CSが3.06ドルです。
これにOCS Expressの送料2ドルがかかります。
急ぎの場合は少し高い($13.5)ですがDHL便を使えば1-3営業日で届きます。
注文完了です。とりあえず今回はここまで。商品が届いたら後編レビューです。
【まとめ】
ということで、まとめです。今回はNVC200にSONY Eマウントレンズを装着するためのマウントアダプターをCADソフトで制作してみました。
はじめてAutodesk Fusionは当初操作方法が今ひとつピンときませんでしたが、3日も使えば慣れてきてマウントアダプター程度ならつくれるように。Illustratorとか使ったことある人なら、要領さえわかれば操作はそれほど難しくないです。
アダプター制作については、Eマウントの図面がないため写真からのトレースになりましたが、マクロアダプターとの組み合わせでなんとかなりそう。ロック機構が必要ないなら、レンズキャップからデータを取って作る簡易版でも大丈夫です。
Eマウントレンズはフランジバックが短いため、CSマウントでは無限遠が出ませんが、一部のズームレンズは焦点位置が動くということで無限遠が出ることを期待です。
今回注文したアダプターがうまく機能すれば、同じフランジバック18mmのEOS-Mや17.7mmのFujifilm Xマウントあたりも使える可能性がでてきます。
次回は到着したマウントアダプターを検証です。うまくEマウントレンズに装着できるか、無限遠が出るかなどNVC200に装着して検証してみます。興味のある人はチャンネル登録で更新情報が届きます。
このチャンネルでは赤外線撮影に関する各種話題をお届けしています。動画の内容について質問などありましたらお気軽にコメントください。更新情報をお届けできるので、チャンネル登録やいいねいただけるとうれしいです。










.jpg)











.png)
















0 件のコメント:
コメントを投稿