各種デジカメ用レンズが装着可能になったナイトビジョンカメラNVC200ですが、フルサイズ用の望遠レンズは大きく重いため、取り扱いに不便さがあります。
そこで、よりコンパクトなSONY Eマウントやマイクロフォーサーズのレンズを試してみることにしました。マウントアダプター経由で小型レンズが使用できるかを検証します。
中国の格安3DプリントサービスJLC3DPを使って製作したマウントアダプターでマイクロフォーサーズ用の小型レンズ装着にチャレンジです。フリーのデータを使ってはじめての3Dプリントです。CAD未経験者にサービスは使いこなせるのでしょうか。大失敗までの道のりをレポートです。
なお、NVC200の仕様や詳細については撮影編、修理&改造編など過去動画で詳しく紹介しています。YouTubeには掲載できなかった情報や追加情報についてはブログに随時掲載しているのでそちらも参考にしてください。それではレビュースタートです。
【動画内で紹介した製品(Amazonリンク)】
【フランジバック】
はじめにマウントアダプターについて簡単に解説しておきます。異なるメーカーのレンズを装着できるマウントアダプターですが、アダプターを介せばどんなレンズでも使えるわけではなくいくつかの制限があります。その1つがフランジバックです。
フランジバックはレンズマウントからイメージセンサーまでの距離です。例えばSONY Eマウントレンズのフランジバックは18mmで、この距離で遠くの被写体(無限遠)にピントが合うよう設計されています。
SONY Eマウントレンズを例に説明します。フランジバックがピッタリ18mmなら無限遠でピントが合いますが、18mmを超えるとピントがレンズ側にズレた前ピンになります。
センサー面より前に無限遠のピントが来るとフォーカスでは調整ができないので、他機種でEマウントレンズを使うにはフランジバックを18mm以内に収める必要があります。
なお、フランジバックが短くなる(後ピン=ピントが奥にずれる状態)場合にはレンズ側のピント調整で対応できるので無限遠でピントが合わなくなる問題は発生しません。
フランジバックの長いニコンFやキヤノンEFレンズ向けにはC/CSマウント用の変換アダプターが市販されていますが、フランジバックの短いマイクロフォーサーズなどのミラーレスカメラ用レンズ向けのアダプターはほとんど見当たりません。
NVC200はフランジバック12.5mmのCSマウントを採用しており、Eマウント(18mm)より5.5mm短いため、アダプターの厚さが5.5mm以内に収まれば無限遠でピントが合うようになります。
ちなみに、マイクロフォーサーズレンズをEマウントカメラに装着するためのアダプターは市販されているので、Eマウント用のアダプターさえ用意できればM43レンズも使えるようになります。
【Eマウントアダプター】
それでは、SONY Eマウントから見ていきましょう。Eマウントレンズ用のアダプターはe-bayで扱いがありました。中国のXPImageというメーカーが製造販売しています。ただ、送料込みで2万円オーバーは高い…。
3Dプリント用のCADデータを見つければ簡単に製作できるということで探してみるもEマウントレンズ用のものは見つかりませんでした。CマウントとEマウントのCADデータはあるので2つをくっつければ作れそうですが、設計から製作までとなると敷居が高いということで一旦保留です。
【マイクロフォーサーズ】
マイクロフォーサーズレンズはフランジバックが19.25mmで、こちらもCSマウントなら6.75mmの余裕があるので取り付けできそうです。市販のアダプターを探してみましたがこちらは見つからず。
ところが、マイクロフォーサーズについてはCマウントカメラ用のマウントアダプターCADデータが見つかりました。ということで、試しにこのデータをプリントアウトしてみることに。
【3Dプリント出力】
自前で3Dプリンターを用意して出力してみたいところではありますが、CADすら使ったことがない素人なので今回はプリントサービスを利用することに。既存のデータを使ってマイクロフォーサーズ用のマウントアダプターを出力します。
DMM.makeで見積もると、アルミニウム合金で1.8万円、ナイロン素材で4700円と、比較的高額でした。
価格が高いと感じ、代わりに中国の3DプリントサービスJLC3DPを調べてみると。
アルミ合金でも19ドル(2900円)とかなり安い。
ナイロン素材なら3.59ドル(550円)ということで試作してみることに。Thingverseで拾ってきたSTEPファイルをアップロードして素材やカラーを指定するだけでオーダーできます。
MJF(Nylon)で、素材はPA12-HP ナイロン、染色黒色を選択します。商品概要は税関申告用のHSコードのことで、今回はプラスチックブラケット(HS 392690)にしました。
今回選んだナイロンMJFは、ヒューレット・パッカードの3Dプリンターが使われています。
家庭用3Dプリンタより強度や精度が高く、サポート材も必要ないのが特徴です。ナイロン版が問題なく使えればアルミ合金を追加注文しようかな。
料金は送料割引込みで計5.59ドル(840円)。支払いはクレジットカードのほかにPayPalなどでも決済できます。素人でも簡単に注文できました。3営業日で発送されるとのこと。
急ぎの場合は少し高い($13.5 / ¥2080)ですがDHL便を使えば1-3営業日で届きます。
注文の翌日、JLC3DPから厚みが足りないのできれいに出力できないかもとの連絡がありました。とりあえずそのまま出力してもらうことに。
なお、注文に問題があったときのやりとりは英語になるのでご注意を。
Gmailの翻訳機能を使えば内容はわかりますし。
返信の候補も出てくるので、よほど複雑な事例でなければ大丈夫かと。
プリントに問題はなかったようで、工程も順調に進捗です。CADデータさえ見つけてくれば知識ほぼゼロでも簡単かつ安価に3Dプリントができるとは便利な世の中になったものです。
【開封】
10月16日夜に注文した商品は週明けの火曜朝には発送され、26日に到着です。国内配送はクロネコヤマトでした。
外観から見ていきましょう。外観の質感は滑らかで、しっかりとした作りを感じさせます。
YouTubeで見る家庭用プリンターの出力と比べると目も細かく、触ってみた感じでは強度も十分です。
ネジ山もきれいに造形されており、これなら問題なく装着できそう。
さっそくG MACRO 30mm F2.8を装着してみましたが、マイクロフォーサーズマウント側が明らかに緩く、しっかり固定できませんでした。
プリント誤差で生じるような緩みではなく、設計時のロック機構の厚みが1-2mmほど足りていないようです。
装着してみました。CSマウント側のネジは問題なし。ただマイクロフォーサーズ側は噛み合わせが緩い上にロック機構がなく、すぐにレンズが外れるのでこれで撮影するのは厳しいです。キツいぶんには削って調整すればいいのですが、緩いのはどうにもならない…。
【盲点が…】
緩みさえ調整すれば撮影は問題なくできるかなと思ったところ思わぬ問題が。いくらフォーカスリングを回してもピントが合いません。
調べたところ、ほとんどのマイクロフォーサーズレンズはフォーカス・バイ・ワイヤ方式を採用しており、カメラ本体から電気的にピントリングを動かす仕組みのため、レンズ単体での手動ピント調整に対応しないようです。ということは、NVC200にマイクロフォーサーズレンズを装着できても使えない…。これは想定外です。
【まとめ】
ということで、まとめです。今回は公開されているSTLデータをもとにマイクロフォーサーズ用のマウントアダプターを中国の3DプリントサービスJLC3DPを使って出力してみました。
JLC3DPのプリントサービスはDMMなど国内サービスと比べるとかなり安価なので、日数が10日程度かかっても構わないならおすすめです。
STEPやSTLのようなCADデータを探してきてアップロードするだけなので、注文は簡単です。Aliexpressのような海外通販を使ったことがある人なら問題なく使えるでしょう。
3Dプリントについては、ナイロンMJF方式で出力しましたが、マウントアダプターに使えるだけの強度があるので材質的には問題なさそう。
ただ、ネジ山など細かい箇所の造形は一般的なプラスチック製品と比べると粗いので、耐久性がどうかは不明です。アルミプリントでも安価に製作できるのでそちらを視野にいれるのもよいかも。
今回作ったアダプターは設計データの精度が今ひとつで、マウントが緩くて使い物になりませんでしたが、サイズ調整すれば大丈夫そうです。
しかし、重要な点を見落としていました。マイクロフォーサーズレンズの多くはマニュアルフォーカスに対応しておらず、装着できても使用できないことがわかりました。
せっかく3Dプリントを使ったので、今回の経験を生かして、次回はCADソフトAutodesk Fusionを使ってSONY Eマウントレンズ用のCSマウントアダプターを製作してみます。NVC200でSONY Eマウントレンズは使えるのでしょうか。興味のある人はチャンネル登録しといてください。
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