【レビュー】850nm vs 940nm 赤外線ライト比較①


SONYハンディカムを使っての暗視撮影用にAliExpress850nm940nmの赤外線ライトを購入してみました。暗視撮影をする際に重要な役割を果たす赤外線ライトですが、性能の違いを比較する動画があまり無いようなので、詳しくレビューしてみたいと思います。同一メーカーの波長が異なる赤外線ライトで映り方にどのような違いがあるのか、また光源がどのように見えるのかを調べてみました。それでは詳しく見ていきましょう。

IRトーチ

検証に使うのはAliExpressで入手したノーブランドの赤外線ライトです。IRトーチという呼び方が一般的なようですが、いわゆる懐中電灯ですね。

今回は比較のために同一メーカーのIRトーチ850nm940nmの2タイプを購入しました。価格は1個1800円です。

別売の18650電池を入れて使います。余談ですが、ノーブランド中華18650電池は品質が悪い上に容量詐欺が多いのでご注意を。写真の電池も9800mAhなんて容量はありません。また、安品質の悪い製品は電圧がすぐ低下するため高輝度LEDでは短時間で光量が低下、使えなくなります。ある程度名の知れたメーカーの製品をおすすめします。

今回購入した赤外線トーチに搭載されているのはパワーLEDと呼ばれる高輝度の半導体です。光を拡散する丸いレンズの下に半導体が見えます。

トーチの先端には凸レンズが配置されています。このレンズ筒を前後させることでズームアウトズームインでき、赤外線の照射範囲を調整できます。望遠撮影ではレンズを繰り出して照射範囲を狭めることで遠くに光を集めることができます。逆に、近くを撮影するにはレンズ筒をLED側に近づけることで広角に光を拡散します。

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※レビューした商品とは異なります。

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テスト撮影

それではさっそく検証スタートです。IIIF150 Raptorのナイトビジョンカメラ(赤外線カメラ)で検証していきます。河原から50m離れた橋脚を撮影です。

撮影はオートで、データを見るとISO 20000、シャッタースピード1/8秒です。この状態で850nm940nmのLEDライトをそれぞれ橋脚のコンクリート壁に当てて撮影します。

850nmから見ていきましょう。赤外線の当たる3メートル四方が明るく写っています。

続いて940nmです。850nmと比べるとやや暗いですね。

一般的なカメラセンサーは波長が長くなるほど感度が低くなります。このため、同じ光量でも940nmでは受光できる量が少なくなるようです。

動画撮影

動画の画質も比べてみましょう。動画になるとシャッタースピードの上限が1/30秒に落ちるため、1/8秒の静止画と比べると2段分画面が暗くなります。赤外線光なしではほとんど映りません。

850nmです。輝度は十分ですが、ズーム端では配線の影響か、細いスリット(縞模様)が縦横に見えるのが気になります。レンズ筒を少し戻すとスリットは収まります。

LEDを拡大して見ると配線が見えますね。これが影になってスリットが発生しているようです。

940nmも同様に中央のスリットが目立ちます。また、850nmと比べるとやや暗いです。

遠距離

続いてはもう少し距離を離して撮影してみます。場所を移して公園の芝生広場で90m先にある看板を撮影します。

日中スマホカメラで撮影するとこのような感じの場所です。

2倍ズームです。中央の白い看板を望遠撮影します。

看板の大きさは200cm×50cmぐらいですかね。

Raptorのナイトビジョンカメラでは広角すぎるので、ハンディカム FDR-AX55のナイトショット機能を使用します。4K動画撮影時は手ブレ補正機能の都合で中心部を切り抜いて撮影するので光学30倍(800mm相当)になります。

SONY 4K ビデオカメラ ハンディカム FDR-AX60

さらに、オリンパスの1.7倍テレコンバージョンレンズTCON-17を装着して1360mm(56倍)相当の超望遠撮影です。

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照明なしだとこんな感じです。四角い看板の形がなんとか見えるかな。

850nmです。ライトの照射範囲を最小まで狭めてみました。90m離れると最小にしてもかなり広い範囲が照らされます。赤外線光が当たっているのは8メートル四方ぐらいでしょうか。正方形の光ですが、横方向に縞模様が見えるのが気になります。

照射範囲を少し広げるとスリットは目立たなくなりますが、そのぶん光が拡散するため画面は暗くなります。

望遠端までズームしてみました。文字があるのはわかりますが、光量が少ないため細かな文字は判読不能です。

100m離れても暗視撮影は可能ですが、光量が不足するため全体的にノイズが多いですね。ハンディカムの最低被写体照度はカラー9LUXで、ナイトビジョンカメラと比べるとセンサーの感度が低いことが影響しているようです。

続いては940nmです。こちらもレンズ筒を最大に繰り出した状態では配線部分が暗くなっています。

望遠端の画像は850nmと比べるとかなり暗いです。ハンディカムのセンサーは、940nm域では赤外線感度がかなり落ちるようです。一般的なCMOSセンサーは波長が長くなるほど感度が低下するため、940nmでは850nmと比べると30〜40%程度暗くなるようです。

60mでは

940nm域でのセンサー感度が低いハンディカムでは、距離が90m離れると厳しいということで、もう少し近づいて60mの距離でも撮影してみました。

850nmから見ていきましょう。照射範囲を最小まで狭めるとかなりスリットが目立ちます。

望遠端までズームすると、看板の文字が判読できるほど明るく写っています。十分な明るさです。

ただ、スリットの影響で、ライトの角度によっては黒い影が目立ちます。

照射範囲を広げるとスリットは消えますがやや暗くなります。ノイズは増えますが文字はなんとか読めるレベルです。

940nmです。850nmと比べるとかなり暗いです。文字も読めません。60mの距離ではギリギリ映るかなという印象です。


25m離れた橋脚を撮影です。これくらいの距離なら940nmでも十分明るいです。ハンディカムでは940nm域の感度が低いので30mあたりが限界のようです。

見え方

ハンディカムの暗視撮影には850nmが有利ということがわかりましたが、この帯域の赤外線LEDは発光部が赤く光って肉眼でも見えるのが欠点です。一方で、940nmの赤外線ライトは可視光の発光量が少なく秘匿性が高いというメリットがあります。そのあたりも見ていきましょう。

850nm940nmを並べて20m離れた場所からスマホカメラで撮影してみました。右側が850nmです。ノーマルカメラのため照射される赤外線はほとんど写りませんが、光源は明るく光っています。人間の目には見えない赤外線光ですが、赤外線LEDライトの光源部分はそれなりに赤く発光しています。850nm940nmとを比べると850nmのほうが明るく光っているのがわかります。

なお、スマホカメラは赤外線域にも若干感度があるため、写真のような写り方ですが、肉眼では赤く光って見えます。

スマホカメラでは2つの灯りが見えますが、20m離れると左側の940nmはの明かりは肉眼ではほとんど見えません。一方で、850nmはかなり赤く光って見えます。

50mです。この距離でも850nmは肉眼で光源が赤く光っているのがわかります。真っ暗な場所であれば赤外線ライトがあることに気づきます。

100m離れた場所です。カメラでは光源が光っているのが確認できますが、ここまで離れると、肉眼では注意深く見ればほんのり赤く光っているかな程度で、まず気づくことはないでしょう。

まとめ

ということで、まとめです。

今回テストしたズーム機能付きLEDトーチは、撮影対象の距離に合わせて照射範囲を調整できるので、遠距離でも多くの赤外線を照射できるのがメリットです。狭い範囲に光量を集中できるズームレンズ付きの製品が望遠赤外線撮影にはおすすめです。

次に、波長の違いについてですが、ハンディカムなど一般的なカメラセンサーは波長が長くなるにつれて感度が低下する特性があります。このため、940nmの赤外線ライトは850nmのものと比べると同じ輝度でも3-4割くらい映像が暗くなります。明るさを優先するなら850nmタイプの赤外線ライトが有効です。

一方で、波長の短い赤外線ライトは、暗闇での撮影では光源が目立ちやすい点には注意が必要です。850nmタイプでは50m程度の距離までは発光部が肉眼で確認できるほど赤く光るため、撮影対象に気づかれるリスクがあります。

これに対して、940nmタイプのLEDライトは、光源部の可視光(赤色光)の発光が弱いので、20m離れれば発光部がほとんど見えなくなり、秘匿性が高いというメリットがあります。近距離で撮影する場合は940nmタイプのライトを選択したほうがよさそうです。

ただし、暗視撮影専用のナイトビジョンカメラであれば940nm域でも高い感度があるので、940nmタイプの赤外線ライトでも十分な赤外線光を照射できるでしょう。使用機材や距離、環境によって適切な波長のライトを組み合わせるのがおすすめです。

今回は5WパワーLEDタイプの赤外線トーチでの検証でしたが、新たに高輝度VCSELタイプの赤外線ライトを入手したので、次回はそちらを使っての暗視撮影検証にチャレンジします。このチャンネルでは赤外線撮影に関する各種話題やレビュー動画をお届けしています。動画アップ時に通知がいくのでチャンネル登録いただけるとうれしいです。

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