フロントテレコンの性能検証を進める中で、以前から気になっていたTCON-17Xとの比較を行ってみました。今回使用したベースレンズはトキナーSD400mm F5.6。比較対象となるLTZ10は2倍、TCON-17Xは1.7倍と倍率こそ異なりますが、どちらも大型のフロントテレコンとして知られる存在です。
一般的にテレコンは倍率が高くなるほど画質低下が大きくなりがちですが、実際の撮影結果は予想とは少し異なるものでした。100m先の看板を用いた実写比較から、それぞれの描写傾向と画質差の理由を考察してみます。
使用機材一覧
- Panasonic LTZ10(1.5倍テレコン)
- オリンパスTCON-17X
- Tokina SD400mm F5.6
- ソニーα7S
- Canon EF 100mm f/2.8 Macro USM対応 三脚座 Tripod Mount Ring A(W)
- パナソニック LTZ10専用レンズアダプター
LTZ10 vs TCON-17X
LTZ10の性能検証に合わせて、同じくフロントテレコンのTCON-17Xとも画質を比較してみました。LTZ10は1.5倍、TCON-17Xは1.7倍のフロントテレコンです。本来は倍率も用途も異なる製品ですが、SD400との組み合わせでどのような違いが現れるのか検証してみました。
まずは外観から観ていきましょう。TCON-17XとLTZ10を並べるとこのようなサイズ感の違いが。LTZ10のサイズは92.4mm×133mmで重量が640gです。φ80.9mm×77.5mm、260gのTCON-17Xより2.5倍重くかなり嵩張る印象です。
TCON-17Xの概要
TCON-17Xは、もともと OLYMPUS XZ-1 用として発売されたテレコンです。XZ-1は、1/1.63型センサーで、テレ端F2.5の明るいズームレンズ(28–112mm相当)を持つ高級コンデジでした。そこへTCON-17Xを付けると、190mm相当F2.5として使える設計でした。
レンズ径を比較
両者のフロントレンズ径を比較します。TCON-17Xのレンズ系は70mmで、78mmのLTZ10よりひと回り小さくなります。
テレコンを装着するSD400mm F5.6の前玉の直径は68mmです。
実写検証
SD400に装着するとこのような感じです。
100m先の看板を撮影します。TCON-17Xの画像で、倍率は1.7倍の680mmになります。
デジタル2倍ズームでこのような画角に。
TCON-17X(左)とLTZ10とを拡大して比較してみました。パッと見ではLTZ10がシャープな印象です。
TCON-17X(左)は、エッジが「ボケている」というより、“薄い膜がかかった”描写です。これは典型的なフレア・低周波MTF低下です。白い文字の輪郭や、赤枠のピクトグラムの境界線にフリンジがかなり目立ちます。フリンジの影響もあり、文字の輪郭がやや滲んで、ソフトに見えます。黒い背景と白い文字のコントラストが少し甘くなっています。
一方で、LTZ10は、文字輪郭の色にじみが劇的に抑えられています。完全にゼロではありませんが、マゼンタのフリンジが非常に薄く、すっきりとした色再現性を持っています。文字の「エッジ」が立っており、線が引き締まっています。ピクトグラムの中の黒い人のシルエットやバイクの細い線のシャープさを見てもコントラストが高く、解像感が一段上に見えます。
TCON-17Xは、低周波〜中周波MTFが顕著に低下しているのに対し、LTZ10は単に“シャープ風”ではなく、実効MTFが高い印象を受けます。LTZ10は、トキナー400mmの持っている色収差をこれ以上悪化させず、上手くセンサーまで光を届けており、クリアでコントラストの高い描写です。今回のSD400との組み合わせでは、LTZ10のほうが明らかに良好な結果となりました。
LTZ10の画質が上回った理由は?
LTZ10の画質が上回ったのは単一要因ではなく、光学設計思想、光束適合、コーティング、レンズ径、収差補正バランスの複合です。ただ、比較画像を見る限り、一番効いていそうなのは、「SD400から出てくる光束との相性」です。
SD400は古い400mm単焦点レンズで、光学的には比較的平行に近い光束条件になっている可能性があります。つまり、長焦点、狭画角、平行に近い光束、遠距離被写体を想定していた可能性が高いです。これはSD400とかなり近い世界です。LTZ10がそのような光束条件に適していたため、SD400でも球面収差増加、フレア、非点収差が抑えられ、結果として、黒が締まる、コントラスト維持、シャープ感向上を導いたと考えられます。
次に大きいのが、コーティングです。今回の差を見ると、LTZ10は逆光耐性というより、「内部反射制御」が強そうです。つまり、面間反射、ベーリングフレア(フレアによる白っぽいかぶり)が少ない。これはコーティング品質、鏡筒内反射処理、ガラス選定が効きます。特に古い高級テレコンは、コーティングにかなりコストをかけていることがあります。
レンズ径も重要で、大口径なテレコンは無理のない光線角度で光を通せます。すると、周辺で急激に曲げる必要がなく、光束に余裕ができ収差補正が楽になります。
ガラス材質もあり得ます。高級テレコンでは高屈折低分散ガラス、異常分散ガラスを使って、倍率色収差を抑えることがあります。LTZ10では、コントラスト低下の割に色ズレが比較的整理されています。これは補正材の質が良い可能性があります。
こうした要因が重なってLTZ10の画質を有利に導いたと考えられます。
TCON-17Xの欠点
一方、TCON-17Xは、35mm換算112mm相当のXZ-1用に開発されたテレコンで、「短い実焦点距離から出る太めの光束」を前提に設計された短焦点寄りの設計になります。XZ-1との組み合わせでは非常に高い評価を受けたテレコンであり、今回の結果は設計対象とは大きく異なる400mm単焦点レンズとの組み合わせによる影響が大きいと考えられます。
中望遠向けのTCON-17Xは、400mmのSD400では条件に大きなズレが生じます。その結果、光が設計どおり通らない、補正位置がズレる、球面収差が増えるため、“白っぽいベール”が発生しやすくなります。今回の左画像はかなりその感じです。「性能不足」というより、“設計想定外の光束条件”による画質劣化の可能性が高いです。
まとめ|超望遠レンズにはLTZ10がおすすめ
今回の比較では、SD400との組み合わせにおいてLTZ10が明らかに良好な結果を示しました。文字輪郭のシャープさ、色にじみの少なさ、コントラストの維持という点で、TCON-17Xより一段上の描写を見せています。
ただし、この結果はテレコン単体の優劣を示すものではありません。TCON-17Xは本来、OLYMPUS XZ-1のような比較的短焦点のズームレンズ向けに設計された製品であり、400mm単焦点レンズとの組み合わせは想定外の使い方です。一方のLTZ10は、SD400から出る光束との相性が良かったことで、本来の性能を十分に発揮できた可能性があります。
今回の検証から分かったのは、テレコン選びでは倍率やレンズ構成だけでなく、ベースレンズとの相性が画質を大きく左右するということです。少なくともSD400との組み合わせに限れば、LTZ10は非常に優秀な選択肢であるといえるでしょう。






