【レビュー】Pentax Q7で赤外線超望遠撮影してみた

以前紹介した赤外線改造のPentax Q7で、キヤノンEFレンズ用のマウントアダプターを介して、フルサイズ用の500mm望遠レンズを装着した超望遠赤外線撮影にチャレンジしてみました。マウントアダプター側に赤外線フィルター(IRフィルター)をセットすることで、SIGMA APO 50-500に35mm換算2300mm相当の超望遠赤外線撮影が可能になります。150m離れた遠距離からの赤外線撮影は成功するのか、さっそく検証スタートです。

なお、赤外線フィルターなど撮影機材の入手方法などはこちらに最新情報をまとめています。

PENTAX Q7

今回の検証に使用するPENTAX Q7は、今から10年以上前の2013年に発売された超小型のミラーレスカメラです。1/1.7インチCMOSセンサーを搭載し、有効1240万画素で写真や動画撮影ができます。

動画撮影はフルHD1080pで30fpsと、今どきのデジカメやスマホと比べると見劣りしますが、ヤフオクなどで比較的安価に入手できるので、手軽に赤外線撮影を楽しむにはおすすめのカメラです。

以前の動画で紹介しましたが、カメラ本体はローパスフィルター(IRカットフィルター)を取り外す改造を施して、赤外線撮影ができるようになっています。フルスペクトラム化改造と呼ばれるものです。詳しくは概要欄から過去動画をご覧ください。

EOSアダプター

赤外線カメラ化したPentax Q7キヤノンEFレンズを装着するために、AmazonでEOS-PQアダプターを調達しました。2000円程度で入手できます。このアダプターを介することで、Q7キヤノンEFマウント各種レンズが装着できます。

Q7のセンサーは、1/1.7インチと、フルサイズAPS-Cなど、一般的なミラーレスカメラと比べてサイズが小さいため、暗所性能や画質は落ちますが、一方で、倍率を拡大でき、超望遠撮影に向いているというメリットがあります。

上の写真を例にすると、SONY α7のようなフルサイズセンサー機では、バレーボールのコート全体が画角に入りますが、Q7の1/1.7インチセンサーでは、同じ焦点距離のレンズでも中央のカモメのキャラクターが切り取られます。

赤外線カメラ化

EFレンズを装着する準備ができたので、赤外線撮影をするための簡単な改造を施します。SIGMA APO 50-500で赤外線撮影をするには、レンズに赤外線フィルター(IRフィルター)を装着する必要があります。

ところが、ケンコーなど市販のIRフィルターは、82mm径までしか発売されていないので、

95mm径のAPO 50-500には100mmの角型フィルターしか装着できません。

1枚3万円近い高価な商品なので、遊びに使うにはやや敷居が高いですね。

考えたところ、マウントアダプター内部にはフィルターを挟み込むスペースがあるので、ここにシートタイプのIRフィルターを加工して取り付けることにしました。

今回は赤外線域のみを撮影するので、FUJIFILMIR76を使用します。760nm未満の可視光域をカットできます。

フィルターをハサミで丸くカットします。プラスチック製で簡単に加工できます。

アダプターの内部にフィルターを両面テープで貼り付けて完成です。これならレンズごとにサイズの異なるIRフィルターを用意する必要はありません。見た目も普通のカメラです。

サイズ的には、ガラスフィルターでもいけそうですね。37mm径のフィルターがすっぽり入りました。

超望遠撮影

準備が整ったので、屋外でテスト撮影です。SIGMAAPO50-500mmを装着しました。Q71/1.7インチセンサーでは、35mm換算で4.6倍の画角が得られます。望遠端では、500mm✕4.6倍で、35mm換算で2300mm相当になります。

ちなみに、Q7より小型の1/2.3インチセンサーを搭載しているQ10なら、画角は5.5倍の2700mm相当になります。

なお、EFレンズは絞り環が無いので、手動での絞り調整ができません。新規でレンズを揃えるならニコンなど絞り環のあるレンズのほうが使い勝手はよいと思います。

テスト撮影

それでは、テスト撮影です。画面中央にある小さな看板にズームします。直線距離で140m離れています。

赤外線撮影のため、赤みのかかったモノクロ画像になります。広角端は50mm✕4.6倍で230mm相当の画角です。

200mmまでズームしてみました。960mm相当です。

望遠端は2300mm相当で、看板の文字もはっきりと読めますね。

ハンディカムと比較

SONYのハンディカムHDR-AX55と比較してみましょう。こちらは光学20倍ズームで35mm換算26.8〜536mm相当の画角が得られます。

それ以上ではデジタルズームになります。デジタルズームでは画質がかなり劣化して看板の文字は読めませんね。

写真撮影

写真も何枚か撮ってみました。中央の銅像に向けて50mmからズームしていきます。

200mmまでズームしてみました。35mm換算で920mm相当です。

望遠端の500mmです。ピントは浅くてかなりシビアです。ISO400でシャッタースピードは1/30秒です。

建物も撮影してみました。直線距離で約200m離れています。

200mmでもこのぐらいの倍率になります。

望遠端の500mmまでズームです。2300mm相当です。200m離れた被写体でも赤外線撮影できることがわかります。

まとめ

ということで、まとめです。マウントアダプター経由でフルサイズ用のキヤノンEFレンズを装着することで、センサーサイズの小さいQ7で超望遠撮影ができるようになります。アダプター内部に赤外線フィルターを貼ることで、可視光域をカットした赤外線撮影に対応します。SIGMA APO 50-500では35mm換算で2300mm相当の超望遠赤外線撮影ができるようになりました。200m離れた場所からでも赤外線撮影ができました。

実際にQ7超望遠赤外線撮影をしてみての感想としては、かなりの倍率でズーム撮影はできますが、LCDが3インチと小さい上、望遠撮影ではピントが浅いため、画面の小さなQ7ではマニュアルフォーカス操作がなかなか難しいです。ピーキングもいまいち確認しづらいです。

また、2,300mmの超望遠になると、わずかな振動でも手ブレの原因になるので、それなりにしっかりした三脚が必要です。外付けモニターならと考えましたが、Q7の場合、底部にMicro HDMI端子はありますが、ライブビューには対応していないので使えないようです。

なお、キヤノンEFレンズでは、絞りが手動で変更できないため、手動で絞り変更のできるニコンなど絞り環のあるレンズのほうが使い勝手はよさそうです。晴天下では、絞りを絞り込むことでピントの合う範囲が広がるので、撮影はある程度ラクになります。


温泉盗撮プロファイリング 盗撮犯の機材をチェック

YouTubeで望遠カメラの動画を検索していたら、2020年の露天風呂盗撮グループのニュース動画が出てきました。盗撮に使われた撮影機材の映像も出ていて、おもしろそうなので、詳しく調べてみることにしました。今回の動画では、犯行に使われた撮影機材から聞こえる盗撮グループの声をプロファイリングしてみます。動画後半では、実際の撮影環境を想定した超望遠撮影にもチャレンジしています。それでは検証スタートです。

事件概要

まずは事件について、概要をお伝えしておきます。報道によると、露天風呂盗撮グループは2020年から23年にかけて、札幌市や岐阜県、兵庫県の山中で、露天風呂に入浴中の女性らをデジタルカメラで盗撮していたということです。

100〜300メートル離れた山の中に潜み、露天風呂に入浴中の女性をビデオカメラで盗撮していたようです。

北は北海道から、西は兵庫県まで、全国を移動して犯行を繰り返していたと伝えられています。かなりの行動力です。

盗撮グループは、公安調査庁職員新聞記者県庁職員医師など16人で構成されていました。リーダー格として起訴された「盗撮のカリスマ」と呼ばれる男は、「30年前から、100か所以上で、少なくとも1万人は盗撮した」などと供述しています。

その後の警察の捜査で、盗撮の被害を受けた施設等は46都道府県、80ヵ所以上で、押収品は1,200点を超え、関与したメンバーは100人以上と、かなり大規模かつ組織的な盗撮事案として世間を騒がせました。

犯行に使った機材

警察に押収された機材の一部が公開されていたので、映像をもとにどのようなカメラが露天風呂盗撮に使われたのかを詳しく見ていきたいと思います。

ざっと見たところ、比較的高価なカメラ類ではありますが、一番高いものでも25万円程度です。ここに出ている撮影機材の総額で200万円ぐらいですかね。

フィールドスコープが4台あります。野鳥などを観察するためのコンパクト望遠鏡みたいなものです。

デジカメやビデオカメラを装着することで、35mm換算で1,000mmから3,000mm相当の超望遠撮影が行なえるようです。

取り付けてあるビデオカメラはパナソニックTM700で2010年発売のモデルです。ずいぶん古いカメラですが、305万画素の1/4.1インチセンサーを3枚搭載する3MOSカメラで、フルHD60Pで撮影できるのでスペック的には問題ないのかな。3MOSで今どきのカメラより高画質に撮れるとか、カリスマなりのこだわりがあるのでしょうか。

三脚に取り付けてあるフィールドスコープはKOWATSN-774という機種です。カメラ用の大型望遠レンズが2kg程度の重さであるのに対して、1330gとコンパクトで扱いやすいようです。

デジカメ機材はどのようなものが使われていたのでしょうか。公開された押収品の画像から調べてみました。

右手前から見ていきましょう。こちらはタムロンの高倍率ズームレンズSP150-600mmです。マウントは不明ですが、押収品の中にEOS M10があるのでキヤノン用ですかね。35mm換算で968mm相当の画角が得られる高倍率ズームレンズです。

その奥にあるのが、ニコンの超望遠ズームレンズを搭載したCOOLPIX P1000です。光学125倍で、3000mm相当の超望遠ズームを搭載したコンデジです。1/2.3インチセンサーなので画質はミラーレスほどきれいではありません。

タムロンの望遠レンズの横にあるのは、カメラ本体がα7系です。α7Rでしょうか。2014年発売のフルサイズ機で4K30p動画も撮影できます。

望遠レンズは迷彩のカモフラージュカバーに隠れていますが、白い本体が見えるのでSONYFE200-600mmでしょう。この組み合わせは画質へのこだわりを感じますね。

α7Rの後ろには、ビデオカメラもありますね。

ビデオカメラは、キヤノンiVIS GX10というハイエンド向けの機種す。2017年発売のカメラで、1.0型CMOSセンサーを搭載し、4K/60Pの映像を光学15倍ズーム、広角25.5mmから望遠382.5mm相当で撮影できます。

その横が、EOS M10ですかね。2015年発売のAPS-Cタイプのミラーレスカメラです。1800万画素CMOSセンサー搭載です。タムロンSP150-600mmと組み合わせて、サブ機として使っていたのでしょうか。

画面中央のニコンのカメラは見たことないですね。形からしてかなり古い機種のようです。ご存じの人はいますか。ヤフオクメルカリの画像検索でやっと答えを見つけました。正解は動画のエンディングでお知らせします。

SONY α6000

その隣は、α6400α7cと迷いましたが、本体右下に白い文字が見えるのでα6000でしょう。2014年発売の2400万画素APS-C機です。標準レンズなので、着衣撮り用カメラですかね。

これもずいぶん古いカメラですね。2008年に発売されたSONYまめカムこと、HXR-MC1です。犯人は入浴施設にも侵入していたようなので、お風呂の中にもカメラを仕掛けていたのでしょうか。

写真のように迷彩マントで全身を覆って森の中に潜んで撮影していたようです。

これはメモリーカードケースですかね。かなりの量です。

試し撮り

今回の盗撮に使われたものと似たような機材を使って実際にどの程度離れた距離から撮影できるのかを検証してみました。

撮影場所は岡山県営グラウンドで、140m離れた場所にある看板をSONY α7sSIGMAAPO 50-500mmを使って超望遠撮影です。倍率重視のAPS-Cモードで、35mm換算750mm相当の画角が得られます。かなり離れた場所からでも鮮明な映像を記録できることがわかります。


さらに、1.4倍のテレコンを装着します。1050mm相当です。文字もはっきりと認識できるほど拡大されます。


1/1.7インチセンサーのPENTAX Q7で撮影してみました。こちらは、赤外線撮影用に改造してあるため、画面は赤みのかかったモノクロ画像です。小型センサーのため、500mmレンズでも、2,300mm相当の画角が得られ、画面いっぱいに看板が表示されます。

まとめ

ということでまとめです。露天風呂盗撮の組織的犯行ということで、実際にどのような機材が使われていたのか興味深かったですが、意外とノーマルなカメラやビデオが多かったですね。

とはいえ、1インチビデオカメラや、4K撮影のできるフルサイズミラーレスカメラなど、画質へのこだわりを感じさせるラインナップであることは確かです。

リストを見ると、かなり古い機種もあるので、常習的に犯行を繰り返し、より良い画質を求めて徐々に高価な機材に手を出すようになったのではないでしょうか。

静岡県警が公開した押収品は、04年発売の機材も含まれていたことから、主犯格の男が所有していたものと思われます。これ以外にも様々な機器が使われていたと想像できます。

ニコン COOLPIX8400

そして、謎のカメラの正体は、ニコンCOOLPIX 8400でした。2004年10月発売のカメラです。2/3型原色CCDで有効画素数800万画素、ズームは24~85mmです。望遠カメラでもないので、露天風呂盗撮で使う場面はなさそうですが犯人は何を撮影していたのでしょう。

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