昨年購入した赤外線ナイトビジョン機能搭載の望遠暗視スコープNV016の1年間使用レビューをまとめました。双眼鏡スタイルで、フルカラーおよび赤外線モノクロ暗視撮影に対応し、最大5K動画と52MP静止画を撮影可能な高スペックモデルです。
暗視撮影機能を中心に、良かった点やイマイチな点、比較機種との違いを解説。
さらに、テレコンや外部赤外線ライト、マウント改造の情報も紹介します。ナイトビジョンスコープの購入を検討中の人は参考にしてください。
なお、商品仕様や実写サンプルについては過去動画やブログにも掲載しているので、操作方法や入手方法など詳しく知りたい人は動画概要欄を参照ください。それではレビュースタートです。
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[使用した商品]
- 望遠暗視スコープNV016
- VCSEL高輝度赤外線トーチ Alonefire TK504(IR850 / IR940)
- 39→37mmステップダウンリング
- 37→30mmステップダウンリング
- ナイトビジョンカメラNVC200
商品はAliExpressで見つけたNV016という型番のナイトビジョンスコープです。双眼鏡スタイルの望遠暗視スコープで、カメラと暗視撮影用の赤外線投光器を備えます。低照度カラーと赤外線ナイトビジョン撮影に対応しているのが特長で、35mm換算250mm相当の光学望遠レンズとデジタルズームで最大1765mm相当(※25mm×10.6×デジタル6.6倍)の超望遠撮影ができます。価格はAliExpressで9千円前後、日本のAmazonでは1.5万円前後で入手できます(※掲載時の価格です)。
※10.6倍=1/4インチセンサークロップファクター
※デジタル6.6倍=デジタル10倍の実際の倍率
【商品概要】
外観は双眼鏡のような見た目ですが、撮影に使うカメラは単眼で、向かって右側に配置されています。左側には赤外線を照射するIR LEDライトが内蔵されています。
本体サイズは500mlペットボトル2本分程度。
重量は実測で492gで見た目の割に軽いです。
カメラレンズです。手動フォーカスでレンズ筒を回すとピント調整が可能です。
レンズは単焦点25mmで、画角が10°ということで35mm換算で250mm相当です。市販のビデオカメラでいうところの10倍(※25mm起算)くらいのズーム倍率です。
デジタルズームは最大10倍ですが、実際の倍率は6.6倍程度。カラー撮影ではそれなりに粗さが目立ちますが、ナイトビジョン撮影ならデジタル5倍(※実際の倍率は2倍)あたりまでは常用できます。
カメラレンズの隣には、850nmタイプの7段階可変式IR LEDが搭載されており、ナイトビジョン撮影用の近赤外線光(NIR)を照射できます。
モニターは横長の4インチ(480×854)IPS型TFT液晶で、ナイトビジョンスコープでは大型の部類です。5段階で輝度調整もでき、晴天下でも問題なく使えます。ピント合わせにはやや精細感が不足しますが、視認性は良好です。
搭載しているカメラセンサーはおそらくSmartSens TechnologyのSC8052で、8MPの1/4インチセンサーです。
SmartSensは中国の産業用CMOSセンサーメーカーで。
Huaweiのフラッグシップモデルにも1インチセンサーを提供しているようです。
1/4インチセンサーは一般的なカメラセンサーと比べるとかなりサイズが小さく、1画素あたりの受光面積が小さいため画質が低下するデメリットがあります。
一方で、小型センサーはレンズサイズを小さくできるのがメリットです。
1/4インチセンサーではクロップファクター(切抜効果)によりフルサイズの10.6倍の画角になるので、25mmのレンズでも35mm換算265mm相当の倍率が稼げます。
撮影は最大で静止画5200万画素、動画5K 20fpsに対応します。4K 30fpsは8MPセンサーで記録できますが、5K動画や800万画素を超える静止画については画素補間しているようです。画質は大差ないので24MP静止画や4K動画あたりを常用しています。
夜間撮影機能については、街灯程度の光源があれば高感度センサーを生かしてカラー撮影できます。
加えて、明かりがまったくない環境では、内蔵IRライトを使った赤外線撮影ができます。
バッテリー容量は3,000mAh(1500mAh×2)で、3時間程度の赤外線動画撮影ができます。USB Type Cポート経由で外部バッテリーも使えるので困ることはないでしょう。
なおバッテリーは着脱可能で、別途バッテリーを用意すれば交換も可能です。バッテリーを外すと設定がリセットされるのでご注意を。
記録はマイクロSDカードで最大512GBまで。USB Cポートはパソコンに繋げると外部ストレージとして利用できるほか、UVC(USB Video Class)に対応し、1080PのUSBカメラとして認識させることも可能です。
【WiFi接続】
NV016はWiFi機能を使ってスマホアプリにカメラの画像を表示できます。遠隔でカメラ画像を見ることができるので画角の確認はできますが、ブロックノイズ多め&遅延があるのでピント合わせには向きません。電波が届く範囲は10mくらい。
【使用感】
1年間使ってみての感想をまとめてみました。総評としてはコスパのよい良機だと思います。この1年で似たようなナイトビジョンスコープを数点購入しましたが、NV016の優れている点としては、
- 高感度センサー
- 4K動画撮影
- デジタルズーム
- 高輝度赤外線LED
- 4インチモニター
といったあたり。詳しく解説していきます。
①高感度センサー
カメラセンサーの性能は、同価格帯の他社製品と比べてアタマ1つ抜けています。暗所性能の高さは侮れません。
以前レビューした同価格帯のナイトビジョンカメラNVS-40と比較してもセンサー感度が高いのがわかります。
夜間撮影での比較になりますが、SONYハンディカム(FDR-AX55)との比較でも、感度性能が高く赤外線暗視撮影にも強いことがわかります。
②4K動画撮影
購入当初はさほど重視していませんでしたが、4K動画は編集時にクロッピングすることで撮影画像をさらに拡大できるメリットがあります。編集ソフトで1080Pに切り抜けば100m先の人影でもそれなりに拡大できるのは利点です。4K動画の便利さを経験するとフルHD機は物足りなさを感じます。
なお、NV016は最大5K(5120×2592)で動画撮影できますが、フレームレートが20fpsに制限されるなどの理由で使い勝手が悪いので、4K撮影をメインで使っています。
③高画質デジタルズーム
NV016は劣化の少ないデジタルズームができるのが特長です。最大の10倍ではかなりノイズが目立ちますが、5倍(※実倍率2倍)あたりまでは常用できるほどきれいなズームが可能です。
ハンディカムの光学20倍ズームと比較しても、NV016のデジタル5倍ズームは画質的に遜色のないレベルです。
④高輝度赤外線LED
NV016の内蔵赤外線ライトはかなり強力です。
一般的な5W LED赤外線ライトと比較しても明るいです。
暗闇でも30-50m程度の距離であれば、暗視撮影に十分な赤外線を照射することができ、高感度センサーとの組み合わせで光源のない真っ暗な場所でも満足の画質を得ることができます。
⑤大型モニター
NV016の4インチモニターはミラーレスカメラなどと比べても大きなサイズで、撮影画像の確認がしやすくピント合わせも容易です。モニターの品質もよく昼間の撮影でも問題にならない輝度です。
【残念ポイント】
個人的には満足のNV016ですが残念ポイントもいくつかあるので触れておきましょう。1年間使っての不満点は、
- サイズ感
- 光学レンズ
- 操作性
- 撮影モード
- 製品精度
といったあたり。詳しく解説していきます。
①サイズ感
使っていて一番気になるのはサイズ感です。500mlペットボトル2本分のサイズは手持ちで撮影しているとかなり目立ちます。デザインの野暮ったさもあり人がいる場面では使うのがためらわれます。
筐体の中身はスペースが多く、もう少しコンパクトにすることはできそうなので、双眼鏡スタイルにこだわらずサイズ感を抑えてほしかったというのが正直な感想です。
同じセンサーを搭載しているコンパクトタイプのNV99Sは撮影解像度が720Pですが、
サイズ感といいモニター配置のデザインといい、うまい具合にまとめられているなという印象です。
②光学レンズ
大きな本体サイズの割に搭載されているのは25mmの小径レンズです。光学倍率が35mm換算250mm相当というのは物足りないところ。
250mmでは18m先の人物の全身が収まる程度の倍率しかありません。テレコンで2.6倍に拡大しても45m程度なので物足りなさを感じます。最低でも50mm(35m)、欲をいえば100mm(75m)は欲しかったというのが正直な感想です。
レンズの品質も今ひとつのようで、中心部はしっかり解像していますが、周辺部の画質が落ちているのも気になるところです。
③操作性
操作性は今ひとつです。全体的にもっさり動作で、特にデジタルズームの調整がイマイチです。ボタンを押して反応するまで数秒かかる上に、倍率を0.1倍単位で指定するため、目的の値で止めるのが難しいのはストレスです。
また、6個の操作ボタンに対して、短押しと長押しで機能を割り当てているため、ズームするつもりが赤外線モードになったりとうまく反応しなかったり操作ミスが起きやすいです。
ボタン配置も微妙です。シャッターボタンが左側にあるため、静止画撮影では左手でピント調整しながらシャッターボタンを押すのが難しい。
さらに三脚ネジが本体前側にあるのでシャッターボタンを押すと手ブレしやすいです。プレートで位置調整すれば多少改善しますが、静止画撮影の用途には向いていないです。
価格は高いですが同スペックでデジカメスタイルのNVC200はズームボタンなど独立しており、長押し操作がないので使いやすいです。
④撮影モード
撮影はフルオートで一般的なデジカメに搭載されているような便利な機能は無いのでそのあたりは割り切りが必要になります。
露出やシャッタースピード、ISO感度など任意の値を指定できません。露出のみ±2.0EVの範囲で補正できます。シャッタースピード優先やISO感度指定モードがあればよかったかな。
測光方式は画面全体平均測光のため、明暗差のあるシーンには弱いです。露出補正である程度は対応できますが、±2.0EVの範囲では収まらないケースも出てきます。中央重点測光のほうが使い勝手はよさそうです。
⑤製品品質
製品のデザインと品質はもう一歩です。古いモデルの筐体を使い回しているようで、単三の電池ボックスにリチウムバッテリーが詰め込んであるなど、全体的に雑です。
NVS-40のほうがデザイン、品質ともによいかなという印象です。
レンズ保護フィルターは品質が悪く、照明がある場面ではゴーストやフレアが盛大に発生します。
光学用ではない安価なプラスチック板を使っているため、照明の光がプラスチック面で反射しゴーストが発生しているようです。
レンズ筒を本体から外すことで保護フィルターを取り外すことができます。詳細は過去記事を参照ください。
【フィルター装着】
画質を向上させるための改造についても簡単に紹介しておきます。テレコンやIRフィルター装着用に37mmのフィルターアダプターを取り付けてみました。39-37mmステップダウンリングをレンズ筒に接着剤で固定しています。こちらも過去記事に詳しく記載しています。
IRフィルターを装着してナイトビジョンモードに切り替えれば可視光をカットした赤外線撮影を楽しむこともできます。
テレコンについては何種類か試しましたが、SONYのVCL-DH2637が画質、倍率の両面でおすすめです。2.6倍テレコンで35mm換算650mm相当の画角を得られます。30-50m程度の撮影距離なら十分な倍率です。
【外部赤外線ライト】
非常に強力なNV016の赤外線ライトですが、30-50mあたりの範囲で適切な照射範囲になるよう設計されているようです。50mを超える距離では光が拡散されて弱まります。
100m先を撮影するとかなり暗くなっています。高輝度な赤外線を照射したり、バッテリー使用を節約したりするために外部ライトの使用がおすすめです。
VCSELタイプの高輝度赤外線ライトを用意しました。AlonefireというブランドのTK504(VCSEL)です。
VCSELは光源が面発光で、従来モデルのLEDと比べてムラがない指向性の高い光を照射できるのが特長です。
照射範囲を調整できるため、100m先の狭い範囲に赤外線を照射できます。
同じ条件でVCSELを照射すると100m先でも明るく撮影できます。本体のバッテリーを節約する意味でも外部赤外線ライトはおすすめです。
【マウントアダプター】
さらなる倍率向上を目指してフルサイズ用レンズを装着するためにマウントアダプターを取り付ける改造を施すことに。(※マウント改造には専門知識や工具が必要です。分解でセンサーダストが付着すると正常に撮影できなくなりますのでご注意ください)
NV016はCマウントレンズが使われているので、マウントアダプターを装着することでフルサイズ用のレンズが取り付けできます。
500mmレンズ装着でオリジナルレンズの20倍、5300mm相当の超高倍率撮影ができるようになりました。
計算では375m先の人物を撮影できる倍率です。
500mmレンズで370m先の岡山城を撮影するとここまで拡大できます。
中古の100-300mmニコンレンズであれば5千円程度で入手できるので、マウントアダプターなど1.5万円程度の追加費用で3000mm望遠撮影を手軽に楽しめます。改造については過去記事で詳しく解説しているので、そちらも参考にしてください。
【総合評価☆☆☆☆☆】
ということでまとめです。NV016はカメラとしてはかなりクセのある製品ですが、暗視撮影や望遠撮影用途ならおすすめできる一品です。街灯程度の明かりがあればカラー撮影でき、光源がまったく無い暗闇でも強力な内蔵IRライトを使った赤外線撮影が可能です。使用しているセンサーの感度が高いので、画質も良好です。
中華製カメラで使い勝手の悪い点は多々ありますが、同価格帯の暗視スコープの中では性能は抜け出ていますし、お値段以上の価値はあるでしょう。操作性を重視するなら少し高いですがデジカメスタイルのNVC200を選択するのもありでしょうか。NVC200レビューも参考にしてください。
注意点としては、操作性が悪く静止画撮影には向いていないことと、レンズ保護フィルターの品質が悪いので、初期状態ではかなりゴーストが発生するといったあたり。保護フィルターは取り外して使用することをおすすめします。
カスタマイズについては、フィルターアダプターを取り付ければテレコン装着ができるので、20倍ズーム搭載のハンディカムと同等の望遠撮影が楽しめます。ハンディカムと比べると暗所での感度耐性が高いのもメリットです。
カメラセンサーは近赤外線域の感度も高いので、赤外線フィルター(IRフィルター)を装着することで可視光をカットした特殊赤外線撮影も可能になります。
さらにVCSELのような高輝度外部赤外線ライトと組み合わせることで100mを超えるような超遠距離での暗視撮影にも対応します。野生動物の撮影や防犯目的などいろんな場面で役に立つでしょう。
部品調達やレンズユニットの分解などやや敷居が高くなりますが、マウント改造してフルサイズ用のレンズを装着すれば35mm換算で5000mm超の高倍率撮影も楽しめます。
過去動画では色んなシーンを想定して撮影した動画サンプルをアップしているのでそちらも参考にしてください。このチャンネルでは、赤外線撮影機材のレビューや各種話題をお届けしています。動画アップ時に通知がいくのでチャンネル登録いただけるとうれしいです。
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