【レビュー】盗撮防止赤外線ブロック水着の効果を検証してみた


アスリート盗撮や赤外線盗撮というワードがニュースなどで話題になっています。ビデオカメラやデジタルカメラの赤外線撮影機能を悪用して、ユニフォームや水着などを透過させた動画や写真を撮影する行為です。このような盗撮行為の対抗策として、スポーツ用品メーカーなどから盗撮防止効果を謳った商品がいくつか発売されています。今回は、こうした商品に採用されている赤外線ブロック機能が、実際どの程度の効果を持つのかを詳しく検証してみました。

なお、赤外線フィルターなど撮影機材の入手方法などはこちらに最新情報をまとめています。

赤外線ブロックショーツ

今回検証に使ったのは、水着販売国内トップシェアの三愛水着楽園から発売されている赤外線ブロックショーツです。Amazonで赤外線ブロック機能をもつショーツを探したところ、こちらの商品を見つけるに至りました。赤外線(IR)ブロック効果のある素材を使用し、水着や薄着着用時の盗撮・透視撮影を防止する効果がある製品です。

透過防止素材

商品について詳しく調べてみたところ、旭化成が開発した赤外線を透過しにくい素材を開発した素材を使っているようで、同社のアンダーショーツすべてにその素材が使われているようです。

旭化成の発表によると、「新素材のSunplay iRは、社会問題ともなっている赤外線カメラでの透視や盗撮を防ぐため、特殊セラミックを練りこんだポリエステル繊維サンペイクを使用した」とあります。セラミックを練り込んだ繊維を使うことで赤外線の透過をブロックする仕組みのようです。

注文してみた

ということで、検証用にこちらをチョイスです。商品は、ZOZOTOWNで購入。定価2,640円ですが、オフ・シーズンのためか、693円(送料別)とお手頃価格で購入できました。Amazonでも1,980円で購入できます。

検証方法

商品が到着したので、さっそく検証してみましょう。今回検証するのはベージュカラーです。色的にはブラックよりは赤外線を透過しにくいです。

テストは、自宅浴室内で行いました。耐水性のあるクレヨンしんちゃんのフィルムカット袋をバインダーに挟んだ状態のものを被写体にします。ナイトビジョンカメラ(赤外線カメラ)を搭載したスマホIIIF150 RaptorFUJIFILMIR82フィルターを装着し、内蔵の赤外線LEDライトを照射して赤外線透過撮影を行います。

検証①(ポリエステル)

まずは、一般的なポリエステルの下着から検証です。写真のとおり、通常のカメラではまったく透けません。


こちらのパンツは、GUの製品です。素材はポリエステル91%、ポリウレタン9%で、カラーは紺色です。

さすがに薄手の素材だけあって、赤外線カメラで撮影すると、かなりはっきりと透けますね。赤外線フィルターの効果でシロクマの模様は消えます。

さらに、生地に水をかけて密着させることで透過度が増します。

検証②(ナイロン)

違う素材も試してみました。

こちらは、グンゼBODY WILDパンツです。ナイロン95%、ポリウレタン5%、カラーはブラックです。

ナイロンもポリエステル同様に、素材的には透けやすいかなと思いましたが、赤外線撮影ではまったく透けていません。

ところが、濡らしてみると、ポリエステルほどではありませんが、はっきりと透けています。やはり、水につけると生地と下地とが密着して透けやすくなるようです。

検証③(透過防止素材)

それでは、真打ちの登場です。赤外線ブロック効果を謳った三愛の防透けショーツです。かなり薄手の生地ですが、肉眼では透けていません。

素材はポリエステル74%とポリウレタン26%です。ポリエステル繊維にセラミックが練り込まれています。薄手で素材的にはかなり透けそうな感じですがどうでしょう。

赤外線カメラで撮影したところ、しんちゃんの目と髪の毛の箇所がぼんやり透けているかなという印象です。

ベージュカラーで露出オーバー気味だったので、露出をマイナス補正してみると、顔の輪郭がわかりますね。無加工のポリエステル素材と比べると透過度は低いようですが、それでも、けっこう透けているような気もしますが…。

こちらも水で濡らしてみました。この時点で肉眼でも見えるほど透けています。

赤外線撮影すると、はっきりと透けているのがわかります。これでは、ほかの素材と大差ないですね。

実際の環境を想定して、防透けショーツの上に黒い水着を被せて撮影してみました。水着の上からでもかなり透けていますね。

大手メーカーの商品で盗撮防止効果を謳っているのにそんなわけがないです。おそらく、後ろ側が透けているだけで、肝心な箇所は透けない仕組みなのでは。ということで、前からも撮影してみることに。

やはり、はっきりと透けていますね。メーカーが謳うような赤外線ブロック効果は確認できませんでした。普通に、いや普通の素材よりも透けています。

さらに検証

さすがに、ここまで透けてしまうと擁護のしようがありません。いったいどういうことなのか。もう少し詳しく調べてみましょう。とりあえず、生地をマクロカメラで拡大撮影してみました。よく見ると、繊維自体は光をブロックしているけど、繊維と繊維の隙間から下地が透けているように見えます。

確認したところ、局部にはもう1枚の生地を接着剤で圧着させて、2枚重ねになっていました。1枚では隙間から透けるけど、2枚重ねることで透けなくなるんですかね。

ということで、改めて2枚重ねの箇所を撮影してみることにしました。

確かに2枚重ねの箇所は、1枚のときほどは透けていませんが、それでも光は透過するようで、それなりに透けていますね。

着用状態を想定して、生地を少しだけ引っ張って撮影してみました。う〜ん、顔の輪郭や細い眉毛の箇所もしっかり透けていますね。やはり、繊維と繊維の隙間から透けているようです。

もう1つ試してみることに。生地の裏側に赤外線リモコンを充てて赤外線信号を発してみます。赤外線ブロック効果があるなら、光は写らないはずです。結果はご覧のとおりです。布地を透過して、普通に点滅していますね。やはり、赤外線ブロック効果はないようです。

ワコール製品

ということで、もう1つ試してみることに。こちらはワコールのノーマルスイムショーツです。防透け加工はありません。

三愛のものよりやや厚みがある生地です。ポリエステル、ポリウレタン、ナイロンを使用していますが、比率は未記載です。

同じようにバインダーにセットして撮影します。

乾いた状態では、生地に密度があるぶん、ポリエステル素材のパンツと比較すると透け感は低いですが、それなりに透けています。

こちらも水をかけみました。ほかの素材同様に、濡らすとかなり透けやすくなりますね。

局部は生地が2枚重ねになっていますが、三愛のものよりは透けている印象です。

比較的透けにくかった、ナイロン素材のBODY WILDも2枚重ねにして撮影してみました。こちらはまったく透けていません。問題なしです。何種類か試してみましたが、ナイロンだから透けにくいというわけではなく、この生地が透けにくいようです。薄い生地ですが、密度や編み方などが関係するのでしょうか。防透けを謳うなら、やはりこれぐらいの性能を期待します。

総合評価☆☆★★★

ということで、総合評価です。今回検証した三愛水着楽園の赤外線カットショーツの評価は星2つ。確かに繊維自体は赤外線をカットしているようですが、実際のところ透過を防げていないので評価は厳しくなります。

防透け素材を使っているのに透ける理由としては、2点考えられます。①繊維と繊維との隙間から透ける②水に濡れることで屈折率が変化し透けやすくなるーです。

①については、繊維自体に防透け効果はあるものの、編み方や伸張作用によって繊維と繊維との間に隙間が生じ、そこから透けるようです。スポーツウェアという性質上、伸縮性の確保は必要ですから、やむを得ないのかもしれません。

②については、水には赤外線を吸収・透過しやすい特性があるため、繊維と繊維との隙間に入ることで、透けやすくなっているようです。加えて、肌に密着することで、より透けやすくなると考えられます。

旭化成のページを見ると、繊維で完全に赤外線をブロックできるような印象を与えますが、赤外線をブロックできるのはあくまで1本1本の繊維です。水に濡らしたり、生地を伸張させることで隙間から赤外線が入り効果が落ちるので、実際の着用環境を無視した過剰宣伝ではないでしょうか。防透け効果については過剰に信用しないほうがよさそうです。ご注意ください。

このような防透け機能を有する繊維については、ミズノなども開発を発表していますが、どの程度効果があるのかは気になりますね。一方で、今回テストに使用したBODY WILDのように、2枚重ねにすることでかなり透けない材質もあるようです。赤外線盗撮は社会的にも大きな問題となっているので、各社がどのような製品を出してくるかは気になりますね。

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