前回、分解改造でキヤノン用のフルサイズEFレンズが装着できるようになったナイトビジョンスコープNV016です。1/4インチ小型センサーを生かすことでフルサイズ用レンズの10倍の画角を得られるということで、今回はEF望遠レンズを装着して屋外で性能を検証していきます。
シグマAPO 50-500mm F4.0-6.3やAPO 70-200 F2.8を装着しての超望遠撮影や夜間暗視撮影の画質を確認していきます。レンズの組み合わせによる画角や画質の違いなど実際の撮影シーンを想定して性能を詳しく見ていきましょう。
なお、NV016の仕様や詳細については撮影編、分解&改造編など過去動画で詳しく紹介しています。YouTubeには掲載できなかった情報や追加情報についてはブログに随時掲載しているのでそちらも参考にしてください。
【動画内で紹介した製品(Amazonリンク)】
【テスト撮影】
それではテスト撮影スタートです。改造したNV016にシグマAPO 50-500mmを装着して画角を確認していきましょう。
いつもの岡山城です。近くの公園からの撮影で天守閣までの距離は直線で370m。肉眼(35mm換算50mm相当)だとこれくらいの画角です。
広角端50mm F4から見ていきます。1/4インチセンサーで画角は約10倍の35mm換算500mm相当になります(※正確な倍率は10.6倍ですが、便宜上10倍として説明します)。撮影データはISO100でシャッタースピードが1/2000秒です。
望遠端500mmです。望遠端ではF値がF6.3に上がるためシャッタースピードは1/1000秒に落ちます。
デジタル5倍です。なおNV016では5倍と表示されていますが、実際の倍率は2倍程度なのでご注意を。鬼瓦はもちろんその下の軒丸瓦まではっきりと見えるようになりました。
デジタル10倍(実倍率は約4倍)ではそれなりにノイズが目立ちます。
2倍テレコンを装着しました。テレ端で1000mmになりますがF値はF12.6まで落ちるので、シャッタースピードは1/320秒まで低下しています。
2倍テレコンの等倍とテレコンなしのデジタル5倍とを比較すると、2倍テレコンのほうが画質は上でしょうか。デジタル5倍はシャープさは高いですが黒壁の部分などノイズが目立ちます。
2倍テレコン+デジタル5倍です。岡山城で使われている家紋は豊臣家ゆかりの五七桐紋(ごしちのきりもん)です。
デジタル10倍です。軒丸瓦の小さな家紋もしっかり描写されています。
動画も撮影です。テレコンなしで50mmから望遠端の500mmまでズームしてみましょう。
さらにデジタル5倍
10倍です。ここまで倍率が高いとわずかな風でも手ブレを引き起こします。
2倍テレコンを装着してテレ端で動画撮影するとこんな感じです。
もう1つ。250m先の橋の看板をズーム撮影してみます。
比較用に、以前ハンディカム FDR-AX55にオリンパスのTCON-17Xを装着して撮影した時の望遠端の画像です。手ブレ補正時は望遠端で804mm相当になるのでテレコン装着で1366mm相当の画角です。
500mmレンズの威力を見ていきましょう。テレコン無しですが望遠端では書かれている文字がはっきりと読めます。35mm換算で5000mm相当になるので、1.4倍テレコンを付けたAX55の3.7倍の画角になります。
デジタル5倍です。釣り糸までしっかり解像しています。
デジタル10倍ではここまで拡大されます。イラストの細かい描写も確認できます。
対岸にアオサギを見つけたのでカメラを向けてみました。距離は125mです。
河原に降りて、先ほどのアオサギを撮影です。距離は100-110m程度です。望遠端では拡大しすぎるので少し引いて撮影しています。
夕暮れ時でそれなりに暗い環境ですがカラーできれいに映っています。ザリガニを捕まえたのも分かります。
19時30分頃になるとかなり暗くなってきました。スマホカメラで撮影すると対岸はほぼ見えません。
ノイズはそれなりに乗りますが、この暗さでもカラーで動画撮影できます。F6.3と暗めのレンズですがここまで撮れるのは驚きです。
20時を回るとほぼ明かりがないのでナイトビジョンモードに切り替えます。
内蔵ライトでは赤外線が届かないので、VCSELライトを使って赤外線を照射です。スマホのナイトビジョンカメラで撮影すると赤外線が対岸にスポット照射されているのがわかります。
【暗視機能】
暗視撮影の画質も詳しく見ていきましょう。真っ暗な公園で100m離れた看板を撮影します。広角端50mmでカラー撮影したものです。
ナイトビジョンモードに切り替えました。
内蔵ライトでは照射範囲が広く光量が不足するのでVCSELライトを照射しています。
シャッタースピードは下限の1/15秒で、ISO 6359です。広角端50mmでは赤外線が当たっている範囲が狭いため、周囲の暗さに引きづられてISO感度が上がっているようです。暗所はかなりノイズが乗っています。
望遠端の500mmです。F値は6.3まで上がりますが、赤外線が当たっている範囲にズームしているのでISO 1080で収まっています。
螺旋状のムラが出ているのが気になりますね。赤外線撮影ではレンズのコーティングが影響してこのようなホットスポットと呼ばれる現象が発生することがあります。
デジタル5倍にすると細かい文字も読めます。
デジタル10倍です。画数の多い文字もしっかり解像しています。
さらに1.4倍テレコンを装着してみました。こちらも広角端ではISO 6400です。
望遠端は700mmになります。1.4倍テレコンを装着することでF値は1.4倍のF8.8になるため、ISO 3257まで感度が上がり、ノイズも目立ってきます。
こちらもデジタル5倍へ。テレコン無しと比べるとだいぶ甘くなります。
デジタル10倍ではこんな感じです。夜間撮影でテレコンは厳しいかなという印象です。
動画も見ておきましょう。
もう少し明るいレンズも試してみましょう。SIGMA APO 70-200 F2.8です。感度はISO 727です。APO50-500と比べると、赤外線の当たっていない暗部のノイズが少ないです。
デジタル5倍にすると赤外線の当たっている範囲に拡大されるためISO 490まで下がります。
こちらも1.4倍テレコンを装着しました。F4になりISO 728です。明るいレンズのAPO 70-200なら1.4倍テレコンを付けても画質への影響は少ないようです。
デジタル5倍でもISO感度は変わりません。ISO 766です。細かい文字もシャープで画質も問題ないです。
動体撮影を確認するためベンチに座っている人にカメラを向けてみます。100m程度の夜間暗視撮影であれば、十分な赤外線光が届くのでAPO 50-500mm F4-6.3のような暗めのレンズでも明るさが1-2段くらい落ちる程度で問題なく使えます。
100m程度の距離であれば200mm+1.4倍テレコンで高さ1.2mくらいの範囲が収まるので、倍率的には十分です。明るいAPO 70-200 F2.8のほうが画質はよいかなという印象です。
【まとめ】
ということで、まとめです。今回はNV016にキヤノンEFマウントのSIGMA APOを装着しての超望遠撮影をテストしました。NV016の1/4インチカメラセンサーではフルサイズ機と比べて10倍の倍率が稼げるので、とにかく倍率を上げて望遠で動画撮影したいという人にはおすすめです。
500mmレンズを使えば5000mm相当の光学倍率が得られるので、ハンディカムなどビデオカメラはもちろんニコンP1100(3000mm相当)のような望遠特化型カメラと比較しても、より高倍率な画角を得ることができます。
テレコンについては晴天下であれば画質はやや甘くなりますがまあ使えるかなというレベル。曇り空や暗い環境ではシャッタースピードが落ちたり、ISO感度が上がったりするので画質的に厳しそうです。
夜間撮影については、望遠端500mmのF6.3では感度が上がってノイズだらけかと想定していましたが、VCSELライトと併用すれば感度も上がらず予想以上にきれいに撮影できる結果となりました。
とはいえ、100m程度の距離であれば画角的に200mmや300mmのレンズで十分で、500mmはオーバースペックかなという印象です。200mm F2.8や300mm F4といった明るめのレンズがおすすめです。持ち運びやすさや価格を優先するなら300mmズームのキットレンズもよいでしょう。
なお、今時のレンズは赤外線撮影では環境によってはコーティング由来のホットスポットが発生するのが残念ですね。古めのレンズや赤外線撮影対応を謳ったレンズであればホットスポットが発生しにくいということなので、次回はコーティングのない古めのレンズを使って望遠撮影にチャレンジしてみましょう。
NV016をはじめ赤外線撮影について質問などありましたらお気軽にコメントください。このチャンネルでは赤外線撮影に関する各種話題をお届けしています。更新情報をお届けできるので、チャンネル登録やいいねいただけるとうれしいです。
0 件のコメント:
コメントを投稿