【レビュー】VCSEL 850nm vs 940nmを比較してみた

夜間暗視撮影で愛用しているVCSEL赤外線トーチですが、以前レビューしたAlonefire850nm IRトーチがかなり使えるということで、新たに940nmタイプを入手してみました。ナイトビジョンスコープNV016ハンディカムナイトショットモードでどのような効果が得られるのか。850nmモデルや従来タイプの5W LEDなどと比較してみたいと思います。波長の違いで画質はどの程度変わってくるのか、どれくらいの距離まで赤外線が照射されるのかなどを検証していきます。なお、今回使用するVCSEL赤外線トーチをはじめとする各種機材の詳細や入手方法は過去動画やブログで紹介しているので、動画概要欄から確認ください。それではレビュースタートです。

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波長の違い

はじめに赤外線ライトの波長の違いについて簡単に解説しておきます。市販の赤外線ライトは850nm940nmの2種類が販売されています。

850nmタイプのIRライトは光量が多い反面、赤色域可視光もある程度含まれるため、光源が赤く光るのがマイナスポイントです。

一方、940nmタイプになると可視光域はほとんど出ないため、光源がわからなくなり秘匿性が高いのが特長です。  

ただし、ハンディカムのような市販のカメラセンサーは赤外線域の感度が低いため、IRライトの数値が高くなると十分な感度を得られなくなるというデメリットもあります。今回はハンディカムナイトビジョンスコープを使って、波長の違いによる映り方を検証してみます。

Alonefire TK504 940nm

使用するのはAmazonで入手したAlonefireVCSEL IRトーチです。VCSELライトは、レーザーの光源が平面で光が均一に射出されるため、従来モデルの赤外線LEDライトと比べるとムラの少ない安定した光を狭い範囲に照射することができるのが特長です。

940nmモデルも基本的な構造は850nmモデルと同じです。波長が940nmのVCSELチップに変わっただけですね。

850nmと比較

それでは検証を始めます。撮影場所はいつもの公園で街灯の少ない真っ暗な環境です。まずはNV016を使って40m先の看板をナイトビジョンモードで赤外線撮影してみます。以前紹介したSONYのテレコンVCL-DH2630を装着してのデジタル5倍撮影です。2種のVCSEL IRライトに加えて、比較用に従来タイプの850nm 5W LEDを使います。

まずは、NV016の内蔵IRライトをレベル5で照射です。50m前後の距離なら問題のない光量です。

赤外線カメラ搭載スマホRaptorで撮影すると、NV016本体から赤外線が照射されているのがわかります。肉眼ではまったく見えません。

続いて、VCSEL 850nmです。ズーム端で照射すると半径2mくらいの範囲に光が当たっています。オート露出のため暗い部分の面積が多いのが影響して、やや露出オーバー気味ですね。

内蔵ライトと比べると照射範囲が狭いのがVCSELライトの特長です。看板に向かって光の線が走っているのがわかります。

看板全体が入るように若干広角寄りに調整してみました。

ワイド端だとこれくらいの明るさです。

広い範囲を照射できます。

LEDライトをVCSEL 940nmに切り替えます。波長が変わるとピント位置がズレるので再調整が必要です。

ピントを合わせるとこのような感じです。850nmと比べるとやや暗くなりますが十分な明るさです。

940nmの広角端です。広角端では光量が不足するようでそれなりにノイズが目立ちます。

5W LEDです。同じズーム端ですが、VCSELと比べると照射範囲が広くなります。40-50mの距離なら問題なく使えます。


4枚を並べてみるとこんな感じ。40mの距離ならいずれの赤外線ライトでも問題なく撮影できます。

ハンディカム

続いては、SONYハンディカムHDR-AX55です。オリンパスのテレコンTCON-17を装着しています。

VCSEL 850nmから見ていきましょう。こちらも十分な明るさです。

940nmに切り替えるとピントがズレます。

ピントを合わせるとこんな感じです。940nm域の感度が弱いため、NV016と比べるとかなりノイズが増えて画質は悪化しています。

5W LEDだとこうなります。VCSELの2機種と比べるとやや暗いですかね。


NV016と並べてみるとこんな感じです。ハンディカムのセンサーは感度が弱いのでNV016と比べるとかなり暗いのがわかります。

90m

少し距離を離して90m離れた場所から撮影です。ハンディカムから見ていきましょう。通常モードでは看板の形がなんとかわかるかな程度の暗さです。

ナイトショットに切り替えて、NV016の内蔵IRライトをレベル5で照射したしました。かなり暗いですね。

ズームアウトしてみました。NV016の内蔵赤外線ライトは強力ですが、この距離になると光が拡散するため光量がかなり弱まるようです。

VCSEL 850nmです。90m先でも十分な明るさです。

広角にすると赤外線の照射範囲が狭いのがわかります。

VCSEL 940nmです。840nmと比べると明るさはだいぶ落ちます。ハンディカムのセンサーは元々の感度が低いことに加えて、波長が上がるに連れて近赤外線域の感度も落ちていくことから940nmではかなり暗くなるようです。

従来型の5W LEDだとこんな感じ。VCSEL 940nmより暗いです。

照射範囲を絞っていますが広範囲に光が拡散しているのがわかります。

続いてNV016です。カラーモードから。それなりにノイズは多いですが、大きな文字の輪郭がなんとなくわかるかな。ハンディカムと比べるとセンサー感度が高いのがわかります。

内蔵ライトをレベル5で照射したものです。

5W LEDです。小さな文字も輪郭が出ており、内蔵LEDよりは明るいのがわかります。

VCSEL 850nmです。5W LEDよりさらに照射範囲が狭くなっています。細かい文字もしっかり判読できます。

VCSEL 940nmです。850nmには劣りますが5W LEDよりは明るいです。小さな文字も平仮名であれば読めます

近くに人影が見えたのでカメラを向けてみました。距離は90mです。VCSEL 850nmだとこんな感じで映ります。

VCSEL 940nmでもここまで明るく映ります。850nmと比べると画質は落ちますが、100m程度の距離までならなんとか使えそうです。

ハンディカムだとこのような映り方です。850nmでは十分な光量ですが。

940nmではかなり暗くなります。なんとか見える程度で画質的に厳しいです。

光源の見え方

赤外線ライトは主に赤外線域の光を発しますが、肉眼で見える赤色光も混ざっています。光源がどのように見えるかも検証しておきましょう。

スマホカメラで2つのVCSELライトを撮影するとこんな感じに映ります。左が850nmです。スマホのカメラセンサーは赤外線域にも若干感度があるためこのように映りますが、肉眼では赤く光って見えます。940nmは近くでは微かに赤く光って見えますが、15m程度離れると肉眼ではほぼ見えなくなります。

黄色く丸で囲んだ箇所が照射ポイントです。50m離れても850nmのライトは光っているのがわかります。この距離なら肉眼では注意してみるとわかるかな程度の明かるさですが、真っ暗闇だと目立つかもしれません。

250m

さらに距離を離れた場所で検証です。河川敷の暗い場所で250m離れた場所にいる人を撮影してみました。NV016カラーモードではかなりノイズが目立ちます。

850nmです。250m離れていますが十分な光量が届いています。


編集ソフトを使って1080pで切り抜くとこんな感じです。

940nmでも光は届きますが、かなりノイズが乗っており暗いですね。940nmは100mあたりが限界でしょうか。

まとめ

ということで、まとめです。今回は高輝度VCSELタイプLEDトーチ850nm940nmとを比較してみました。輝度を優先するなら850nmタイプがおすすめです。ナイトビジョンカメラなら200m以上、感度の弱いハンディカムでも100mくらいの距離まで明るく赤外線を照射できます。

ただし、850nmタイプは光源がそれなりに赤く光るので、50m程度の距離でも視認される可能性があります。防犯目的など撮影対象が人間であれば光源に気づかれる可能性があるので要注意です。

940nmタイプは、ナイトビジョンカメラなら100m程度の距離なら撮影に必要な光量を照射できます。ただし、ハンディカムなど家庭用のビデオカメラでは940nm域では感度がかなり落ちるようで30-50mあたりが限界かなという印象です。

940nmタイプのメリットは可視光が少ないため、光源が見えにくく、15m程度離れれば肉眼では視認できなくなる点です。30-50m程度の中距離撮影で秘匿性を優先するなら940nmを選ぶのがよいでしょう。

以上、赤外線ライトに関する検証でした。今回使用した機材についての詳細や入手方法についてはブログに掲載しているので、動画概要欄を参照ください。レビューの王子さまでは、赤外線撮影に関する各種話題やレビューをお届けしています。チャンネル登録いただけると最新情報をお届けできます。あわせていいねいただけるとうれしいです。



【レビュー】NV016用テレコン検証 おすすめはコレです

夜間撮影で愛用しているナイトビジョンスコープNV016ですが、倍率がもう少し欲しいよねということでテレコンをいくつかテストしてみました。今回使用するのは、NV016購入当初から使用しているパナソニックDMW-GTC1(パナ2倍)に加えて、ソニーVLC-DH2630(ソニー2.6倍)ニコンTC-E3ED(ニコン3倍)です。いずれも終売品ですが中古品がAmazonメルカリなどで比較的安価に入手できます。倍率の高いテレコン装着で画質はどの程度変わってくるのかを検証していきます。なお、今回使用するNV016をはじめとする各種機材の詳細や入手方法はブログで紹介しているので、動画概要欄から確認ください。それではレビュースタートです。

動画内で紹介した製品(Amazonリンク)

NV016

はじめにNV016について簡単におさらいしておきます。NV016は双眼鏡スタイルの望遠暗視スコープで、カメラと暗視撮影用の赤外線投光器を備えています。高感度カメラセンサーを搭載することで、カラーと赤外線のナイトビジョン撮影に対応しているのが特長です。

35mm換算250mm相当(FOV10°)の光学望遠レンズに加えて、専用の画像処理プロセッサ(Image Signal Processor / ISP)を搭載することでほぼ劣化のないデジタル5倍ズーム(最大10倍)撮影ができます。動画撮影は最大5K 20fpsまで対応しています。

なお、今回使用する機器はテレコン装着用に先端部に37mm径のフィルターアダプターを取り付けているほか、ゴーストを低減させるため保護レンズを除去する改造を施しています。また、VLC-DH2630(ソニー2.6倍)は取り付け径が30mm、TC-E3ED(ニコン3倍)は28mmのため、それぞれフィルターアダプターを介してNV016に装着しています。詳細は動画概要欄を参照ください。

テスト①

テスト撮影の場所はいつもの公園です。道路から離れた芝生広場でほぼ真っ暗な状態です。

40m先の看板を暗視撮影してみます。デジタル5倍ズームで、カラーモード(4K 30fps)だとこんな感じです。街灯のない場所のためNV016の高感度センサーでもかなり粗い画像になります。

内蔵赤外線LEDをレベル5で照射して、ナイトビジョン赤外線モードで撮影してみました。テレコンなしだとこのくらいの倍率です。

4K 30fpsで撮影しているので動画編集ソフトで1080Pに切り抜くとここまで劣化なく拡大できます。

パナ2倍です。こちらも1080Pに拡大してみましょう。画質は良好ですが、他の2機種と比べると倍率は落ちます。

ソニー2.6倍です。パナ2倍と比べると倍率がある割に、文字の解像感は高いように感じます。

ニコン3倍です。拡大率は一番高いですが、パナ2倍と比べると文字の輪郭を見ると画質はやや劣るかなという印象です。

4つの画像を並べてみるとこんな感じです。

さらに距離をとって100m先の看板を撮影です。カラーナイトビジョンだとこんな感じです。

内蔵赤外線ライトではやや光量が不足するので、以前レビューしたAloneFireVCSEL 850nm IRトーチで赤外線を照射してナイトビジョン赤外線モード(4K 30fps)で撮影してみました。まずはテレコンなしから。

デジタル10倍だとこんな感じです。5倍まではほぼ劣化なく拡大できますが、10倍になると粗さが目立ってきます。

パナ2倍です。デジタル10倍のほうがくっきりとした画像ですが、1080Pまで拡大してみると文字の解像感はこちらのほうが高いです。

ソニー2.6倍です。パナ2倍と比べると拡大率が高い上に、画質もシャープです。

ニコン3倍です。ソニー2.6倍と比べるとややモヤッとしているのが気になりますね。

4枚の画像を並べてみました。やはりソニー2.6倍が一番きれいに撮れていますね。

テスト2

場所を移してもう少しテストです。日中の画質も見ておきましょう。夕方5時頃の百間川親水公園で野鳥撮影です。

カラー等倍です。夜間撮影時の設定で露出を-1.0EVにしていたのでやや暗めな画質です。

編集ソフトで少し明るくしてみました。

デジタル5倍です。センサーサイズが小さい上に、赤外線カットフィルターが入っていないので、今時のデジカメやスマホカメラと比べると昼間の画質は今ひとつですかね。

対岸110m先の車にカメラを向けてみました。等倍250mm相当です。拡大するとナンバープレートの4桁の数字はなんとか読めますが、地名ひらがな3桁の分類番号は判読不能です。

5倍までデジタルズームです。4桁の数字ははっきり読めるようになりましたが、その他の文字はまだ厳しいです。

パナ2倍です。地名3桁の分類番号も判読できるようになりました。ただ、他の2機種と比べると文字はやや粗いです。

ソニー2.6倍です。地名など小さな文字もしっかり判読できます。

ニコン3倍です。こちらも小さな文字まで判読できます。ただ、ソニー2.6倍と比べるとややシャープさに欠けるかな。

日が暮れるのを待ってナイトビジョン撮影をテストです。

撮影は3月末の新月の夜です。周辺に建物がない上に街灯もない場所のため、ほぼ真っ暗な環境です。

ソニー2.6倍を装着してカラーナイトビジョンで撮影です。デジタル5倍です。超高感度センサーですが、ほとんど光が無い環境のため、川の中央にいる鳥の形がなんとか映るくらいです。

ナイトビジョンに切り替えると、赤外線ライトの効果ではっきりと映るようになりました。

続いて、明るい時間に撮影したこちらの車をナイトショットで比較してみましょう

ソニー2.6倍を装着した状態でカラー等倍撮影です。

デジタル5倍です。なんとか車の形が判別できる程度でほとんど見えません。

ナイトビジョンをオンにしました。NV016の内蔵赤外線ライトをレベル5で照射しています。車ははっきりと見えるようになりましたが、車内はシートの形がなんとか見える程度です。NV016の赤外線ライトは強力ですが、100mの距離では光がそれなりに拡散するため光量も落ちるようです。

VCSEL 850nmを照射します。VCSELライトは光量が大きい上に照射範囲を調整できるので、スポット照射すると100m先でもかなり明るいです。車内まではっきりと見えるようになりました。

編集ソフトで1080Pに切り抜き拡大すると車内の様子もはっきりとわかるくらい拡大されます。

スマホカメラで撮影してみました。真っ暗闇でも対岸100m先の車内がはっきりと視認できます。

ニコン3倍です。拡大率は上がりますが、ソニー2.6倍と比べるとややシャープさに欠けますかね。

パナ2倍です。倍率は落ちますが、画質は良い感じです。

ちなみに、ハンディカムFDR-AX55オリンパスの1.7倍テレコンTCON-17を装着したものでナイトショット撮影するとこんな感じです。

NV016DH2630 2.6倍を装着したものと並べてみると、倍率はハンディカムのほうがやや有利ですが、画質はセンサー感度の高いNV016のほうがきれいな印象です。NV016はデジタルズーム5倍ですがしっかり解像しており、ソニー2.6倍テレコンと組み合わせることで、暗視撮影に限ればハンディカムより高画質に撮影できます。

まとめ

ということで、まとめです。今回はナイトビジョンスコープNV016に3種のテレコンバージョンレンズを装着して昼夜の画質を比較してみました。画質はSONYVLC-DH2630 2.6倍がシャープで一番良いかなという結果でした。

VLC-DH2630 2.6倍は重量(132g)はややありますがコンパクトで持ち運びに便利です。ソニーのデジカメ用テレコンはこのほかにもVLC-DH2637(2.6倍)VLC-DH2030(2.0倍)もあるので、DH2630が見つからない場合はそれらを候補に入れてもよいでしょう。

次点でパナソニックDMW-GTC1(2.0倍)でしょうか。GTC1はプラスチック製で重量が85gと軽いのがメリットですが、DH2630と比べると倍率が低い割に画質がやや劣るのがマイナスポイントです。

ニコンTC-E3ED(3.0倍)は一番高倍率ですが、DH2630 2.6倍と比べるとややシャープさに欠けるようです。

加えて他の2機種と比べると本体サイズがかなり大きく重い(262g)のがマイナス点です。このあたりが許容できるなら選択肢に入るでしょう。いずれのテレコンも販売終了しているため、中古やオークションでの入手になりますが、比較的安価に入手できるのでおすすめです。

ということで、今回の検証で一番高評価な結果を出したのはSONYVLC-DH2630 2.6倍でした。NV016に装着して、VCSELライトで撮影することでハンディカムより高画質な暗視撮影ができるようになりました。今年もいろんな撮影場面で活躍しそうです。

なお、今回使用した機材の詳細やテレコンの装着方法については別動画やブログで詳しく紹介しているのでそちらも参考にしてください。動画概要欄にリンクを貼っておきます。このチャンネルでは赤外線撮影に関する各種話題やレビュー動画をお届けしています。動画アップ時に通知がいくのでチャンネル登録いただけるとうれしいです。

追記

SONY VCL-DH2637も入手してみました。DH2630(※ヤフーショッピング)が1.5万円程度するのに対して、こちらは2千円台とお手頃価格です。

DH2630(左)と比較してみるとこんな感じ。同じ2.6倍テレコンなので取り付け径を変えただけかと思っていましたが、DH2637はひと回りくらい大きいです。DH2637は取り付け径が37mmで専用アダプターが必要ないのはメリットです。

重量は168gとDH2630と比べると35gくらい重いです。

画質を比較してみました。DH2630はこんな感じ。

DH2637です。DH2630と比べるとややボンヤリした印象です。同じSONY2.6倍ですが微妙に画質は違いますね。