改造でフルサイズ用レンズが装着可能になったナイトビジョンカメラNVC200ですが、どの望遠レンズを使うのが正解なのか。前回レビューしたTokina AT-X SD 100-300mm F4やAi-S Nikkor 100-300 F5.6に加えて、SIGMA APO 70-200mm F2.8など以前から所有している3本のレンズを加えた5本のレンズの望遠画質を比較してみることに。
5本のレンズに、1.4倍や2倍など装着可能なテレコンバージョンレンズを組み合わせて、100m超の遠距離を望遠撮影してみました。赤外線暗視を中心にいろんなパターンでテスト撮影したので、ナイトビジョンカメラの購入中の人は参考にしてください。
なお、NVC200の仕様や詳細については撮影編、修理&改造編など過去動画で詳しく紹介しています。YouTubeには掲載できなかった情報や追加情報についてはブログに随時掲載しているのでそちらも参考にしてください。それではレビュースタートです。
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【使用レンズ】
今回評価するレンズは次の5本です。
- Tokina AT-X SD 100-300mm F4(x1.4テレコン)
- Ai-S Nikkor 100-300mm F5.6(x1.4テレコン)
- Contax Tele-Tessar T* 300mm F4(x1.4 / x2テレコン)
- SIGMA APO 70-200mm F2.8(x1.4 / x2テレコン)
- SIGMA APO 50-500mm F4.5-6.3 DG OS HSM(x1.4 / x2テレコン)
1,2はNikonマウントの中古、3はContax C/Yマウントの中古で安く入手。4と5についてはミラーレスカメラ用に使用しているキヤノンEFマウントレンズです。テレコンが使用可能なものはテレコンの画質も合わせて比較します。
【昼間】
昼間の画質から見ていきましょう。いつもの岡山城で250m先にある橋の看板を撮影します。
Tokina AT-X SD 100-300 F4から見ていきます。F4では少し甘いので2段絞ってF8で撮影です。ISO 100でシャッタースピードは1/800秒になります。下の画像は1080Pにトリミングしたものです。
1.4倍テレコンを装着しました。シャッタースピードは1/320秒に落ちますが画質は良好です。
Ai-S Nikkor 100-300mm F5.6です。こちらのレンズも開放端(F5.6)では甘いので2段絞ってF11に。1/160秒です。解像感はありますが、色味が少し変ですね。コントラストが低いのかな。
Tokina AT-X SD(上)と比べると画質は今ひとつですね。自動露出がうまく合わなかった可能性もあります。
【SIGMA APO 70-200】
SIGMA APO 70-200 F2.8です。F2.8の明るいレンズでシャッタースピードは上限の1/6400秒です。キヤノンEFマウントで絞りリングが付いていないため、手動で絞りの変更はできません。
1.4倍テレコン装着で280mm F4に。シャッタースピードは1/3200秒です。
2倍テレコンでは400mm F5.6になります。1/1600秒で、テレコンなしと比べるとシャッタースピードは4分の1に落ちます。
2倍テレコン+1.4倍テレコンの2段重ねしてみました。
2.8倍で560mm F8になります。テレコンなしと比べるとややぼんやりとした色味ですが文字はしっかり解像しています。シャッタースピードは1/640秒で、テレコンなしと比べると10分の1に落ちます。
お城にカメラを向けてみました。200mm F2.8です。
1.4倍テレコンを装着。280mm F4です。
2倍テレコンで400mm F5.6です。晴天下では2倍でも問題なく使えます。
2段重ねでは560mm F8になります。かなり画質が落ちることを想定していましたが、晴天下なら問題なさそう。若干甘いかなという気もしますが十分な写りです。
【SIGMA APO 50-500】
SIGMA APO 50-500 F4.5-6.3の望遠端500mmです。望遠端ではF6.3と暗めのレンズですが、シャッタースピードは1/1250秒で画質も良好です。
APO 70-200+テレコン2段重ね(560mm)と同程度の画角ですが、APO 50-500のほうがコントラストが高くキリッとした画質です。
1.4倍テレコンを装着。シャッタースピードは1/800秒に。
2倍テレコンでは1/500秒です。文字の輪郭がやや甘くなってきたような。
2段重ねです。シャッタースピードは1/200秒まで落ちます。
①AT-X②Ai-S③APO70-200 x1.4④APO50-500です。並べてみるとAi-S Nikkorは今ひとつかなという印象です。
ただ、お城の写真を比較してみるとAi-S Nikkorも悪くないです。3枚を比較しても大きな差は感じられません。Ai-S Nikkorは明暗差のある場面に弱いというレビューもあるので条件によっては十分きれいに写るようです。
【夜間】
夜間撮影もテストです。夜間は明るいレンズ優先でAi-Sを除外し、CONTAX Tele-Tessar 300mm F4を加えた4本でテストです。暗闇の公園で100m先の看板を撮影します。オート撮影のNVC200ではシャッタースピードやISO感度を固定できないため、数値を安定するよう看板が画面全体に収まるようにAPO 50-500以外はデジタルズームで2倍に拡大しています。
Tokina AT-X SD 100-300 F4から見ていきましょう。テレコン無しのF4から。シャッタースピード1/30秒でISO 624です。F4の明るいレンズだけあって画質は良好。ISO 624でノイズも少ないですが、細かい文字の解像感は今ひとつです。
F5.6ではシャッタースピード1/30 ISO 773に。1段絞ることで文字の解像感が増しています。細かい文字もしっかり写っています。
F8ではシャッタースピードが1/15秒に低下しています。ISO 758でF5.6とほとんど同じ値なので、シャッタースピードが下がっただけ。画質はF5.6に近いですが縞状のホットスポットが目立ってきました。
F5.6に絞るとISO 926に上がりますが、画質はシャープになりました。
F8ではISO 1484に上がりノイズは増えますが、文字の解像感は増しています。
【CONTAX Tele-Tessar 300mm】
続いて、CONTAX Tele-Tessar 300mm F4です。こちらもテレコン無しから。シャッタースピード1/30秒でISO 191はTokina AT-X SDより1.7段明るい計算です。単焦点レンズだけあって画質は文句無し。今回テストした4本のレンズの中で一番高画質です。
F5.6ではシャッタースピード1/30秒でISO 320に。こちらもまったく問題ないです。
F8でも1/30秒でISO 610と健闘しています。細かい文字もしっかり解像しています。
F11ではシャッタースピードが1/15秒に落ちてISO 716に上がっています。画質はやや粗くなっています。
F16まで上げるとISO 1092で細かい文字はぼやけるように。
続いて1.4倍テレコンを装着です。F4から。シャッタースピード1/30秒でISO 533です。テレコンを付けてもシャープな画質です。
F5.6では1/30秒ISO 721に。細かい文字もしっかり解像しています。
F8でシャッタースピードが1/15秒に。ISO 756です。こちらも問題ない画質です。
F11です。ISO 1168まで上がり細かい文字は滲んでいます。
2倍テレコンを装着です。F4でシャッタースピードが1/25秒ISO 724です。さすがに2倍テレコンは厳しいかと思いましたが問題ない画質です。
F5.6です。シャッタースピード1/15秒でISO 780に。細かい文字もしっかり解像しています。
F8でISO 1377に。やや荒くなってきましたが実用できる画質です。
F11になるとISO 2852でかなりノイズが目立ちます。細かい文字は判読不能です。
【SIGMA APO 70-200 F2.8】
SIGMA APO 70-200 F2.8に1.4倍テレコンを装着して280mmで撮影です。キヤノンマウントのため開放端のみF2.8(テレコン装着でF4)でシャッタースピードは1/20秒ISO 680です。明るい上に、新しめのレンズだけあってしっかりした写りです。細かい文字も解像しています。
2倍テレコンではISO 1396に。文字はきれいに解像しています。
動画も見ていきましょう。テレコン無しです。
1.4倍テレコンです。
2倍テレコンでは光量が不足するためかなりノイズが目立ちます。
テレコンなしでデジタルズームしたほうが、全体的にきれいです。
【SIGMA APO 50-500 F4.5-6.3】
SIGMA APO 50-500でもテストしてみました。広角端50mmでは赤外線が中心部のみに当たっているためISO 6043とかなり暗めです。
望遠端500mmです。デジタルズームなしから。シャッタースピードは下限の1/15秒でISO 1694になりました。望遠端でF6.3と暗めのレンズのため感度もそれなりに上がりますが、細かい文字もしっかり解像していて画質自体はきれいです。
デジタル5倍でISO 1498です。
デジタル10倍でISO 1419に。
100m離れた公園のブランコにカメラを向けます。
照明があるのでカラーでも撮影できます。
ナイトビジョンに切り替えるとこのように写ります。明かりがあるので感度はISO 938と低めです。
1.4倍テレコンを付けてみました。望遠端では700mm F8.8になります。ISO 2245ですが文字はある程度解像しています。
VCSELライトを2灯照射するとISO 1596まで下がりました。これなら実用範囲です。
2倍テレコンです。1000mm F12.6に。ISO 6067でカタカナはなんとか読める程度です。かなり粗い画質です。
こちらも2灯照射してみました。ISO 3889まで下がりますがちょっと厳しいでしょうか。2灯照射については別動画で詳しく検証しているのでそちらも参考にしてください。
【まとめ】
ということで、まとめです。日中の画質についてはいずれのレンズも高倍率に撮影できます。Ai-S Nikkorだけ橋の看板はコントラストが低いかなという印象で今ひとつな画質に。ただ、城の写真画質は他のレンズと同等だったので条件次第で問題なく撮影できるのかなという感じです。
夜間撮影については、画質の面でCONTAX Tele-Tessarが頭一つ抜け出ている印象です。Tokina AT-X SDとTele-Tessarは同じF4のレンズですが、Tele-Tessarは単焦点で、ズームレンズのAT-X SDより光透過率が高く、画質は素人目でもはっきりと違いを感じさせる結果となりました。
ISO 624のAT-Xに対して
ISO 191と1.7段、光量で3.3倍明るい計算です。100m先がこれだけきれいに撮れれば十分満足です。
Tele-Tessarは専用テレコンの性能も高く、1.4倍でISO 533、2倍でもISO 724(※SS 1/25)と、装着しても画質の劣化が少なく、暗所でも問題なく使える点も大きなメリットです。
Tele−Tessarは画質は文句なしですが、単焦点300mmという画角は柔軟性に欠けて使い勝手はもう一つです。画質優先で300mm固定で問題がない被写体や、1.4倍、2倍テレコンを使った超遠距離撮影をするなら、高倍率の単焦点レンズの中では安価に入手できるのでおすすめです。
APO 70-200 F2.8は明るい上にズームレンズで使い勝手も上々です。1.4倍や2倍テレコンを併用することで焦点距離も稼げる上に、明るく画質も良好なので一番使いやすいかなという印象です。ただ、絞りリングが無いのと、他のレンズと比べると重量がやや重いのが難点でしょうか。
AT-Xは開放端ではやや甘いです1-2段絞ればシャープな画質で撮影できます。ただ、前回のレビューでも指摘したとおり赤外線撮影ではホットスポットが発生しやすいのが弱点です。
いずれのレンズも十分使えますが、今時のレンズの方が性能は良いのかなという印象です。暗視撮影に用いるならホットスポットの有無を調べてから購入するのがよいでしょう。過去動画では色んなレンズを使って撮影した動画サンプルをアップしているのでそちらも参考にしてください。
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