ウズラ飼育のサイトを見ていると、エサにラウディブッシュのようなインコ用のエサを使っている人を多く見かけます。ここではラウディブッシュについてどんなエサなのかを簡単に説明するとともに、ウズラにラウディブッシュを使うことの問題点をまとめておきます。
ー要点ー
①雑食性のウズラに草食性のインコのエサは不向き
②ラウディブッシュは軟卵などの病気の原因になる
③輸入エサは品質に問題がある可能性が高い
④それでもラウディブッシュを使うなら栄養補充が必要
【ラウディブッシュとは】
ラウディブッシュは、インコやオウム用に開発された完全配合餌(完配餌)と呼ばれる種類のエサです。インコやオウムのような飼鳥(しちょう)は、犬や猫、ニワトリやウズラのような家畜と比べて栄養学の面で研究が遅れていました。かつてはシード類のような自然の食性に近いエサを与えていましたが、これだけでは栄養的に問題があり、鳥たちが長生きできないということがわかってきてから、ラウディブッシュのような完配餌が注目を集めるようになりました。
完配餌とは、その名のとおり栄養学上必要な栄養素をすべて含んだエサのことです。インコ版のドッグフードみたいなものですね。トウモロコシなどの基本飼料にタンパク質を補充する大豆ミールや各種ビタミン、ミネラルなどを添加して作られます。ウズラやニワトリ用のエサ(飼料)も基本的な構造は同じです。
加えて、ペットフードでは、合成保存料(一部の商品は天然保存料)や、食いつきを良くするための香料、日持ちがし動物が食いつきやすいような添加物などを添加しています。こうした原材料を細かく粉砕してペレットやフレーク状に植物油で固めてできたものがペレットです。ペレット状にすることでペットがすべての栄養素を選り好みせずに口にすることができます。
ペレット餌
【完配餌の利点】
昔は犬や猫には人間の食べた残飯を与えて飼っていました。しかし、それでは栄養価的に問題があるということで、現在はドッグフードやキャットフードを与えて育てるのが常識になっています。それと同じで、ラウディブッシュのようなペレットを与えるのが飼鳥の分野でも主流になってきています。町の獣医さんが、インコやオウムにラウディブッシュのようなペレットを薦めるのは、栄養学上の観点からも正しいといえます。
ところが、一部でウズラのような別種のペットに対してもペレットを薦める獣医さんがいるようで問題になっています。空を飛ぶインコと地面を歩くウズラではまったく食性が異なります。インコやオウムは植物しか食べない「草食性」、キジ科のウズラは植物に加えて昆虫なども食べる雑食性です。ウズラにラウディブッシュのようなペレットエサを与えるとどのような問題が起きるかを解説します。
【軟卵を産みやすくなる】
インコは年に2回、1回につき5〜6個程度の卵を産むだけです。ほぼ毎日のペースで卵を産むウズラと比べると必要な栄養価がまったく異なってきます。ウズラにインコ用のエサを与えると、特に産卵に必要なカルシウムやビタミンD類、ミネラルが不足することで軟卵を産みやすくなり、卵管塞のような病気も引き起こしやすくなります。エサにボレー粉を追加することでカルシウムを補充することはできますが、ウズラが必要量を口にしてくれるかという問題がありますし、さらにビタミンD3やミネラル類が不足していることには変わりがないので、軟卵は止まりません。
実際、ネットでウズラの軟卵に関する記述を調べてみると、ほとんどの人がラウディブッシュなどインコ用のペレットを与えて飼育しています。知識不足の獣医の勧めでラウディブッシュを与えたらそれが原因で卵管塞を引き起こしてまた獣医にかかるという笑えない話です。カルシウムやビタミンDが添加されたウズラ専用エサを与えておけば軟卵を産むことはまずありません。
殻がブヨブヨの軟卵
【総排泄腔脱になる】
カルシウム不足が度を超すと「総排泄腔脱」という病気を引き起こしやすくなります。この病気はいわゆる脱腸・脱肛と呼ばれるもので、ウズラが産卵をしたはずみで内臓の一部が外に出てしまうものです。肛門の外に出た臓器は他のウズラが突くことで出血を伴ったり、場合によっては臓器が外に出て壊死を起こし、死に至ることも珍しくありません。
ウズラ専用エサを使っていれば、十分なカルシウムが含まれているのでこのようなトラブルを引き起こすことはまずありませんが、ラウディブッシュのようなカルシウムが不足したエサを与えると総排泄腔脱を引き起こしやすくなるので気をつけてください。
【安全性の問題】
市販のウズラ専用エサは、「飼料安全法」や「食品衛生法」で使用する原料や添加物が厳しく制限されています。スーパーで販売されているウズラの卵は、私たちが食べても健康に問題がないよう十分な安全性が担保されています。一方、インコなど飼鳥用のエサについてはこのような規制はないため(最近ペットフード安全法という法律が制定されましたが罰則規定のないザル法と言われています)、専用エサを使わず育てたウズラの産んだ卵を人間が口にすることはやめたほうがよいです。
特に輸入エサについては、日本国内では使用が認められていない合成添加物も多く使われており、ウズラ自身の健康にもよくない可能性があります。ラウディブッシュの成分表を見ると、水酸化アンモニウムなど指定外添加物が使われていることがわかります。安全性という観点で見れば、国内で売られているウズラエサのほうがはるかに高いといえます。
【品質の問題】
ラウディブッシュのような海外製のエサは通常、船便で1〜2か月かけてリファー(冷蔵庫)を使わず日本まで運ばれてきます。高温多湿な太平洋上を長時間かけて運ばれてくるエサの品質が劣化することは容易に想像できます。さらに、ラウディブッシュに使われている混合トコフェロールのような酸化防止剤は添加物としての安全性は高いものの、そのぶん効果が長続きせず、カビが発生しやすく、エサの劣化も早いという欠点があります。
元々アメリカ国内での販売を前提に作られた商品ですから、日本の消費者のもとにはかなり劣化した状態で届くことになります。さらに、一部の業者は輸入したエサをリパッキング(再包装)して消費期限をごまかしているようなところもあり(法律上は包装した日付が製造年月日になる)、品質にも疑問がでています。加えて、異物混入など問題が起きたとき正規代理店ではない並行輸入業者では対応してもらえない可能性が高いです。
【価格の問題】
日本国内でラウディブッシュを販売しているのは正規代理店ではなく、並行輸入の業者です。このため、本国の倍以上の価格で販売されておりコストパフォーマンスはかなり悪いです。ラウディブッシュのようなインコ用のエサをウズラに勧めてくる獣医さんもいるようですが、一部の勉強不足な獣医さんを除けば、エサ販売で利益を得ることを目的としている可能性が高いです。安価に入手でき、安全性の高いウズラエサを使うほうが合理的だと考えます。
【ラウディブッシュを使うなら】
それでもラウディブッシュを使いたいという方にはいくつかアドバイスをしておきます。まず、ウズラにはローカロリーなブリーダータイプ以外は使わないようにしてください。メンテナンスタイプを使っている方が多くいますが、メンテナンスタイプはウズラにはかなりハイカロリーで適しません。
さらに、ウズラにはラウディブッシュだけでは産卵に必要な栄養が不足するので、必ずボレー粉を取らせること、そして、ビタミン、ミネラルを補給するためにカルビタバードのような栄養補給剤を与えてください。加えて、雑食性のウズラに必要な動物性タンパク質をミルワームなどで補充してやらないといけません。こうした対策をしておけばある程度軟卵は防げるでしょう。
購入時の注意点としては、オリジナルのパッケージで販売されているものを買うことです。日本国内で再パッキングされているものは本来の消費期限が不明で信頼性に欠けます。ラウディブッシュ社も正規品以外は購入しないよう呼びかけています。加えて、劣化しやすい商品ですから、できるだけ製造年月日(消費期限)が新しいものを選ぶようにしてください。
【参考】ラウディブッシュ成分表
飼料大豆
挽き割りトウモロコシ
挽き割り小麦
大豆油
第二リン酸カルシウム(リン、カルシウム)
炭酸カルシウム(カルシウム)
◯エルリジン(リジン) アミノ酸
◯エルアルギニン(アルギニン) アミノ酸
◯塩化コリン(ビタミンB群)
◯DL-メチオニン
◯ナイアシン(ビタミンB3)
食塩乾燥酵母
混合トコフェロール(酸化防止剤)※合成ビタミンE(DL体)
ローズマリーエキス(酸化防止剤、防腐剤)
クエン酸(PH調整剤)
レシチン(乳化剤)
二酸化ケイ素(液状酸化防止剤の担体)
硫酸マンガン(マンガン)
パントテン酸カルシウム(ビタミンB群+カルシウム)
アスコルビン酸(ビタミンC)
ビオチン(ビタミンB群)
ユッカ抽出エキス(乳化剤、製造溶剤)
酸化亜鉛(亜鉛)【指定外添加物】
アルファ・トコフェロールアセテート(ビタミンE)
ビタミンAアセテート(ビタミンA)
リボフラビン(ビタミンB2)※合成添加物(着色料、黄色系)
塩酸ピリドキシン(ビタミンB6)
メナジオン重亜硫酸ナトリウム複合(ビタミンK)
硝酸チアミン(ビタミンB1)
シアノコバラミン(ビタミンB12)
エチレンジアミン二塩酸塩(ヨード)
亜セレン酸ナトリウム(炭酸カルシウム中)(セレン)
酸化銅(銅)【指定外添加物】
プロピオン酸(保存料、防カビ剤)
水酸化アンモニウム(PH調整剤、殺菌剤)【指定外添加物】
酢酸(酸味料)
ソルビン酸(保存料)
酒石酸(酸味料)
天然リンゴ香味料
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