ナイトビジョンカメラのNV016/NVC200に絞りリング付きの300mmズームレンズが欲しいなということでオークションで中古のAi-S NIKKOR 100-300mm F5.6(送料込み2800円)を入手してみました。
1984年発売のオールドレンズですが、1/4インチセンサーのNVC200に装着すると35mm換算で1060-3180mm相当の超望遠撮影が可能です。
さらに、1.4倍リアテレコンを組み合わせての4452mm相当超望遠撮影にもチャレンジです。
赤外線暗視を中心にいろんなパターンでテスト撮影してみたのでナイトビジョンカメラの購入を検討している方は参考にしてください。
なお、NVC200の仕様や詳細については撮影編、修理&改造編など過去動画で詳しく紹介しています。YouTubeには掲載できなかった情報や追加情報についてはブログに随時掲載しているのでそちらも参考にしてください。それではレビュースタートです。
【動画内で紹介した製品(Amazonリンク)】
【Ai-S NIKKOR 100-300mm F5.6】
検証するのはAi-S NIKKOR 100-300mm F5.6です。ヤフオクで送料含めて2800円。1984年発売の古めのレンズとはいえ安いですね。
届いた商品は中玉に点カビが確認できますが撮影には影響のない程度。全体的には状態も良好です。
ただ、前回レビューしたSeries E 75-150 F3.5同様にズームリングが緩いようで、レンズを上に向けるとズームリングが落ちてくるズームクリープという現象が発生します。
【ズームクリープ修理】
まずは緩めのズームクリープを修理することに。E 75-150と手順は同じなので修理方法の説明は省略です。詳しい手順はブログを参照ください。
リングゴムを剥がして。
ズームリングのネジを外せば前側のレンズが外れます。
摩擦材です。こちらが擦り減っているためズームリングがスカスカになっています。
取り除いた摩擦材の代わりにAmazonで入手したフェルトを貼り付けます。E 75-150では両面テープを3枚貼って調整しましたが、今回はフェルト本体の両面テープのみで十分な厚みでした。
前玉をもとに戻せば修理完了です。上へ向けてもレンズは落ちません。これでズームクリープの修理は無事完了です。
【三脚座】
それでは、NVC200に取り付けようかと手にしたところ思わぬ落とし穴が。このレンズには三脚に取り付けるための三脚座が付いていません。
ズームリングを前後させる構造のため、後付けで三脚座を取り付けるようなスペースも無いです。
レンズ重量は940gで、さすがにNVC200の華奢なボディでは支えられないです。
この手のレンズサポートを装着してレンズを支えればいけそうですが、重量を支えるだけでレンズが固定されるわけではないので悩ましい。
SIGMA 70-200 F2.8 APO用の三脚座がズームリングにぴったりハマります。ただ三脚に固定した状態ではズーミングやピント調整時にズームリングを前後左右に動かすことになりカメラが回転します。
ピントが合ったら三脚座のリングを緩めてズームリング筒を回転させ、カメラを水平に戻せば撮影はできます。面倒ではありますが当面はこれでしのぐことに。
【撮影テスト】
それでは撮影テストです。いつもの岡山城で、天守閣までの距離は375m。
広角端100mmから見ていきましょう。35mm換算で1060mm相当です。古いレンズですが、画質はしっかりしています。
デジタル5倍。
デジタル10倍。
望遠端300mmです。3180mm相当になります。解像感もあって特に問題はなさそう。
デジタル5倍、実際の拡大率は2倍です。
デジタル10倍、同6.6倍ではそれなりに粗い画質になりますがここまで拡大されます。
1.4倍リアテレコンを装着です。F値はF8になります。
望遠端は420mmで4452mm相当です。
デジタル5倍ではノイズが若干増加するものの、画質は実用的なレベルを維持しています。
デジタル10倍です。五七桐の鬼瓦もしっかり解像しています。その下の丸い軒丸瓦はさすがに厳しい。
ちなみにSIGMA APO 50-500 F4-6.3の望遠端500mm デジタル10倍で撮影した画像はこんな感じです。APO 50-500のほうが解像感は高いですが、Ai-S NIKKOR 100-300mm F5.6も健闘しています。
デジタルズームなしでも金のシャチホコをここまで拡大できます。
岡山城名物の桃瓦もはっきり見えます。
続いては250m先の橋の看板を撮影です。
比較用に、以前ハンディカム FDR-AX55にオリンパスのTCON-17Xを装着して撮影した時の望遠端1366mm相当の画像です。
望遠端の300mmで撮影です。
デジタル5倍に拡大すると文字も読めます。
デジタル10倍です。サカナ釣り禁止のイラストもしっかり見えるようになりました。
1.4倍テレコンを装着です。
デジタル5倍でイラストが見えてきました。
デジタル10倍では画数の多い文字もしっかり読めるように。
橋の奥の桃ボートも十分大きく撮れます。安価なレンズの割に解像感も高く、晴天下の撮影であれば十分満足の性能です。
場所を移して、対岸のアオサギにカメラを向けます。
200m離れていますがデジタルズーム無しでも十分な拡大率です。フルサイズレンズの中央部を切り抜いているため、四隅もしっかり解像しています。
対岸の木の上にいるカラスを狙ってみましょう。距離は150mくらい。
露出が合っていませんが倍率は十分です。
デジタル5倍ズームです。F5.6と暗めのレンズですが、日中であれば問題なく撮影できます。
【暗視撮影(100m)】
以前レビューしたSIGMA APO 70-200 F2.8やCONTAX Tele-Tesser 300mm F4と比べるとF5.6とやや暗めのレンズですが暗所性能はどうでしょうか。公園の芝生広場でナイトビジョン撮影のテストです。ほぼ真っ暗な状態です。
VCSE度赤外線ライトを照射してナイトビジョンモードで100m先の看板を撮影します。シャッタースピード(SS)やISO感度を見るため静止画撮影から見ていきましょう。
広角端100mmから。やや光量が不足するようで、いずれの画像もシャッタースピードは下限の 1/15秒になります。感度は画面全体平均測光で赤外線の当たらない周辺部に引きづられて高めのISO 1625です。
デジタル5倍ズームです。赤外線が照射されている箇所を拡大するためISO 1312に下がっています。
デジタル10倍ではISO 728まで下がります。等倍と比べるとノイズも少なくなりました。
望遠端300mmです。F5.6通しで感度は広角端のデジタルズームとほぼ同じのISO 855です。望遠端ではらせん状の色ムラ(ホットスポット)が目立ちます。コーティングなどが影響して発生するようです。オールドレンズでは出にくいという理解でしたが、APO 70-200 F2.8よりハッキリとホットスポットが出ています。
デジタル5倍ズームです。ISO 795に。VCSEL IRライトの輝度が高いので暗めのレンズでもきれいに写っています。
デジタル10倍です。ISO 722。画数の多い文字もしっかり解像しています。
絞り値の変化もテストしてみました。各画像はブログに掲載しているので興味のある人はそちらを覗いてください。ISOはこんな感じで変化します。F8 ISO 1376
F11 ISO 2345
F16 ISO 4422
F22 ISO 6400
人物も撮影してみました。時刻は17時30分です。
18時になるとかなり暗くなってきました。ノイズが目立ちます。
ナイトビジョンモードに切り替えます。VCSELライトを照射しています。
F5.6と暗めのレンズですが100m程度の距離なら問題なさそうです。
人物撮影でもホットスポットが出ています。女性の脚の部分にも縞模様が出ていますね。ここまではっきり出ると赤外線暗視撮影には向いていないレンズかなという評価になります。
【暗視撮影(350m)】
遠距離の暗視撮影もテストしてみましょう。場所を変えて350m先の工事看板を撮影してみました。街灯のない土手沿いの道でかなり暗い場所です。
VCSEL IRライトを照射します。スマホのナイトビジョンカメラで撮影すると350m先でも赤外線が照射されているのがわかります。ただ、この距離では赤外線ライトの光量は100mと比べるとそれなりに拡散、減衰します。F5.6と暗めのレンズでどの程度映るでしょうか。
塀の高さは3mくらいです。
広角端100mmです。シャッタースピードは下限の1/15秒で、感度も最高値のISO 6400です。
デジタル5倍ズームに。
望遠端300mmです。F5.6通しのレンズでF値に変化はありません。この距離では光量が不足するようで。F5.6のレンズではかなり粗い画質です。こちらもホットスポットが目立ちます。
デジタル5倍ズームです。看板の文字の判読は難しい。
比較用に明るいレンズも試してみます。SIGMA APO 70-200 F2.8の望遠端200mmです。ISO 3572で、ホットスポットは出ていない。
デジタル5倍です。それなりにノイズはありますが文字は何とか読めそう。
1.4倍テレコンを装着です。F4.0に上がります。280mmでISO 6400に。
デジタル5倍です。文字はそれなりに解像しています。
並べてみました。左がAI Nikkor 100-300 F5.6の望遠端300mm×デジタル5倍です。1段分の差ですが、F4のAPO 70-200 F2.8×1.4テレコンのほうが文字が解像しており暗所に強そうです。
【まとめ】
ということで、まとめです。今回はNVC200にAi-S NIKKOR 100-300mm F5.6を装着して超望遠撮影をテストしてみました。
中古で安価に入手できるレンズですが高性能で日中の撮影であればNVC200で問題なく使えます。100m前後の距離であれば100-300という画角は使い勝手がよいです。
ただ重量が940gとやや重めの上にインナーズームのためかさばるのがデメリットでしょうか。繰り出し式で505gのAI AF Zoom-Nikkor ED 70-300mm F4-5.6Dのほうが持ち運びに便利そうです。
夜間赤外線撮影については、F値はF5.6と暗めですが、100m程度の距離ならVCSELとの組み合わせでISO 800前後で撮れるので問題ありません。
ただ、F5.6で光量はそれなりに低下するので350mの距離では画質はかなり低下する結果になりました。100mを超えると光量の面で厳しいかなという印象です。シャッタースピードが必要な場面や、100mを超える遠距離撮影で使うならF4やF2.8クラスの明るいレンズがよいでしょう。
難点として、このレンズは赤外線撮影でホットスポットがかなり目立ちます。赤外線暗視撮影には向かないかな。
オールドレンズはホットスポットに強いという認識でしたが、かならずしも当てはまらないようです。このあたりの情報は海外サイトで入手できます。
もう一つ。このレンズは三脚取り付け用のネジ穴が無いため、イレギュラーな方法での設置になりピント合わせの使い勝手が悪いところでしょうか。
レンズサポートを取り付けることでこの問題は解決しますが、追加で費用がかかるので、NVC200用に望遠レンズを新たに揃えるなら、三脚取付用のネジ穴が付いた他のレンズがおすすめです。
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