赤外線撮影についての話題です。今回は、SONYのナイトショット対応ハンディカムFDR-AX55を日中でも赤外線撮影できるよう改造してみました。ハンディカムのナイトショット撮影は、日中の明るい環境下での撮影に制限がかかりますが、この制限を解除することで、晴天下でも赤外線撮影ができるようになります。合わせて、ナイトショットモードを使った赤外線透過撮影(透け透け撮影)についてもテストしてみたので興味のある人は最後までご覧ください。なお、動画中に出てくるフィルターなどの機材については、ブログで紹介しているので、入手方法などについて詳細は概要欄から確認ください。
なお、赤外線フィルターなど撮影機材の入手方法などはこちらに最新情報をまとめています。
【FDR-AX55】
今回検証に使うFDR-AX55は、2016年に発売されたSONYのハンディカムビデオカメラです。1/2.5型 Exmor R CMOSセンサー搭載で、最大4K 30fpsでの赤外線撮影に対応したナイトショットモードが特徴です。光学20倍ズームをはじめ、空間光学手ブレ補正やビューファインダーなど、ビデオカメラとしてのスペックも高く、使い勝手の良い製品です。
8年前に販売開始された商品で、すでに終売になっていますが、中古品ならAmazonなどで安価に入手できます。
オークションなら5-8万円程度で入手できるようです。2018年には後継のFDR-AX60が、2022年にはビューファインダーなしモデルのFDR-AX45Aが登場しています。また、上位モデルのAX100やAX700にもナイトショットモードは搭載されています。
【ナイトショット規制】
SONYのハンディカムでは、一部の機種でナイトショットと呼ばれる赤外線撮影機能を搭載しています。しかし、一時期、雑誌などで赤外線による透視撮影が話題になったことから、現在、昼間はナイトショット機能を使えないようソフトウェアで制限がかけられています。
実際に、FDR-AX55で赤外線撮影をしてみました。晴天下でナイトショット機能をオンにすると写真のように白飛びした画像になります。一定の光量を超えると、カメラ側が日中の屋外撮影と判断して、画面が白飛びするようにソフトウェアで設定されているようです。
【制限解除】
制限の解除は簡単です。センサーに入ってくる光量を落とすと、この制限は機能しないので、ZOMEIのIRフィルターを装着することにしました。可視光線域をカットし、赤外線域のみを透過するフィルターです。
FDR-AX55は55mm径なので、55mmのIR760を用意しました。装着すると写真のような感じになります。今回は赤外線域のみを撮影するためにIRフィルターを使っていますが、制限を解除するだけならNDフィルターやCPLフィルターでも大丈夫です。
可変NDフィルターのような光量を手動で調整できるものも有効です。
IRフィルターを装着して撮影すると、可視光域がカットされるため、ナイトショットモードの制限が解除され、白飛びが解消されました。白い部分はやや露出オーバー気味です。晴天の日はNDフィルターやCPLフィルターと2枚重ねでも良いかもしれません。
AX55では、ナイトショットモードでも1段階だけ露出補正できるようです。-1.0EV露出補正してみました。
補正が少し効いて、露出オーバーが抑えられました。
岡山城を撮影してみました。赤外線撮影の効果で、木々の葉っぱか白く写り、幻想的な雰囲気になります。
AX55では、光学20倍ズームが使えるので、天辺の紋瓦までアップで寄れます。強力な手ブレ補正が効く上に、4K画質なので、写りはきれいですね。
【透過撮影】
ついでに、透過撮影(透視撮影)についても試してみました。クレヨンしんちゃんのフィルムカット袋をバインダーに挟んだ状態のものを被写体にします。上からグレーのTシャツを被せて衣類が透けるかを試してみました。
浴室照明の白色LEDライトはほとんど赤外線を発しないので、補助光として赤外線LEDライトを取り付けて撮影します。
肉眼ではTシャツの下はまったく透けていません。
まずは、浴室の照明のみで撮影です。赤外線が照射されていないので、ナイトショットモードをオンにしてもTシャツは透けません。
赤外線LEDライトをオンにすると、波長の長い赤外線が衣類を透けて、しんちゃんのイラストが写ります。
続けて、IR760フィルターを装着してみました。可視光はカットされますが、透け具合は同程度です。
浴室照明を落として、真っ暗な状態にします。
肉眼では真っ暗な状態ですが、赤外線LEDをオンにすると、Tシャツの下のクレヨンしんちゃんが透けて現れます。
【屋外撮影】
屋外でも透過撮影をテストしてみました。白飛びしていますが、ズームすると露出が調整されて、クレヨンしんちゃんが透けて見えます。屋外でも問題なく撮影できるようです。
ついでに風景も撮影してみました。IRフィルターなしでは、制限がかかって真っ白になります。
IR760を装着しましたが、日差しが強い上に明暗差があるからか、これだけでは白飛びを制御できません。
さらに上からMARUMIの可変NDフィルターを装着します。ND2-400の範囲で減光量を調整できます。減光量中間でこの程度。まだ白飛びが出てます。
最大(ND400)にすると白飛びは解消されました。
シャッタースピード1/100です。画質は劣化していない感じですね。
ちなみに、同じくMARUMIのCPLフィルターと組み合わせるとこんな感じです。一部分に白飛びが出ています。IRフィルターと可変NDフィルターの組み合わせのほうが使い勝手はいいですね。
ちなみに、IRフィルターを取り付けた状態では、見た目が怪しく警戒される可能性があるので、レンズフードを装着してみました。
テレコンやワイコンの間にIRフィルターを挟み込むことでもカモフラージュできます。
【まとめ】
ということで、まとめです。通常、晴天下でナイトショットモードを使うと、透視撮影への規制で正常に赤外線撮影ができませんが、IRフィルターなどを装着し、光量を落とすことで、この制限を解除することができました。また、ハンディカムのナイトショットモードは、オート撮影のため、シャッタースピードなど細かい設定ができませんが、可変タイプのフィルターを使えばある程度の調整を効かせることができます。
透過撮影については、室内では赤外線LEDを補助光として使うことで問題なく撮影できました。白色LED照明は赤外線の照射量が少ないので、赤外線を照射する補助光が必要なようです。
屋外での透過撮影については、IRフィルターを装着することで規制を解除できるので、問題なく撮影できました。今回紹介したのは、あくまでハンディカムのナイトショットモードを、表現手法の手段として、赤外線撮影に使うためのものです。撮影は自己責任でお願いします。
【使用機材】
今回撮影に使用した赤外線フィルターなどの機材詳細と入手方法を紹介しておきます。リンクはAmazonへつながっていますが、ヨドバシカメラなどでも購入できます。リンクのない商品は国内での取り扱いがないものです。
IRフィルター(赤外線フィルター)
IRフィルター(赤外線フィルター)は、可視光域をカットして赤外線域のみを透過させるフィルターです。今回はZOMEIのIR760を使用しています。中国メーカーの製品で比較的安価な製品ですが、性能的には不満に感じることはありません。なお、IRフィルターやNDフィルターについては、Amazonなどで扱いのあるノーブランド品については、性能的にイマイチで、画質が大きく低下するものが多いのでやめておいたほうがいいです。
少し値段は高いですが、KenkoのIR72なども使えます(→販売サイトへ)。KenkoのIRフィルターは720nmの製品しか発売されていません。
FUJIFILMから発売されているゼラチンフィルターです。プラスチック製のシート状フィルターでハサミで簡単に加工できます。IR76からIR96までラインナップされています。(→販売サイトへ)
SCフィルター(シャープカットフィルター)でも、SC72など数値の高いものは似たよう効果を得られます。(→販売サイトへ)
NDフィルター
NDフィルター(減光フィルター)は、日差しの強いときに光量を減らすフィルターです。数値が高いほど減光量が大きくなります。写真はKenkoのND400です。(→販売サイトへ)
可変NDフィルターは、2枚のフィルターを組み合わせることで減光量を調整できます。写真はKenkoの可変NDフィルターでND3からND400の範囲で減光量を調整できます。(→販売サイトへ) 可変NDフィルターは、品質が悪いものではムラが出たりするので、安価なノーブランド品よりメーカー品をおすすめします。
K&Fコンセプトは中国メーカーです。同社の可変NDフィルターは品質良い割に比較的安価です。(→販売サイトへ)
赤外線LEDライト
赤外線LEDライトは、赤外線光のみを発するライトです。肉眼では光は見えませんが、赤外線カメラでは光を捉えることができます。発光部はわずかに赤く光ります。白色LEDは赤外線の発光量が少ないので、屋内で赤外線撮影をする際にも利用できます。(→販売サイトへ)。
離れた被写体を撮影する場合は、写真のような大型の赤外線IRトーチが必要になります。発光部にレンズを装着することで、ズームに対応します。(→販売サイトへ)
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