YouTubeで望遠カメラの動画を検索していたら、2020年の露天風呂盗撮グループのニュース動画が出てきました。盗撮に使われた撮影機材の映像も出ていて、おもしろそうなので、詳しく調べてみることにしました。今回の動画では、犯行に使われた撮影機材から聞こえる盗撮グループの声をプロファイリングしてみます。動画後半では、実際の撮影環境を想定した超望遠撮影にもチャレンジしています。それでは検証スタートです。
【事件概要】
まずは事件について、概要をお伝えしておきます。報道によると、露天風呂盗撮グループは2020年から23年にかけて、札幌市や岐阜県、兵庫県の山中で、露天風呂に入浴中の女性らをデジタルカメラで盗撮していたということです。
北は北海道から、西は兵庫県まで、全国を移動して犯行を繰り返していたと伝えられています。かなりの行動力です。
盗撮グループは、公安調査庁職員や新聞記者、県庁職員、医師など16人で構成されていました。リーダー格として起訴された「盗撮のカリスマ」と呼ばれる男は、「30年前から、100か所以上で、少なくとも1万人は盗撮した」などと供述しています。
その後の警察の捜査で、盗撮の被害を受けた施設等は46都道府県、80ヵ所以上で、押収品は1,200点を超え、関与したメンバーは100人以上と、かなり大規模かつ組織的な盗撮事案として世間を騒がせました。
【犯行に使った機材】
警察に押収された機材の一部が公開されていたので、映像をもとにどのようなカメラが露天風呂盗撮に使われたのかを詳しく見ていきたいと思います。
ざっと見たところ、比較的高価なカメラ類ではありますが、一番高いものでも25万円程度です。ここに出ている撮影機材の総額で200万円ぐらいですかね。
フィールドスコープが4台あります。野鳥などを観察するためのコンパクト望遠鏡みたいなものです。
デジカメやビデオカメラを装着することで、35mm換算で1,000mmから3,000mm相当の超望遠撮影が行なえるようです。
取り付けてあるビデオカメラはパナソニックのTM700で2010年発売のモデルです。ずいぶん古いカメラですが、305万画素の1/4.1インチセンサーを3枚搭載する3MOSカメラで、フルHD60Pで撮影できるのでスペック的には問題ないのかな。3MOSで今どきのカメラより高画質に撮れるとか、カリスマなりのこだわりがあるのでしょうか。
三脚に取り付けてあるフィールドスコープはKOWAのTSN-774という機種です。カメラ用の大型望遠レンズが2kg程度の重さであるのに対して、1330gとコンパクトで扱いやすいようです。
デジカメ機材はどのようなものが使われていたのでしょうか。公開された押収品の画像から調べてみました。
右手前から見ていきましょう。こちらはタムロンの高倍率ズームレンズSP150-600mmです。マウントは不明ですが、押収品の中にEOS M10があるのでキヤノン用ですかね。35mm換算で968mm相当の画角が得られる高倍率ズームレンズです。
その奥にあるのが、ニコンの超望遠ズームレンズを搭載したCOOLPIX P1000です。光学125倍で、3000mm相当の超望遠ズームを搭載したコンデジです。1/2.3インチセンサーなので画質はミラーレスほどきれいではありません。
タムロンの望遠レンズの横にあるのは、カメラ本体がα7系です。α7Rでしょうか。2014年発売のフルサイズ機で4K30p動画も撮影できます。
望遠レンズは迷彩のカモフラージュカバーに隠れていますが、白い本体が見えるのでSONYのFE200-600mmでしょう。この組み合わせは画質へのこだわりを感じますね。
α7Rの後ろには、ビデオカメラもありますね。
ビデオカメラは、キヤノンのiVIS GX10というハイエンド向けの機種す。2017年発売のカメラで、1.0型CMOSセンサーを搭載し、4K/60Pの映像を光学15倍ズーム、広角25.5mmから望遠382.5mm相当で撮影できます。
その横が、EOS M10ですかね。2015年発売のAPS-Cタイプのミラーレスカメラです。1800万画素CMOSセンサー搭載です。タムロンSP150-600mmと組み合わせて、サブ機として使っていたのでしょうか。
画面中央のニコンのカメラは見たことないですね。形からしてかなり古い機種のようです。ご存じの人はいますか。ヤフオクやメルカリの画像検索でやっと答えを見つけました。正解は動画のエンディングでお知らせします。
その隣は、α6400やα7cと迷いましたが、本体右下に白い文字が見えるのでα6000でしょう。2014年発売の2400万画素APS-C機です。標準レンズなので、着衣撮り用カメラですかね。
これもずいぶん古いカメラですね。2008年に発売されたSONYのまめカムこと、HXR-MC1です。犯人は入浴施設にも侵入していたようなので、お風呂の中にもカメラを仕掛けていたのでしょうか。
写真のように迷彩マントで全身を覆って森の中に潜んで撮影していたようです。
これはメモリーカードケースですかね。かなりの量です。
【試し撮り】
今回の盗撮に使われたものと似たような機材を使って実際にどの程度離れた距離から撮影できるのかを検証してみました。
撮影場所は岡山県営グラウンドで、140m離れた場所にある看板をSONY α7sにSIGMAのAPO 50-500mmを使って超望遠撮影です。倍率重視のAPS-Cモードで、35mm換算750mm相当の画角が得られます。かなり離れた場所からでも鮮明な映像を記録できることがわかります。
さらに、1.4倍のテレコンを装着します。1050mm相当です。文字もはっきりと認識できるほど拡大されます。
1/1.7インチセンサーのPENTAX Q7で撮影してみました。こちらは、赤外線撮影用に改造してあるため、画面は赤みのかかったモノクロ画像です。小型センサーのため、500mmレンズでも、2,300mm相当の画角が得られ、画面いっぱいに看板が表示されます。
【まとめ】
ということでまとめです。露天風呂盗撮の組織的犯行ということで、実際にどのような機材が使われていたのか興味深かったですが、意外とノーマルなカメラやビデオが多かったですね。
とはいえ、1インチビデオカメラや、4K撮影のできるフルサイズミラーレスカメラなど、画質へのこだわりを感じさせるラインナップであることは確かです。
リストを見ると、かなり古い機種もあるので、常習的に犯行を繰り返し、より良い画質を求めて徐々に高価な機材に手を出すようになったのではないでしょうか。
静岡県警が公開した押収品は、04年発売の機材も含まれていたことから、主犯格の男が所有していたものと思われます。これ以外にも様々な機器が使われていたと想像できます。
そして、謎のカメラの正体は、ニコンのCOOLPIX 8400でした。2004年10月発売のカメラです。2/3型原色CCDで有効画素数800万画素、ズームは24~85mmです。望遠カメラでもないので、露天風呂盗撮で使う場面はなさそうですが犯人は何を撮影していたのでしょう。
このチャンネルでは、望遠撮影も含めたカメラの話題全般を取り扱っています。興味のある人は、最新の更新情報をお届けできますので、チャンネル登録いただけるとうれしいです。
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